【本紹介】精神科の薬がわかる本①抗うつ薬がわかる
うつの薬による治療
うつとは
健康な人でもライフイベントによってなって気分の波は生じるのが自然
医療の対象となるうつとは
憂うつな気分、興味意欲の喪失などを基盤とし、生活に何らかの支障が生じている
関連症状がみられる
途切れることなく1日中持続し、2週間以上経っても改善が見られない
といったもの
脳内の電気信号を制御する神経伝達物質の量が異常になることで信号伝達に問題が生じる
→精神症状が生じメンタル不調になる
セロトニンやノルアドレナリンがなぜ減少してしまうのかという根本原因は未解明!
だが、このセロトニンとノルアドレナリンを増加させる薬がうつの症状を改善させることはわかっている。
→これが抗うつ薬
抗うつ薬は特効薬ではない!
抗うつ薬の処方から
治療者が症候の改善を実感するまで→2-3週間
当事者が症状の改善を実感するまで→4-6週間
効果の実感に時間がかかることはあらかじめ伝えておかないといけない!
症状が軽快しても、思わぬトラブルを避けるためにゆっくり時間をかけて少しずつ減量して治療を終える。
抗うつ薬の特徴と副作用
抗うつ効果と神経伝達物質の関係が未解明だって時の抗うつ薬→三環系、四環系
解明してからの抗うつ薬(新世代抗うつ薬)→SSRI SNRI NaSSA
両者の大きな違いは副作用
→特定の神経伝達物質だけに親和性が高くそれ以外には低い特性である「選択性」を高めたことで副作用が軽減した
※副作用が少ないことは治療継続にも重要
旧世代薬の欠点の中でも
アセチルコリンに関わるコリン系神経への影響が問題視されている
→抗コリン作用は認知症の発症を助長する恐れがある
※しかし、難治例や重症例には旧世代薬の方が効果が出るケースもある。医療費の自己負担額を抑えるのにも良いため、完全に旧世代薬がお払い箱というわけではない
NaSSAのしくみ
セロトニンとノルアドレナリンの量にブレーキをかけているα2受容体のブレーキを外すことで、量を増加させている
+ドーパミンも増加すると考えられている
抗うつ薬の副作用とその原因
旧世代薬は抗コリン作用が代表的
主作用は発現するのに数週間かかるにもかかわらず、副作用は服用してすぐ生じる
認知障害が抗うつ薬の副作用によるものなのか、うつ病の症状なのかは鑑別が難しい
ナトリウムチャンネル阻害作用があり、細胞活動機能が障害されることがある。(これを細胞毒性という)
→不整脈やてんかんなどが生じるリスクがあるため、大量服薬は死に至る恐れあり
図
SSRIは副作用が格段に軽減されているが、消化器症状が目立って感じられる
→セロトニンは腸管では運動調節をおこなっている(セロトニン量の90%は腸管にある)
→消化器症状は10日〜2週間程度で治ることが多い
そもそも脳内のセロトニンが減少することでうつになるなら、おそらく腸管のセロトニンも減少している→うつ状態の際の食欲不振もこれに関係している
しかし、セロトニンの90%は腸管にあるのでちょっと減っただけでは致命的なものにはならず、その状態に抗うつ薬が投与されるのだから逆に腸管のセロトニンが一時的に過剰になる
SNRIはほぼSSRIと同じ症状だが、特徴的なのはノルアドレナリンの作用による動動悸や振戦があること
SNRIの方がケースによってはSSRIよりも抗うつ効果が早くでるが、場合によるため絶対に第一選択という話ではない
NaSSAの副作用の特徴は、嘔吐・悪心は少なく便秘が見られることと、傾眠(眠気)が生じること
傾眠→食欲抑制が効かなくなる→過食 という流れが目立つ
一方で、動悸による入眠障害や薬の減量期の熟眠障害が増加している傾向がある
→うつの再発と取り違えられる
口渇もひどい時は三環系と同じくらいでる
薬を中止するときの注意点
高い選択性をもつ新世代の抗うつ薬は、薬の中止の際に問題が生じる
→一部の神経伝達物質だけに作用するため、服用を中止するとホメオスターシスが急激に崩れ、関連する症状が顕著に出現する(中止後発現症状)
中止後発現症状は服用中止後2日以内に生じることが多く、初期の副作用がひどい場合は中止後発現症状も重く出ることが予想される。
→ゆっくりと徐々に減らしていくのが大事
SSRIとSNRIの使い分け
まず、最も優れた抗うつ薬というものがあるわけではない
厚生労働省が抗うつ薬選択のアルゴリズムを提示しているが、そこの第一選択薬とされているSSRIとSNRIの使い分けは明記されていない
うつ症状に対してセロトニンとノルアドレナリンがそれぞれどのように機能しているかを理解することで使い分けができるようになる!
うつ症状の特徴的な2つの症状
抑うつ気分と意欲・気力減退は前者はセロトニン、後者はノルアドレナリンが担当している
つまり・・・
抑うつ気分が前面に出ている場合→SSRI
意欲減退・気力減退の症状が前面に出ている場合→SNRI
↓両症状の程度が同じくらいの時は・・・
不安に着目!!
強迫的・被害的内容(認知機能の障害)→SSRI
衝動性を伴わない漠然とした不安→SNRI
↓軽度で判断が難しい場合は・・・
行動を評価する!!
取り乱しやすさ、余裕のなさが見られる→SSRI
やる気のなさ、億劫感→SNRI
仮面うつ(身体症状が表に出ている)の場合→SNRI
両機能それぞれに関連した症状が混在、よくならないが最悪に至らず主となる症状が変動する→NaSSA
抗うつ薬の処方の注意点
自殺念慮・自殺企図につながる兆候が見られた際はすぐに抗うつ薬を処方しない
→SSRIは自殺リスクを高め、SNRIも衝動性に変化をもたらすとされている
その場合・・・まずは衝動性から低下させるために抗精神病薬を用いる
薬の知識を活かした助言
治療初期
「抗うつ薬は副作用が先にでて作用が後から出てくるそうです。副作用が出ているなら主作用も出てくる証拠。ゆっくり待ちましょう。」
回復期
「抗うつ薬は急に減らしたり、中止したりすると副作用がでるそうなので、どんなに元気が戻ったと思っても、薬の量の調節は担当医とよく相談し、自分の判断で勝手に薬を減らしたり止めたりしないで」
豆知識
・グレープフルーツは薬の効果を高めすぎるのでNG
・お酒もNG
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?