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第30夜◇桜散る木の下風は寒からで~紀貫之
桜散る 木の下風は 寒からで
空に知られぬ 雪ぞ降りける
(意訳:桜が散るこの木の下はもう寒くないのに、空に知られぬ雪が降っているなあ。)
紀貫之 拾遺和歌集
今日、はらはらと舞い散る桜をみて、
「あぁ、空に知られぬ雪…」とこの歌を思いました。
花という、春に降る雪があり、
雪という、冬に舞う花がある。
花を見て、それはただ花であるけれども、
それはまた雪でもあり、そもそも花と雪の境目など曖昧なものだと思うのです。
散る花びらを見て、
花であり、また雪であると思うことで、花と雪をやわらかく糸でつないだ真ん中あたりへ…ふと意識が解放され、いずれの言葉にも属さない、ただ光の中で舞うなにものかと、ほんのいっとき通じ合うことができるように思うのです。
いつかときが移り変わり、
楽しみや悲しみが過ぎ去ったとしても
また桜を仰ぎ見て、空に知られる雪ぞと恋慕うのでしょう。