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「たくさんの人」の外で

この夏、自分がこれまでに書いたものを"読み直す"という作業をしていた話は、その頃にちょこちょこ書いていた。そのリストの中には、『アフリカ』の編集後記も、全て(28回分)あった。最新号が29号だから29回分では? と思われるかもしれないが、28回分なんです。それはともかく──これは全て通しで読めるようにしようと思っているのだが、それを読んでいると、当初ぼく(=編集・発行人)は「即売会に出ない」「寄贈をしない」「合評会をしない」といったことをある程度、意識的に(意固地に、というか)実践していたようである。

「寄贈をしない」というのは、100%その通りではなかったが、いい加減な見方をするとそうだろうし("業界人"だからという理由で寄贈してはいない)、書いている人同士で集まって書かれたものをめぐって議論するといったようなこともしなかったし(したい人はすればいいが、ぼくがいる場では"お喋りをする"という感じだったはずだ)、そんなことよりも、なぜそんな「〜しない」を名言していたかというと、「即売会に出ない」が大きかったと思う。ここで言う"即売会”というのは、いわゆる"同業者"というか"同好者"が売り・買いをするような集まりだ。

『アフリカ』をやる前に、ぼくが"編集長"となって数冊、出した雑誌はまぁまぁの大所帯で、中には"即売会"に出たいという声があり、実際に出たのだが、素直な感想を言うと、ぼくはそういう"同好会"には興味がないということだった。

それで、いま、もしかしたら──と思う。2009年以降、『アフリカ』の当初の書き手が離れて行った後に、新しい書き手が次々と訪れて、『アフリカ』が継続した(というか、ぼくからすれば「止められなくなった」)のは、そのせいではなかったか? ということだ。

「たくさんの人に支持される」というのがいまの人は大好きなんだなぁと思うことが多いが、まぁ、それはいい。自分だってその影響を多少なりとも受けているだろう。というか、嫌でも受ける。「たくさんの人に支持される」というのはそういうことであって、好きなものを好きな人同士で愛でているのであれば「たくさんの人に支持される」とは言わないのではないか。

『アフリカ』が「たくさんの人に支持される」ことは、これからもまぁないだろう。しかもぼくは自分が好きなものを「たくさんの人」と共有したいという思いがあまりないので、「同好会に参加しなければ読まないというのであれば読まなくて結構」と身を引いたのだ。そのかわり、その当時、いきつけだった飲み屋で「こんなのつくってるんですよ」と見せたら常連さんが興味を持って買ってくれたということがあり、しかも、たびたびあり──その時、ぼくには何かひらめいたことがあったのだった。

(つづく)

日常を旅する雑誌『アフリカ』最新号(2019年7月号)、相変わらず発売中。在庫が少なくなってきたので、お早めに。

「道草の家・ことのは山房」のトップ・ページに置いてある"日めくりカレンダー"は、1日めくって、11月24日。今日は、「スイートポテト」のこと。

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