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【そのことを忘れそうになった夜には】

記憶の糸は、自身が意図しない形であちらこちらにつながっている。良い記憶も、悪い記憶も、なかなか思い通りには留まってくれないし、消えてもくれない。思い出したくないのに浮かんでくるものもあれば、思い出したいのになかなか姿が見えないものもある。だからこそ、思いがけずやさしい記憶が浮かんできた瞬間は、宝ものを見つけたような気持ちになる。

川の音、夏草の匂い、流れる風、きらきら光る小魚、そして、香ばしい味噌付けおにぎりの匂い。遠ざけていたわけじゃないのに、滅多に思い出さない記憶。でも、それらの堆積が人の感情を形作っているのだとしたら、私たちはやはり、できるだけ、周りの人間にやさしくあるべきなのだと思う。

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少し深めのエッセイ。創作にまつわるエピソード。時々、小説。 海の傍で生きてきた私のなかにある、たくさんの“いろ”と“ことば”たち。より自…

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