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自重トレーニングのススメ<後編>

前編では、自重での筋力トレーニングを導入するメリットや、どういった人に有効かお話ししていきました。

後編では、実際に導入する際に注意するべき点や、メニューの紹介をしていきたいと思います。

⚫️自重トレーニングのデメリット

自重での筋力トレーニングは、体さえあればどこでもできるのが最大のメリットです。

しかし自重でのトレーニングには大きなデメリットがあります。それは負荷を変えるのが難しい事です。
ウェイトトレーニングでは重りを増やす、減らすことによって負荷を調節する事ができます。

筋力トレーニングには、原理原則があり、自重トレーニングで特に大切になるのが漸進性の原則です。漸進には「順を追って少し進んでいく事」という意味があります。
トレーニングに当てはめてみると徐々に負荷を増やす事が必要という事です。

漸進性の原則は筋力向上、筋肥大させるには大切な原則です。つまり、負荷を増やしにくい自重での筋力トレーニングはどこかの時点で筋力の向上が停滞する可能性があります。

⚫️負荷の変え方

ただ自重でのトレーニングでも負荷を増やす方法は存在します。

それは、

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この4つです。

可動域を変える
筋力トレーニングでは可動域が大きい方が負荷は大きくなります。
想像してみてください、腕立て伏せをするときに胸を地面につけてやるのと、少しだけ腕を曲げるのではどちらがきついでしょうか?胸が地面につくくらいやったほうがきついですよね。

すなわち負荷を大きくするには大きな可動域で筋力トレーニングをする事が大切です。
市販されているプッシュアップバーも可動域を大きくして負荷が大きくなるという仕組みです。

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安定性を変える
バランスディスクやバランスボールなどの不安定な面でスクワットなどの運動を行うと活動する筋群が増え、負荷が増します。

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個人的には不安定な面上の運動はオススメしません。
怪我のリハビリ等で神経系の刺激を狙うのであればいいと思いますが、パフォーマンスアップには向かないという報告もあります。
安定性を変えるのであれば、両足の運動を片足に変える方が良いです。両足にかかっていた負荷が片足のみになるので、単純に負荷が大きくなるプラス不安定になり筋肉の活動が増えます(特に中臀筋)
サッカーなどのスポーツでは、スプリントやキック、ジャンプ、ターンなど片足になる場面が多いので、片足で自分の身体を支えるトレーニングは大切になっていきます。

動作に抵抗を加える
動作に抵抗を加える方法としては、徒手によって抵抗を加える方法や、チューブなどの道具を用いる抵抗を加える方法があります。徒手抵抗は、二人組でこのように行います。

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徒手抵抗は、チューブと違い道具がなくても行えるのが最大のメリットですが、チーム指導のときには注意が必要です。

チーム指導で選手同士に徒手抵抗を任せると、競い合って行ったり、ふざけながら行なったりしてしまい、トレーニングの安全性や効率性に問題が出る場合があります。なのでチーム指導で徒手抵抗をやる場合には、抵抗をかける側に愛護的にやってあげる、効率よく筋力向を上させるためにコンセントリックだけでなく、エキセントリック収縮にも抵抗を加えるように指示する必要があります。


チューブは、比較的安価に手に入れる事ができ、色々な動きに負荷を加える事が簡単にできるので、負荷を増やすだけでなく、自重トレーニングにバリーションを待たせるのに最適です。またチューブの形状によっては自重トレーニングで鍛えにくい、プル系の動作も行えるのが魅力になります。

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ただチューブの性質上チューブを伸ばす方向には負荷がかかるが、元に戻るときには負荷が減ってしまう欠点があります。本来筋力トレーニングではチューブを伸ばす方(コンセントリック収縮)より、元に戻る方向(エキセントリック収縮)への方が、大きな力を発揮できます。
筋力アップや筋肥大では、エキセントリック収縮への刺激が大切になるので、チューブトレーニングでは、そこへの刺激を入れる事が難しいのが、デメリットです。


✅二人組
2人組や3人組など人を使う事で、負荷を増やす方法があります。簡単なものでは、人を背負ってスクワットをする。お互いに引っ張りながらスクワットをする。
タオルをお互いに引っ張る、足を持ってもらいノルディックハムをする。など人を使う事で負荷を大きくしたり、1人ではかけられない方向へ刺激を入れる事ができるのが、最大のメリットです。

自重での筋力トレーニングは1人でするものと考えてしまうと、考えが狭くなりバリーションが減ってしまいます。
2人組や3人組など複数人使う事でもっと多くのエクササイズを考える事ができ、柔軟な発想で様々なエクササイズを発明できるのが自重トレーニングの良さです。

自重トレーニングの例としてこの動画を参考にしてみてください


⚫️プログラミング


自重での筋力トレーニングをプログラする際に大切なことは、ウェイトトレーニングの場合とほとんど変わりません。
負荷の増やし方、頻度、レップ数、セット数などの細かい話をしていくと長くなってしまうので、僕が実際にプログラムを作る上で考えていることを大まかに説明していきます。


⚫️エクササイズの分類


僕が自重トレーニングを作る際には、エクササイズを6つのカテゴリーに分類し、その中から最低1個はメニューに組み込むようにしています。そうすることで全身を均等に鍛える事ができるます。また、エクササイズを分類することで、メニューを作る際の効率が上がるので、予め分類しておくことをオススメします。

その分類は
ジャンプ系、スクワット系、ヒップヒンジ系、プッシュ系、プル系、体幹系です

✅ジャンプ系

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スクワット系

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ヒップヒンジ系

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プッシュ系

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✅プル系

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✅体幹系

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※あくまでも、この分類は僕個人の分類になります。もう少しエクササイズの分類を詳しく学びたい場合はこちらを参考にしてみてください。


ご覧の通り、プッシュ、プル系は自重トレーニングでは非常に少なくなります。特にプル系は、道具、人を使わない場合は、懸垂のみになってしまうので、工夫が必要です。

プッシュ系、プル系、体幹系はメニューそのものが少ないため、僕がメニューを作る時は、ジャンプ系、スクワット系、ヒップヒンジ系を中心にメニューを組み立て、プッシュ系、プル系、体幹系の3つから最低1つはエクササイズを組み込むようにしています。

その理由としては、メニューが少ないからだけでなく、人間は、主に下半身の力を使って動いている生き物です。スプリントやジャンプ、ターンやカッティングで大切になっていくのは下肢の筋肉なので、そこを中心に鍛えるメニューを作成するように心がけています。与えられた時間で最大限に効果を引き出すために、何に優先を置くか考えながらメニューを作ることは重要になっていくと思います。

⚫️メニュー例

最後に僕が実際に行うメニューを書いていきたいと思います。どのメニューもチーム指導で所要時間は20~30分位です。

例1 

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例2  

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例3

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僕のメニューは、導入初期では簡単な動作のものを少ないセットで始めていきます。そして徐々にセット数を増やしたり、両足でやっていたメニューを片足に移行してメニューの難易度を上げていきます。そして最終的には2人組で行うエクササイズを増やしていき、自分だけでは行うことの難しい動作や相手を担ぐなどして負荷を高めていきます。

⚫️まとめ


自重での筋力トレーニングを行う上で大切な考えや、実際に行う際にどうエクササイズを取り入れていくのか、お話していきました。

冒頭でも話しましたが、自重での筋力トレーニングの最大のデメリットは、負荷を大きくすることが難しい点です。どんなに工夫しても、自重でのトレーニングでは限界が存在します。そして漸進性の考えを無視して筋力トレーニングを行うと、停滞が起こってしまいます。

すなわち、どこかの地点でより多くの刺激を加えるためには、ウェイトトレーニングへの移行が必要になります。前編でお話した通り、自重での筋力トレーニングが有効な対象者は、道具の無いチーム、ウェイトトレーニングを始めようとしている選手、遠征等でウェイトトレーニングを実施出来ない選手、育成年代の選手です。つまり筋力トレーニングの導入や筋力低下抑制が自重トレーニングのメインの目的です。

より大きな効果を得るためには、いずれはウェイトトレーニングに移行しないといけません。

ただウェイトトレーニングを導入するきっかけとして、自重での筋力トレーニングの良さが広まっていけばいいなと思い、このnoteを書きました。もしこの考えに共感できたならSNS上でシェアして頂けると、嬉しいです。

機会があればウェイトトレーニングの効果についてのnoteを書いてみようと思います。


参考






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