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愛すべき登場人物だらけだった『アレ伝』――書き仕事の日々9

「アレクサンドロス大王が、フェニキア人の港湾都市テュロスを陥落させた」

この史実を軸に、物語を進めよう、と決めたとき、はるなの頭の中には二つのエピソードがありました。(二つしかなかった、というべきか)
一つは、ロマンス。
とはいっても、実は、全然主役ではない二人のロマンスでした。(カイとエリッサのエピソード。七巻(最終巻)に出てきます)

ところが、カイと敵対する側にハミルという大親友をおいてみたら、
あれよあれよというまに話をハミルに引っ張られ、とうとう主役の座を奪われてしまいました。ハミル強し。

それにしても『アレ伝』は、とにかく読者のみなさんのお気に入りキャラがめちゃくちゃに割れていて、「リュシアス命!」という人もいれば、「とにかくハミルだハミルハミル!」かと思えば「ハミルなんか大っ嫌いだ。なんといってもアレクスだ!」「アレクスが好きなんだけど、サラとくっつくのだけはぜったい許せない!」
などなど。(マティアだけはまんべんなくみんなに好かれる不思議)

「書いてるハルナはいったい誰が一番お気に入りなのッ?」という質問をよくいただきました。(まあ落ち着いて)
キャラクターは、みんな自分の子どものようなものだから、一生懸命生きる姿はとにかくみんな愛しい。
でもやっぱり、リュシアスだけは違ったかな(我が子としては、チト育ちすぎ)
実は、最初に思い浮かんだたった二つのエピソードのうちの、もう一つ。
それは、リュシアスが亡くなる場面でした。
一巻を書き出す前から、これだけはハルナの頭の中にしっかりとあり、
その場面が、ほぼ物語のゴールになる予定でした。
だからやはりリュシアスは別格だった気がします。

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2023年1月現在22記事(1記事平均1800文字程度)。書き仕事のヒント、執筆裏話などなど。

「榛名しおりはこんなふうに二十数年書き仕事してきました」を、かっこつけずオープンに。何かが、少しでも、どなたかの書き仕事のヒントになってく…

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