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【1年9カ月前の私へ】

PMS期って、どうしてこんなにも高カロリーのものが食べたくなるんだろう。炭水化物とか、肉とか、炭水化物とか、甘いものとか、炭水化物とか。しかも、食べたからって症状がおさまるわけじゃない。むしろ、食べたら食べたで「またやっちまった……」っていう罪悪感にさいなまれる。
私は食べたら食べたぶんだけ身体に脂肪がつく超エコ体質なので、PMSがくるたびに顔が丸くなる。そして、増えたぶんが減る前に次のPMSが来るものだから、雪だるま式に身体が重くなっていく。

先日、息子たちと会えたとき、白いパジャマを着た私を見て長男が言った。

「お母さん、雪だるまみたい」

うるさいよ。

言われなくてもわかっている。私の体重と体脂肪は、おそらく2年ほど前からうなぎのぼりである。増えるのは、年収と貯金だけでいい。それなのに、望まぬものばかりが着々と身についている。お腹とか、顔とか、背中とか、腕とか、至るところに。

まずい。いい加減まずい。
どうにかしなければ。

ようやく重い腰を上げ、先日、楽天の半額セールを狙って体重計を買った。そう――私は、別居したときから「体重計のない生活」を送っていたのだ。1年と9カ月、私は体重計に乗っていない。ちなみに、半額セールの値引きと、お買い物マラソンの買い回りのポイントぶんを差し引くと、計4,000円ほどの値引きとなった。およそ1,000円弱で高性能の体重計を手に入れた買い物上手な私を、誰か褒めてください。

その体重計が今日、届いた。

しかし、予想外の壁が私の前に立ちふさがっている。ぬりかべのようにびくともせず、ずずーんと諸手を上げて通せんぼしている。

体重計に乗るのが、怖い。

だって、多分見たこともない数字が表示されるんだよ。その現実を受け入れなきゃいけないんだよ。そして、そこから脱却するためには食事制限が必須なんだよ。こんなにも炭水化物を愛しているのに。ねぇ、どうすればいいの。怖いよ。怖くて怖くて、カップラーメンとポテトチップスが頭の中をぐるぐる回っている。まさに現実逃避。

じたばたする私の横で、物言わぬ体重計が、しんと静まり返って床に寝そべっている。

何とか言ったらどうなのよ。「怖くないから乗ってごらん」とか、「大丈夫、何キロだろうと君を受けとめるよ」とか。そしたら私だって勇気が出るかもしれないのに。

ていうか、そもそもどうして細いことが正義なんですか。まるかったらだめですか。だめなら、それは誰が決めたんですか。いいじゃないですか、まる。なんか、ほんわかするじゃないですか。

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「大丈夫!まるいことは正義だよ!!」
by まーるくん

ほら、まーるくんもそう言ってる。じゃあ、いいじゃん。別にいいじゃん。現実を底意地悪く突きつけてくるものに、無理に乗らなくてもいいじゃん。

「だったら何のために買ったんだよ、体重計。バカじゃねえの」

人間のなかには、天使と悪魔がいる。さっきまで私に囁いていたのは悪魔の声、この厳しい愛の鞭は天使の声だ。仕事が詰まっているのに「まーるくん」を描かせたのは悪魔、このしょうもないエッセイ(というか、ただの愚痴)を書かせたのも悪魔。ねえ、私の悪魔、権力強すぎじゃない?天使、しっかりして。もっとちゃんと手綱握っといてよ。

よし、乗る。乗るぞ!乗るって決めた!

乗ったー!!!


……。


私、明日から草食動物になります。野菜だけかじって生きていきます。まあ、実際には数時間で挫折するだろうから、大体そんな感じの気合いでがんばりますって意味です。

何事も、問題が大きくなってからでは取り返しがつきません。もしくは、取り返すのに多大な労力を要します。問題の芽は、なるべく早めに摘み取りましょうね。


1年9カ月前の私、ちょっと、そこに座れ。


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