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念願の自粛後初ライブ

◆はじめに

10月24日(土)、下北線路街空き地でのイベント「+ing feat YABITO FESTIVAL」で関口シンゴさんのソロライブを見てきた。時間にして30分ほどのステージ。気持ちのいい秋の夜に芝生の上に座って見るライブはとても素敵で、本当に幸せな時間だった。

今年2回目にして約9か月ぶりの配信じゃないライブ。今年は配信ライブにもたくさん楽しませてもらってきたけど、やっぱり現地で見るライブは格別だった。

関口シンゴさん(以下セッキーさん)は、ソロとしてもトリオバンドOvallとしても活動する素晴らしいギタリスト。さらに、あいみょんちゃんをはじめ国内外問わず多くのアーティストの楽曲プロデュース/アレンジや作曲も手がけ、米津玄師さんの「感電」などでもギターで参加していたりする。
お人柄は穏やかで謙虚で優しくて、面白くてお話し上手で文章も素敵。あとグッズでオリジナルブレンドを出してしまうくらいコーヒーが好きという一面も。

そんなセッキーさんを知ってファンになったのは、自粛期間真っただ中の今年の春。(当時を振り返って書いたかなりボリューミーなnoteの下書きもあるのだけど、私はあれをいつ公開するのでしょうか…)

それからずっと、とにかくセッキーさんのギターの音や生み出す曲が大好きで、早くライブで生音を聴けたらいいなと思っていた。夏ごろから徐々に有観客ライブが再開され始め、行こうと思えば行けるものもあったけど、まだ怖いというか、どうなのかなと不安に感じる気持ちのほうが大きくて、現地に行くのは我慢して配信ライブの恩恵にあずかっていた。

夏の間そうやって様子を見てきて、「対策が徹底されているなら大丈夫かな」とやっと思えるようになってきたタイミングでの今回のライブのお知らせ。セッキーさんが出演を決めたのならきっと運営さんもしっかりしているんだろうな、という信頼感がまずあって、あとは自分でもイベントの詳細をよく読んで、屋外だし、人数制限もあるし、配信はないし、これは行かなければとチケットを取った。

"9か月ぶり"が思っていたより早かったのか遅かったのかは分からないけど、とにかく自分の心に無理せず自然なタイミングで聴きに行けたと思う。久しぶりのライブだし、やっとセッキーさんのライブを見に行けることにわくわくしていたけど、必要以上に意気込んだり感傷的になったりしないように、ただただ楽しみな気持ちだけを携えて当日を迎えた。

◆ライブ当日

当日、ライブの時間まで彼と少し下北を散策しつつ(近所への買い物以外で一緒に出かけるのも自粛後初だった)、19時前後に一旦わかれて1人で受付へ向かう。

芝生の空いている所に座り、薄手の上着を膝掛けがわりにして開演を待つ。ステージを照らす明かりがきれいで、DJブースから心地いい音楽が流れていて、密になりすぎない距離でお客さんが空間を埋めていた。周りがみんなマスク姿でなければ、今がコロナ禍であることを忘れてしまいそうなゆったりした空気だった。

そして19時過ぎ、セッキーさんがマスクをつけてステージに現れ、準備を始める。「本物だ…!」という感動を、実はその直前に一度ならず二度までも体感してしまっていた。会場の外れを歩いている時と、受付に並んでいる時にご本人を至近距離で見かけていたのだ。ステージ以外で姿を目にするとは思っていなくて、驚きと嬉しさと戸惑いと謎の照れくささがごちゃ混ぜになって数秒で視線を外してしまったけど、不意に目に飛び込んできたその姿は画面越し以上に素敵で、でも穏やかなオーラは画面越しと変わらなかった。

ということで、この日三度目の「本物だ…!」という静かな感動を覚えつつ、ステージ上のセッキーさんの動きを今度はまじまじと見つめる。

目の前でセッキーさんがサンプラー(曲のギター以外の音を再生する機材)の置き場所をスタッフさんとにこやかに相談したり、丁寧にギターをチューニングしたりする姿を不思議な気持ちで眺める。周りに画面の枠がなくて、上にも横にもどこまでも背景が続いているなぁと当たり前のことを思いながら、現地に来れたことをかみしめていた。

この日のギターはアコギとロゼオ。(ロゼオというのはギターのブランド名で、セッキーさんのロゼオはご本人モデルの美しいセミアコだ。)そのロゼオのキラキラした佇まいにも、本物だ…!と静かに嬉しくなる。今まで誰のライブに行っても、楽器そのものにこんなに胸が高鳴ることはなかったな。これは完全にセッキーさんのギター愛に感化されて起きた変化だ。

そしてサウンドチェックで鳴らす音がもう既にきれいで、空気を伝わって届く響きに早くもうっとりしてしまう。

その間、周りのお客さんがほぼ全員スマホのカメラをご本人に向けていることに軽くカルチャーショックを受けつつ、こういう姿を撮らないのはもったいないのかな…?という問いが一瞬浮かんだけど、やっぱり撮らなかった。というか撮れなかったな。

会場で唯一撮ったのは、セッティングが済んでセッキーさんが一旦はけた時のステージの写真だけ。所属レーベル的にはライブ中の写真や動画の撮影は基本的には可にしているそうで、演奏中も器用に撮影している人が多かったけど、個人的には何も考えずにひたすら生の音と光景を味わいたくて、スマホには触らずにいた。

◆1曲目のイントロから…

そして始まったライブ本番。聴けたのはこの7曲で、インスタライブでもおなじみのカバー曲あり、オリジナル曲ありの嬉しい選曲だった。

1. Don’t Know Why
2. Time After Time
3. North Wing
4. Claps
5. message
6. Tender Rose
encore: Lovin’ You

1曲ずつ備忘録的に感想を。参考にセッキーさんのギター動画も添えておくのでぜひ聴いてみてほしいです。

1. Don’t Know Why
マスクを外してグレーのニット帽をかぶって登場したセッキーさん。「何を弾くか決めてないんですが…」というおなじみと言ってもよさそうなMCにフフッとなる。そしていよいよ演奏となり、1曲目のDon’t Know Whyを弾き始めた瞬間、もう最初の数音でスイッチを押されたかのようにじわっと涙が出てきて、のどの奥が熱くなった。


自粛期間に2か月以上も毎日自宅からインスタライブを配信して、素敵すぎる演奏やいろんなお話で楽しませてくれたり優しい気持ちにさせてくれたセッキーさんに、ちょっとここでは書ききれないほど感謝していて。

直接耳に届く優しいアコギの音とすっかり耳に馴染んだフレーズに、頭で考えるよりも先にそんな日々が一瞬でわあっと思い出されて、やっと生の演奏を聴けたことが心から嬉しくて、泣けてきてしまった。

セッキーさんのギターの音や演奏はいつも本当に素晴らしくて心を動かされる。初めて生で聴けた演奏、やっぱり素敵すぎた。

2. Time After Time

そんな素晴らしい演奏の前後にゆるめのMCで笑わせてくれるところもセッキーさんの好きなところの1つだ。Time After Timeの演奏前のMCでは、その日のとあるハプニングを笑いながらも落ち着いた抑揚で話すと、まだ動揺しているので自分を落ち着けるためにこの曲を弾きます、と冗談交じりに言っていた。そんなおかしみのあるMCをしていたかと思えば、演奏を始めると一瞬で空気を変えてしまうから本当にすごい。

セッキーさんのカバー曲のアレンジはどれもすごく素敵で好きなのだけど、中でもこの曲は個人的に好きなカバー曲ランキング上位に入る。タッピングも聴けて幸せだった…

3. North Wing

3曲目からギターを持ち替えてロゼオに。North Wingは私が最初に出会ったセッキーさんの曲。たまたまSpotifyでこの曲が流れてきた瞬間、ちょっと尋常じゃない心地よさに耳がふわあーっと衝撃を受けて、思わず仕事の手が止まったのを覚えている。

初めて生で聴くロゼオの演奏がこの曲だったことも含めて、聴けて嬉しかったなぁ。きれいな音の粒が空気に溶けて、その中に全身を浸しているような感覚。画面越しではなくその場で音を浴びる気持ちよさをより一層感じた。


4. Claps

アップテンポなClapsではその名のとおり自然と手拍子が。インスタライブでもこの曲の演奏中にはコメント欄に手の絵文字が踊るけど、それが音になって重なるとこんな感じなんだなぁと思って嬉しくなる。少しだけ寒くなってきていたので、手を動かして体も温まって楽しかった。アドリブのギターソロがいつも最高にかっこよくて大好き。

ちなみにこのClapsと6曲目のTender Roseはまだリリースはされておらず、次のアルバムに入るかも…?な曲たち。アルバム楽しみだなぁ。

5. message

4月某日のインスタライブでこの曲を初めて聴いた時、何て優しくて美しい曲なんだろう、と泣けてきて完全に心をつかまれて今に至るので、この日もし聴けたら嬉しいなと思っていた。だから初ライブで本当に聴けたことが、もうただただ幸せ。

幸せすぎて何だか夢の中にいるようで、あんなに聴き入って&見入っていたのに実はいちばん細部をよく思い出せないかも…(でもライブってそういうものだよね、と自分に言い聞かせている)。それでも、心の中にはちゃんと残っている。


6. Tender Rose
そして本編最後の曲はこちらも大好きなTender Rose。この曲から立ち上る色気というか艶やかさは何なんだろう、と聴くたびに思う。かっこよくて切なくて心地いい、独特の質感に引き込まれる。素敵すぎたなぁ。

ちなみにこの日、最初は確か4曲目にサンプラーからこの曲が流れて、今日は早めにやるんだなと(最後にやることが多い印象なので)少し意外に思っていた。でもすぐに音を止めて「間違えました」とさらりと笑顔で言ってから、スマートに仕切り直すという場面が。

以前、このサンプラーを導入したての頃にインスタライブで見せてくれたことがあった。使い方に不安が…と笑いながらもひとしきり真面目に話した後に「まあ間違えたらやり直せばいいからね」と明るく言っていたのが印象的で、そんなことをふと懐かしく思い出した。

インスタライブなどを見ていると、セッキーさんのそういう受け入れ力というかいい意味での受け流し力というか、すっきりした明るさがよく垣間見える。予想外のハプニングなどが起きてもすぐに自分の中で消化して笑って受け入れて、淀まずにさらさらと流れていく感じをとてもいいなあと思うのです。他にも人として見習いたいところが本当にたくさんあっていろいろと書きたくなるけど、長くなるので(既に長いけど)今回は割愛します…

encore: Lovin’ You
本編が終了して一旦袖に戻り、アンコールの手拍子が起こるとまたすぐに出てきてくれた。カバーをやろうと思います、と言うセッキーさんに一部のお客さんが「えー!」とささやかな抵抗を示すと、自分の曲よりカバーのほうが楽しいから、とさわやかに本音(?)を述べて、Lovin’ Youを弾いてくれた。これで終わりだけど不思議と寂しくならないような、温かい気持ちになる優しいアンコールだった。

30分ちょっとのライブだったけど、聴きたかった曲、聴きたかった音をたくさん聴けて、幸せな気持ちで満たされた。

ライブ終了後、近くで軽くお酒を飲みながら待っていてくれた彼と合流する。駅に向かって歩き出した時、彼がLovin' Youのサビのフレーズを楽しそうに口ずさんで「何だっけ、この曲知ってる」と言っていたのが何だか嬉しかったな。(ステージエリアの外では演奏の音がかすかに聞こえる感じだったそう)

後日、その夜の素敵な雰囲気を切り取った写真をイベントの公式さんが上げてくれて、その中に自分の姿も収まっていて、思いがけずいい記念になった。本当にゆったりと幸せないい時間だったなぁ。

◆改めて感謝の気持ち

チケットを取って楽しみにしていたライブが10本ほど次々と中止や延期になり、音楽もライブも生活に欠かせないものだと痛いほど再認識した9か月間だった。幸運にもその期間にセッキーさんに出会えたこと、そしてセッキーさんが生み出す素敵な曲や演奏に癒やされて元気をもらい続けたこの期間のことを、きっと一生忘れない。

毎日のインスタライブやギター動画はもちろん、こういう時だからこその趣向を凝らしたラジオや配信ライブなど、今できることをやる、という一貫した姿勢が心強くて嬉しくて、日々楽しみを供給してもらえたことで本当に救われた。

自粛期間中に気持ちを豊かに保つことができたのは、インスタライブでの何気ない雑談や突如始まる贅沢なギター講座など、演奏以外でも心をほぐしたり楽しませたりしてくれるセッキーさんのお人柄による部分もかなり大きいと思う。

まだ有観客ライブが再開され始める前から、コロナでどうにもならない現状に対して暗くなるでもなく楽観視するでもなく、ただ心から「みんな大変だよね」と言葉にしてくれたり、それでも少しずついい方向に向かっていくはず、という前向きなメッセージを発信し続けてくれていたセッキーさん。

そんなセッキーさんのライブで自粛後初ライブを迎えられてよかった。もう少し状況が落ち着いたら、いつか直接お礼を言えたらいいな。

◆ライブについて、今思うこと

実際に現地に行って改めて、多くの人の決断や支えがあってこの状況下でも有観客ライブが実現していることが本当にありがたいなと思った。出演を決めてくれるアーティストにも感謝しかない。そしてたまたま自分が現地に演奏を聴きに行ける境遇にあることも。

"今までどおりのライブ"は当分無理だとしても、これからも機会があれば対策などしっかりと気をつけつつ、やっぱり行ける範囲で現地に行きたいと思う。今だからこそのちょっといびつなライブの形も全部ひっくるめて、音楽の素晴らしさを体全体で味わえたら嬉しい。(個人的にはまだ多くのバンドが出演するフェスや遠征に行くのは我慢するつもりだけど…)

と同時に、優先するのはあくまでもライブが無事に開催され続けることだと胸に刻んで、少しでも体調が悪ければ絶対に行かない、など自分の中での判断基準を今まで以上に厳しく持たなければと思う。

最近また全国的に感染者数が増えてきていて、個人でできることは日々基本の感染対策を怠らずに気をつけて過ごすことぐらいだけど、それが本当に大切だなと思う。一日でも早く、誰もが何も心配せずに好きなアーティストのライブに行ける日が来ますように。


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