「12人の優しい日本人」リモート版及び本編のネタバレ感想

最高だった

自分は映画版を観たことがあり話の流れは知っているのだが、それでもカタルシスが凄かった
オリジナルキャストに近い方々(伊藤俊人さんはおられなかったが…残念)での上演
正直、読みあわせ程度を想定していたのだが裏切られた形

間の取り方も素晴らしいし一発なのにミスがとにかく出ない
そして何度みても内容が良い

裁判員制度をテーマにした本作
有名な洋画のオマージュと聞いていた初見時、わたしはハッキリ言って舐めていた
そして涙した

ネタバレ全開で行くが、なんと言っても2号である
正義感のカタマリのような人物として厄介ではあるが「正しい人」のように前半では描かれていく
それがガラガラと崩れてゆく後半の爽快感
そして悲哀

2号も最初からああだったわけではない
彼は迷っていた
壁を見つめ、いったんは無罪に票を入れて
しかし突き動かされるように会議をひっかき回し始める
正しいこと、間違いではないこと
それを集めて彼は証明しようとする
『自分の方が』圧倒的に正しいのだということを

観客の涙を誘うのはこの感情に誰しも覚えがあるからだ
そうしなければ生きていけない
哀しみには向き合えない…
真実に向き合うようでいて、2号は都合の悪いそれを河に放り投げようとしていただけなのだ

その蛮行を彼、彼女らは決して責めない
そこに感動があると思う

赦しである

不毛とも思える話し合いの果てに、彼らは「結局はなにもわからない」ということを知り
そして2号を受け入れる

彼らは弱い人間だ
だから化かし合うし喧嘩するし話し合うし許しあえるのだ
それを互いが確かめ合い、幕は静かにおりる

三谷さんらしい脚本だと思う
好きです

是非、初演を舞台で観たかった
伊藤俊人を見たかった
それだけは無念である

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