見出し画像

本03 『愛する歌』(作:やなせ・たかし)

声に出して味わうことを教えてくれる

「ーなにがきみのしあわせ、なにをしてよろこぶ
わからないまま おわる そんなのはいやだ!
ー時ははやく すぎる 光る星は 消える 
だから きみはいくんだ ほほえんでー」

女子校時代の休み時間、アンパンマンのマーチを口ずさむ同級生に、その奥深さを熱弁された記憶があります。
それからというものの、やなさ・たかしさんは、もっぱら気になる存在である。
不安や不満がひたひたとおそってくるとき、アンパンマンのマーチを口ずさむと、まさに、アンパンマンが愛と勇気をくれる気がする。

この『詩集 愛する歌』は、地元の古書店で見つけたときに、やなせ・たかしさんのアンパンマン以外のご著作に出会うのが初めてで、なかば宝物を見つけたように興奮して購入しました。
童謡「てのひらを太陽に」をはじめ、45編の詩がおさめられています。
あとがきでご本人も書かれていますが、子ども向け、大人向けにつくられた歌がランダムにならべられていて、ページをめくるたびに、詩の主人公は、クジラ、学生、しま馬、成年女性と入れ替わっていきます。
特に、私は成年女性の詩・歌を作られていることを存じ上げなかったため、やなせ・たかしさんが、こんなにも切なさ、ものがなしさ、やるせなさ、しずけさ、ひたむきさ、そのほか言葉にならない気持ちをえがいていたことに驚いた。

ひとつひとつの詩には、さらにイラストが添えられています。まるで紙面で踊り出すような可笑しくユーモラスなキャラクターが描かれたかとおもうと、心がそのまま映し出されたように暗〜い影をまとった人物が登場し、詩をよまずとも挿絵を見るだけで詩に描かれた心情が伝わってくる。

「これらの詩は読むためよりも歌うことに主眼をおいてつくってあります。詩に定型があるはずはなく、難解な詩が高級であるとは限らず、いずれにしても心にふれるかふれないかということが重要です。さて、そこで、ぼくの詩は・・・・・・。」(文中・筆者談)

まさに、アンパンマンのマーチを口ずさむときの私を振り返ると、歌詞のメッセージとともに、そのシンプルな言葉がもつ音とリズム自体が、口先から、身体の内側から、心の源から元気にしてくれるような感覚なのだ。

この本に出会って以来、やなせたかしさん著作の蔵書が増えました。

画像1

xxx———————————————————

『詩集 愛する歌』(作:やなせ・たかし)


———————————————————xxx

ちなみに、この本は、“ポラン書房”さんという古書店で購入しました(ポランは、ちゃらんぽらんのぽらんと、宮澤賢治さんの「ポラーノの広場」に由来するそう)
中学生の頃から、足繁く通い、空想や世界を広げる逃げ場所でした。
こちらもとってもおすすめです。
http://polan-shobou.com/index.html


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?