歩き続けよう。救いのない日々でも。
【休みん俳】勝手に『#曲からストーリー』(曲から一句スピンオフ)
参加します(2回目ですが、曲を聴いていて、どうしてもストーリーにしたくなりまして。ご笑覧賜りたく)。
今回の曲は『Cloud9』。アニメWolf's Rainサントラ、WOLF'S RAIN O.S.T. 2 の収録曲です。私はアニメ未視聴(オンエアでは完結せず、OVAで完結したそうです)なのでストーリーについては軽く調べたくらいで、胡乱です。元々菅野よう子ファンで、このサントラと出逢い、曲に惹かれました。名曲ですので、よろしければ曲だけでも(何だか前に聞いた台詞💦)今回の拙稿は近未来的、スチームパンクと呼んだらよいでしょうか(SF的世界観を含みますが、そうした表現はほぼありません)ほぼ初めての世界観、トライします。
走る、奔る、賭け続ける。
どこまでも歩き続ける。
どこに向かっているのだろう、僕たちは。
荒寥とした廃墟、その汚染物質、毒ガスと化した大気から、僕たちセブンズヘブンの住民は逃げている。
僕たちの世界は壊れた。人の手がただ一度ボタンを押したことで、そのスイッチにより発射された一発のミサイル、それが大気圏に突入する3分間。そんな僅か行為と時間で、死の大地と変わってしまったのだ。
第五次世界大戦と呼ばれる戦いが懸念される中、A国の軍事施設、そこで引き起こされた「人為ミス」。誤爆だったのだ、あのミサイルは。国同士の牽制のために開発された「惑星内の大気全てを汚濁しえる物質」を内包したミサイル。それは「永遠に凍結」され、決して実用に回されることはない。その筈だったのだ。それがスイッチの押し間違い、そんな莫迦莫迦しい理由で凍結を解かれ発射された。何と滑稽な理由だろう、世界が壊れるもとがそれなんて。
自動車など、ミサイルの前に蒸発するかのように消えた。辛うじて残った車体も二度と動かない。そもそも動かす燃料がない。人を運んでくれる乗り物など、今の世界には存在しないのだ。どんな遠くであっても、人は自分の足で歩き続けるしかない。足を止めることは即、死を意味していた。
おい!!みんな見てみろ!
朦朧としたまま続く死の行軍にも見える人の列、その先頭を歩く男がみなに声を張り上げ、告げる。
「水があるぞ!泉だ!オアシスが残っていたんだよ!!」
リーダー格の数名が、小さな泉へと近づいていった。水があるとはいえ、それが飲用に適しているかは、実際に確かめてみなければ分からない。腰に括り付けた小さなバッグには水質調査センサーが入っている。泉から小さなコップに水を汲み、センサーの先端部を挿入する。計器が数値を表示するまでの30秒。その時間が途轍もなく長く感じられる。
「数値ゼロ。水質中性。化学物質ゼロ。放射線残存なし……水だ、水だよ!!泥水なんかじゃない、真水だ。やった!!飲めるぞ!!」
リーダーの声、それが喜びで包まれる。それに鼓舞され、ゆらゆらと歩いていた人々は、喜色を顔に浮かべてワッと歓声を上げ、泉へと走った。
水で喉を潤した人々の口から、いつしか歌が漏れていた。それは1人から複数、やがては全員の合唱へと拡がっていく。
辿り着くことができる。世界は絶望だけじゃない。船出をするのだ、僕たちは。希望という海原はすぐ近くに、空想ではない現実として皆の眼前に佇み、僕らを待っていた。
絶望からの旅立ち
【End】
本文:1174字
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