変わりたいとは思っているけれど、いまの不幸もちょうどいい?
「お前、金ないらしいな」
肌の色艶に生彩がない。
口紅で、誤魔化してみたかった。
帰宅部のわたしを後ろから追いかけてきた、それはひとりの男の子。どこで聞いてきたのか、彼はわたしがアルバイトをしているのを知っていた。
どうでもよかった、わけではない。
自分の欲を削ぎ落としていかなければ、それに溺れて苦しくなる未来は目に見えていたから。その日も別に、帰る家はあって、約束されていたわけではないが、お弁当を買うお金くらいは持っていた。空はそれなりに青くて、景色はそれなりに緑。