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昔々の恋物語。

これは、あったかも知れず、なかったのかもしれない、どこにでもありそうな、1人の老女、その昔語りです。興味を持って頂けたなら、お付き合いのほどを。


いのち短し 恋せよ乙女

ゴンドラの歌 吉井勇作詞。中山晋平作曲 歌唱:松井須磨子など より

いきなり何を言い出すの?そう言いたげね、あなた。笑ってもいいのよ。こんなお婆ちゃんが何を歌い出すのかってね。流石に、この唄が流行りはじめたころは私も生まれちゃいないけど。流行の歌は、よくラジオから流れていたの。それを聴いて胸をときめかす少女の頃、お年頃だった頃。私にだって、そんな時代はあったのよ。

憧れの君がいたの、私が二十歳の頃に。そろそろ結婚を考える年頃だったわ。ハンサムで粋で、みんなの憧れだったひと。私もそのひとりだった。告白したのかって?何を言っているのよ。告白どころか、男女が並んで歩くこと自体が破廉恥だと言われたのよ、私が若い頃は。

そうして時は流れ。私はお見合いをして結婚、今ではひ孫までいる立派なお婆ちゃんになりました。憧れの君は心の中だけに。そうだったはずなの。けれど、何の運命の悪戯なのか、単なる偶然なのか。私は半年前に、その君に会ったのよ。

寄る歳には勝てぬと言いますけれど、私も病院通いが欠かせぬ身。高血圧・心臓の薬。食事の量よりも薬を飲むためのお水が多くてね、嫌になるわ……。あら、ごめんなさい。愚痴はよくない、止めましょう。

あの日はとても暑かった。薬を処方して頂いてから、お水を飲んで帰ろうと思って、私はウォーターサーバーが設置してある場所へと向かった。病院の廊下を歩いていたら、聞き覚えのある声が聞こえてきたの。

「あ。あの……あなたは、Aさんですか?」
「はい、そうですが。えーと……」
「失礼しました。わたくし、旧姓Tと申します」
「ああ、あのTさんですか。覚えていますよ、お懐かしい」

簡単な会話を廊下で交わし、私たちは別れたわ。
憧れの君は、私が通院している病院に入院していたの。病気治療のためで重篤な状態でなく、歩行も食事も通常通り、あと一週間で退院できると笑っていた。それを聞いて、ほっと胸を撫で下ろしたけれど。

人のことは言えない。少女だったころの面影など、今の私には残っていない。皺くちゃのお婆ちゃん。そして、憧れの君も細くなって、街路樹の枝のような肌をしたお爺さんになっていた。あれから半世紀以上が流れたのですもの、当然ね。

「変わっていませんよ。笑顔があのころのまま、花が綻ぶようだ」
「まあ、お上手だこと。あなたもダンディでいらっしゃるわ」

お世辞なのか本音なのか。多分、両方ね。

恋はいつでもできるもの。私?今は夫と子供、孫ひ孫を愛しているわ。恋は卒業したけれど。あなたはどうなのかしら。よい恋をして、愛を育てて頂戴ね。

bingクリエーターによるAI画像生成、モガとモボの談笑。




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