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部屋からのぞいたフジロックと、ネットで音楽に出会えることの幸せ

先週の土日は自宅で仕事をしていた。締め切りが迫っていて集中しないといけないのについついTwitterをのぞくと、トレンドに「フジロック」の文字があった。

何気なくそのトレンドを追うと、久しぶりにある人の姿が目に飛び込んできた。The Birthdayのチバユウスケさんだ。

残念ながらライブ配信は既に終わっていて、残っていた動画を少し見ただけなんだけど、見た目は年を重ねていても、魂は何も変わらずあの頃のまま、という感じがした。何十年も音楽を作り続けて、現役でステージに立ち続けていることももちろんすごいんだけど、シンプルにステージ上でのその存在感がやっぱり圧倒的にかっこよくて感動してしまった。

「あの頃まま」のあの頃というのは1990年代のことなのだけど、私がチバさんの存在を初めて認識したのは今から7年前、2011年のことだ。当時好きだった別のアーティストが目当てでチェックしていたラジオ番組のサイトで、The Birthdayのチバさんを知った。そこで少し気になってYouTubeで検索したことで、すごい音楽に出会うことになる。

You Tubeでチバさんがボーカルを務めていたThee Michelle Gun Elephantにたどり着いて、衝撃を受けた。何これめちゃくちゃかっこいい、と思った自分が意外だった。それまではロックをまともに聴いたこともないくせに、何となくうるさくて苦手そうなジャンルだと思い込んでいた。それが、こんなにかっこいいなんて、と衝撃だったのだ。

最初に「世界の終わり」のMVを見た時、自分の中ではっきりと新たな「好き」の扉が開いたのが分かった。

Thee Michelle Gun Elephantは2003年に解散している。でも1996年に発表されたこの曲を、2011年のある日 偶然聴いて、ぐぐっと心を奪われた。

ミッシェルは私が中学生ぐらいの頃からメジャーで活動していたし、今までもその存在は何となく知っていて、曲もテレビとかで耳にしたことはあったんだと思う。でも、ちゃんと彼らの曲を聴いて、パフォーマンスを見たのはこの時が初めてだった。ボーカルのチバさんの声、無性に引き込まれる詩のような不思議な歌詞、かっこよすぎるバンドサウンド(特にギター!)。人生で何度目かの「一聴きぼれ」だった。

それからすぐにYouTubeで他の曲も聴いていった。MVだけじゃなくライブ映像も漁って見まくっている頃には完全に中毒みたいにハマっていた。何てかっこいいバンドなんだろう、とドキドキしていた。音だけじゃなくステージに立つ彼らの視線やたたずまいにもドキドキした。ライブがめちゃめちゃかっこいいのだ。

そして、わずかな時間で散々ハマって1人盛り上がっていた時に、YouTubeのコメント欄でギターのアベさんが2009年に急逝されていたことを知って呆然としてしまった。こんなに浅いファン歴でこんなにもショックを受けるなら、当時ファンだった人たちはアベさんの訃報にどれほど涙しただろう。

私が中学生だった頃といえば、当時はスマホもなく、私の情報源といえばテレビくらいだった。それも、夜7~8時くらいの音楽番組をただ何となく眺める程度。世間では誰のどの曲が売れているかとか何となくは把握していたけど、それらを心から「好き!」と思うことがなかった。耳障りがよくても心はちっとも動かない。

だから当時は「好きな歌手は?」と聞かれるのが一番嫌だった。「世間で売れていてテレビからよく流れてくる音楽」の中に、ぐっと惹かれるものが全然なかったからだ。そんな自分は変わり者なんだと思っていた。好きになれる音楽があればいいのに、と思っていた。

いつだったか、ラジオを聴けば何か出会いがあるかも、と期待して小さなポータブルラジオをドキドキしながらつけたら、実家では電波が悪かったのかラジオが壊れていたのか、FMは何も聴けなくてすごくがっかりしたのを覚えている。

今なら分かる。音楽の好みなんて本当に人それぞれだし、その時の気分でも変わるし、情報源が「今売れてる曲を流すテレビ番組」だけじゃ、好きになれるものに出会えなくても仕方なかった。

(これを書きながら久しぶりにチバさんの歌声を聴きたくなってまたYouTubeを漁っていたら、今の気分的にはROSSOのこの曲にとても惹かれる…。)

だから、今や当たり前になったことだけど、ネットでいろんな音楽を手軽に聴けるって本当に素晴らしいことだと改めて思う。ネットのおかげで簡単に「今」の音楽に触れられたり、時代を超えて「過去」の音楽に出会えたり、本当にありがたい。さらにこうしてネットで音楽フェスも配信してくれるんだから、すごい時代だ。

純粋に心に響いて「好き!」と思える音楽に出会えると、本当に心が動く。人生も動く。そんな瞬間が生きていく中で1つでも多く訪れたら幸せだ。

せっかくの今年のフジロックのライブ配信は仕事で見られなかったけど、部屋でゆっくり見られた人の中には偶然見たアーティストのライブで心が動いて新たにファンになる人もいるんだろうな。そう思うだけで何だかワクワクしてしまう。

好きなアーティストならもちろんお金を出して生で見たいけど、いろんな理由でライブやフェスには行けない人のためにも、まだ見ぬアーティストと出会える確率を上げるためにも、ライブ配信があるのはすごくいい試みだなと思う。

個人的には、今回のライブ配信が話題になっていたおかげで、今も変わらないステージ上のチバさんのかっこよさを知って何とも言えず感動して、チバさんの歌を今のうちに生で聴いておきたいと思うきっかけになった。

2011年の時点では、The Birthdayの楽曲も聴いてみたものの、どハマり中のミッシェルと比べて大人の色気?がありすぎる気がしてあまりハマれなかった。けど7年ぶりに改めて聴いてみたら、純粋にかっこいいと思えるように自分の感覚が変わっていた。嬉しい。
2012年以降の曲もこれから追いかけて、ライブへ行ってみたいと思う。2018年のフジロック、いいきっかけをありがとう!

最後に、フジロック関連で1998年豊洲開催のフジロックのミッシェルも置いておこう。ブロック分けされてない広大なエリアで人波が本当に波のようにうねり、命の危険が隣り合わせであっただろうライブ(中断あり)。最後のチバさんの「絶対に死ぬなよ」が冗談じゃないのがすごい。当時もまた別の意味ですごい時代だったんだなぁ。


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