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この手紙は、ずっと此処に置いておくから。

たった一人を想って文章を書くことがある。届くようにと願いを込めて、お手紙のような気持ちで言葉を丁寧に綴っていく。不思議なもので、そういう文章ほど他の誰かの心にもすっと届いてくれたりする。

人にはそれぞれ、大切にしたい人がいる。それは家族だったり、恋人だったり、友人だったり、もしくは関係にわかりやすい名前の付かない誰かだったりする。


大切な人の涙を願う人は、きっといないだろう。”泣く”という行為を否定したいわけではなく、あくまでもどちらを願うかの話である。

私は、大切な人の笑顔を願いたい。誰しもがそうであるように。


とある友人の話をする。
その人は、とてもかわいらしい顔で笑う。はにかんだような笑顔は、見ているだけで心がきゅっと温かくなる。
その人は、とてもきれいな涙を流す。ぽろぽろと頬を伝う滴は、顎を通ってしとしとと溢れ落ちる。その一粒一粒がその人自身のなかから生まれた原石のようで、色味が濃くなる木肌のテーブルから目を離せなかったことを、今でもよく覚えている。


昨年の暮れ、とあるイベントの主催側として忙しく過ごしていた時期があった。そのイベントはnoteの人たちの交流を主な目的としたもので、2度目の開催ということもあり終始和やかな雰囲気が流れていた。その友人も、その場所にいた。

およそ2か月ぶりの再会だった私たちは、「久しぶりー!」とハイタッチをした。はにかみながらも満面の笑みだった友人の周りには、共通の友人たちが同じように朗らかな笑みを溢していた。あの日、あの空気のなかで共に過ごした時間を、宝もののように思っている。

ずっと会いたいと願っていた人。お久しぶり、の人。何もかも「はじめまして」だった人。一人一人違う。みんな違う。それは距離感だけの話ではなく、人間としての違い。同じような境遇の人も、似たような痛みを抱えている人も、年齢が同じ人も、それぞれいた。でもみんな違っていた。私はそれを素敵だと思った。


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