【論文まとめ】不確実性にの時代におけるキャリア・アダプタビリティ

北村雅昭(2018)の論文をまとめる

近年AIなどの技術革新やグローバル経済の脆弱さにより、大きな不確実性にさらされている。個人のキャリアは安定した組織や雇用を前提として緩やかに(確実に安定して)発達するという考え方から変化した。

その背景にはロボットの先端技術による人間の雇用の揺らぎ、リーマンショックなどでグローバル経済の脆弱さが露見したことにある。かつてのように予測可能性の高いキャリアを歩むことは期待しづらくなっている。そのような時代を生き抜くための個人の準備、教育やアドバイスはできているのか。

Gelattは意思決定プロセスにおいて不確実性を積極的に受け入れ主観的・直感的な意思決定と結合していく重要性を「積極的不確実性」という言葉で表現した。

キャリアは人生のいろいろな段階において、仕事以外の生活空間も含めた環境と事故との相互作用を通じて発達するという「ライフスパン、ライフスペース理論」が提唱された。それに加え、Savikasは個人のキャリアは個人が自らのライフテーマに沿った物語として構成されるものとなったという観点から「キャリア構成理論」(キャリアは組織から与えられるものではなく、個人が環境へ適応を通じて自ら構成していくもの)を唱え、個人がさまざまな転機を乗り越えながら自らのキャリアを構成していくために必要な資源としてキャリア・アダプタビリティ(CA)に注目した。

CAは、Superが提唱したキャリア成熟(仕事席に入ろうとする青年の成熟度)からさらに発展し、生涯を通じた成人発達という観点で生み出された概念。

社会人になった後 も、成長、探索、確立、維持、離脱というサイクルをうまく回して、キャリア発達を続けていくためには、将来を大きく展望し(計画性)、仕事と自分についての正確な イメージを掴み(探索性)、必要な情報を収集(情報収集性)した上で、自らの進むべき道についての意思決定をし(意思決定性)、自分が望む状態を現実化していく力(現実志向性)が必要だとSuper&Knaselは考えた。

Adaptを起源とするadaptivityは開放性・外交性・真面目さ・協調性といった個人特性なのに対して、Adaptabilityは変化しやすく教育や経験を重ねることで蓄積される性質がある。個人がどのような文化、文脈に置かれているかに大きな影響を受ける。



必ずしむ左から右ではなく、良好なadaptingがCAを高めるなどのFBが存在する可能性が示唆されている。


関心(未来を現在の延長線上にあると感じさせる昨日)、コントロール(将来に対して個人が取る責任お度合い)、「好奇心」(将来につながる様々な選択肢や機会を探索するモチベ)「自信」(障害を乗り越えることによって成功を掴めるという予期)が均等に統合することでCAが高まるが、実際は1次元が遅れたりすることで適応が難しくなるため支援が必要となる。

CAの先行要因に関する研究では、前向きさや楽観主義、粘り強い目標追求といった個人特性との関連が指摘されている。受容欲求の高さや社会規範へのこだわりの強さなどは阻害要因とされている。

一方で個人を取り巻く文脈要因との関係を取り上げた研究はあまり多くない。(親子の良好な関係、社会的サポート、認知された組織支援、上司との垂直関係など)

CAとadaptingの関係について、ワークエンゲイジメント、仕事ストレスの軽減などに正の相関が見られる。

CAの媒介効果については開放性・協調性などの個人特性とキャリア探索を「関心」「好奇心」などがつなぐといった研究結果がある。

課題として、CAの発達メカニズムがよくわかっていない。受けた教育や仕事経験、人的関係等がCAの発達にどう影響を与えるのか、大きな転機を乗り越えることがCAにどう影響を与えるのかといった時間的な推移の中で捉えた研究が乏しい。
→これが分かれば、実効性のあるキャリア教育・キャリアカウンセリングにつながる。

また、文脈要因の与える影響がよくわかっていない。
CAをより理解するためには、具体的な状況における機能を見ていく必要がある。



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