見出し画像

【第7話】カフェ店員vsブッダ

2019年 7/6のアーカイブ

オードリー若林がラジオのトークで、カフェの店員さんの事を好きになって、氷結を2本飲んでから自分の連絡先を渡すも失敗に終わったっていう話していた。なんだか凄く楽しそうだ。カフェの店員さんの事を好きになってカフェに通い詰めるって楽しそうだ。たまに友達を連れて行って「あの人だよ」「お前行けるって話しかけてみろよ」なんて会話めちゃくちゃ楽しそうだ。

俺はポケットの中の連絡先を書いた紙を握りしめて、行きつけのカフェに向かった。今日こそは可愛いあの子に連絡先を渡すのだ。ハキハキした笑顔が可愛いあの子とは、何回かプライベートな会話を交わしている。ネットで見たカフェナンパノウハウによると任務遂行のタイミングは今日がベスト。というか今日を逃したら臆病な自分はいつまでも連絡先を交換できないだろう。あの子がいるのを確認していつもの席に座る。誰か友達を連れてきた方がよかったか。いや、1人の方が誠実さが伝わるはずだ。あの子が注文を取りに来る。

「パスタとアイスティーをください」「今日はホットコーヒーじゃないんですね」「今日は気分を変えようと思って」「そうなんですね」やはり脈ありではなかろうか。これを脈ありと言わずして何を脈ありと言おうか。あの子とデートできたら死んでもいいな。こんな気持ちになったのはいつぶりだろうか。違う子が食事を持って来る。緊張でうまく笑顔が返せない。流れてるBGMはショパンだったかベートーヴェンだったか、意識を懸命に逸らしながらなんとかパスタを喉に通した。

かつて好きでもない子に告白した時の何千倍も緊張している。ベルを押せば、あの子が会計を持ってきてくれるはずだ。その前に一度、精神統一をしよう。ポケットから音楽プレイヤーとイヤホンを取り出す。手が震えて聴きたい曲までスムーズに辿り着けない。そういえば昔、空のペットボトルを渡されてモノボケを無茶振りされた時も震えが止まらなかったな。なんとか目当ての曲に辿り着き、いつも裏切らないメロディーが流れる。1、2、1、2、カウント2で貫通、脳内出血確実。ラップに合わせて口を動かすとあの子にスッと思いを伝えられる気がする。そう思いながら閉じていた目を開けると、目の前にあの子が立っていた。

どうやら無意識に声を出して歌ってしまっていたらしい。すいませんと謝ろうとした時、その子が俺に2礼2拍手して手を合わせ始めた。ちゃうねんちゃうねん。俺ブッダちゃうねん。確かにブッダは歌ってたけど、俺はブッダとちがうねん。まさかhiphopと笑いのIQが120オーバーな子なのか?高度なボケなのかこれは。そうだとしたらさすがに趣味が良すぎる。自然と聴き慣れているリリックが口を出る。寺のボーズのよう、スネアードラムス木魚、お経のBUDDHA STYLEライムフロー。その子は不思議そうな顔をして俺を見ていた。違うんか、これは。急に恥ずかしくなってきて机の上に一万円札を置いてカフェを飛び出した。カフェが見えなくなってからふと我に返って気付く。今日も連絡先を渡せなかった、、、2本じゃ足りなかったか。次は氷結を3本入れてからカフェに行くことにしよう。

2021年 1/14現在のコメント

書いていて楽しかった文章。今読んでも楽しい文章。この頃は風呂敷を広げて回収しないみたいな文章を書きたかった。伝わるだろうか。これがブッダブランド!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?