本06 『ムナーリのことば』(著:ブルーノ・ムナーリ 訳:阿部雅世)
子どもの魂に向けた本
振り返ると、私は幼少期の頃からこれまで、「それが“常識”だ」と伝える大人の存在に反抗的でした。そして、そんな彼らに反論をぶつけてみても、ちゃんと聴いてくれない、あるいは、流されている、あるいは後になって、意見を翻されることがよくあり、ふつふつとさらに反抗心を燃やすことがよくありました。
このままだとどうやら埒があかないらしい、と自分の中を見つめたり、それこそ心理や関係性の学びを重ねてきたのでした。
しかし、まだまだ自分の中に、反抗児はいるし、きっと死ぬまでいるのだと思う。そんな“子ども”に勇気を与えてくれるのが、この本です。
「あ〜あ、本当に大人はなんにもわかっていないのだ」「こんな疑問を抱いているのは私だけなのだろうか」と言いたくなるときが、もしある人(年齢問わず)はぜひ一読してみてください。
この本は、イタリアのブルーノ・ムナーリ氏という作家による著作です。ブルーノ・ムナーリ氏は、アーティストであり、デザイナーであり、教育者であり、思想家であり、さまざまな顔を持つ人物である。日本にも講演や個展、ワークショップのために何度か来日しているそうだ。
私は、イタリア留学時に、ミラノにある本屋さんが授業をしてくれて初めて知ることになりました。
「Nella Notte buie」(邦題:闇の夜に)という絵本が紹介されて、みんなで回し読みをした。ページに穴が空いていて次の展開がのぞけたり、透ける紙が綴じられていて絵柄が重なったり、その発想の面白さと、カタチ自体の美しさに、「これは素敵なものに出会った」と心が踊った。
著者自身が、みずからの文章から再編集した著作で、冒頭で訳者が書いているように、「かつて10歳だったあなたに、そして今10歳の君に」向けられている。すべての漢字にはひらがなのルビがふられ、読めるようになっています。
この本を開いて、ムナーリさんの言葉を読むと「あんた、そんな体たらくでいいのかね」と、お尻をたたかれるような気持ちになる。いや、そんな優しくない。「この大バカモンっ!」と言われているような気持ちか。
簡素化は、知性の証である。中国の賢人は言ったものだ。「二言三言で言えない事は、どんなにたくさんの言葉を連ねても言えない」と。
芸術における最大の障害は、芸術を頭で理解したがる人々
「このような書評は書いてくれるな!」と叱られる事、間違いなしである。
信じることを、この本のことばのように、シンプルに、だれにも媚びず、なびかず、言い表せたら、人生で示せたら、なんと自由で素敵なことだろう。
まだまだ、私の道はつづく。。
ところで、ミラノには、子ども向けのミュージアム(MUBA)という施設があり、ブルーノ・ムナーリ財団と連携してワークショップを行っていました。”特別”に大人として参加させていただいたのだが、大人はお呼びでないという感じで、ムナーリ氏が考案した仕掛けの中、子どもたちが大真剣に遊んでいる場所だった。
落ち着いてイタリアに訪れることのできる時期がきたら、ぜひ!
「触らないこと禁止!」と書かれたポスターのムナーリさん。
こちらは日本では、2018年に葉山にある神奈川県立近代美術館で「ブルーノ・ムナーリ こどもの心をもちつづけるということ」という展示があったので、懐かしくなり訪ねてきました。素敵な場所です。
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『ムナーリのことば』(著:ブルーノ・ムナーリ 訳:阿部雅世)
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