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その傘に見覚えがあった

その傘に見覚えがあった

薙《なぎ》の傘
カラフルすぎる模様の傘

あんな傘を見たのは
後にも先にも
薙《なぎ》の傘だけ

原色で
ピカソの抽象画のような
得体の知れない模様が入った傘

追いかけてみる?
薙《なぎ》〜と呼んでみる?

薙《なぎ》は高1の時のクラスメイト
薙《なぎ》はちょっと変わった男の子

人の話を聞いてるのか聞いてないのか
会話していてもキャッチボールできていない
質問の答えになってない話をする
彼はいたって普通な感じで話を続けるので
まわりが困惑顔になる
だけど、一生懸命話すので
変な空気にはなるが
嫌われない

むしろ、好かれてる

なぜなのか
いつも不思議な気がしてた

綺麗な顔で、人懐っこい笑顔
女子にも人気があった

ある日 

陽菜さん薙くんに告白したらしいヨ
そーなんだ〜

一週間後

陽菜さん薙くんと別れたらしいヨ
そーなんだ〜

やっぱり〜かと思った
彼のペース、空気感、感覚的な考え方

それが、苦痛になれば、続かないのだろう
だけど、嫌いにはならないので
友だちに戻るだけ

何人かの女子がトライしてみるが
記録更新にはならず

そんな感じの
薙《なぎ》はクラスで結構、人気者
薙《なぎ》は構内で結構、有名人


薙《なぎ》は凄い!思った事がある

いつかの帰り道
信号の途中で、おばあちゃんがつまずいた
信号が変わりそうな中、彼は手を挙げて
おばあちゃんを助けて、信号の先まで
連れて行き、
「ありがとうございました」と車道の
車にお礼を言った

普通のことだけど
なかなか行動するのは勇気いる

おばあちゃん子の彼はホント優しい

そう、
彼はおばあちゃんの家で暮らしていた
お父さんは小さい頃、亡くなって
お母さんは小学校4年の頃に居なくなった

小学校の時、
近くに住んでた私は知っていた

そう、
カラフルすぎる模様の傘は
お母さんが置いて行った傘

薙《なぎ》が、前に言ってた
 この傘、お母ちゃんの傘なんだ
 すごく気にいってたから
 いつか、取りに来るかなぁと思って
 すぐ分かるように
 雨の日はこの傘、さすんだ

今も、さしてるんだ
あの傘……

なんだか…
とても…
薙《なぎ》と話がしたくなった

薙《なぎ》を追いかけた

傘の見える所まで追いついて
薙《なぎ》〜と叫んでみた

彼はキョロキョロとして
誰かを探しているようだった

ごめんね…
私で…

と手を振った

薙《なぎ》は
私を見つけて
ニコッと笑って

手を振った…

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