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意外と知らない作家業の話(※個人差多々あり)

少し前に出版業界とは関係のない方と仕事の話をしたら、「小説家のイメージ全然違った」みたいな感想でした。確かに自分も商業で書くようになるまで知らないこと沢山だったなーと思ったりもしたので、デビューするまで知らなかった作家業あるある?を書いてみようかと。

なお、以下の内容はあくまで私個人のケースです。作家さんの活躍するジャンルや版元、実績や歴によっても多大に異なるのでご注意ください。参考までに書いておくと、私の現在のメインのフィールドは児童文学・YA、児童文庫などの児童書ジャンルです。


◆仕事は基本的に口約束で進行

作家業って一応個人事業主のフリーランスなんですが、一般的なフリーランスと大きく異なるのがこれかなと。本の刊行まで1年以上かかることが多いものの、契約書が届くのは早くて刊行1ヶ月前。なんなら刊行後に来ることもある。

なんて話を聞いた方に、「それでよく仕事になりますね⁉︎」と驚かれたんですが、私も本当にそう思う。互いの信用がないと成り立ちません。

ちなみに、これまで初稿を書いてからおじゃんになった経験が1回、プロット段階・執筆着手段階で連絡が来なくなったことは2回あります。本当に不義理。ちゃんと連絡してくれる担当さんを大事にせねばと改めて思った。

◆締切に追われていない

小説家って締切に追われてて編集者に書かされてるイメージ、と言われたんですが、これはなんというか人それぞれ。

ラノベや児童文庫のシリーズを多く抱えている作家さんだとタイトな締切に向けてがんばっている方も多いのですが、私は現在書き上がってから発売日が決まるスタイルの単行本の仕事が多いので、締切は暫定的なものが多いです。なので締切のある児童文庫のスケジュールを先に固め、合間に単行本書くみたいな。
かつ、作業スタイル的に締切の1ヶ月前には書き終え、その後はゆっくり推敲するタイプなのでだいぶ余裕があり、遅くても締切の1週間前には原稿を送ることがほとんど。この辺は本当に人それぞれ。

短編の仕事だとタイトなスケジュールで依頼されることも稀にあるので、締切を強く意識するのはそのときくらいかも。

ただ締切に追われていないからといってダラダラしてしまうのは嫌なので、私は平日は1日7〜8時間作業し、多い時で月1冊初稿をあげるペースでスケジュールを組んでます。一応専業なので。そこら辺のスケジュールの組み方も多分だいぶ個人差あるんじゃないかなと。

◆企画書(プロット)が必要

作家って好きなものを書いて本にするんでしょ? と思われがちですが、実際は企画書やプロットを作って企画会議に出してもらい、GOが出てから書き始めることがほとんどです。なんなら執筆期間よりプロットや企画書作ってる期間の方が長い。おかげで企画書作るのはとても慣れた。

児童文学なんかは完成原稿での持ち込みができるところもあると聞いていましたが、実際に色んな版元さんに話を伺ってみると、完成原稿でも受け取りはするけど困ることも多いとのこと。簡単なあらすじだけでもいいので先に見せてもらえた方が早く返事ができるし、何ヶ月も待たせなくて済むとのことで、そりゃそうだよなと。版元の方で求めているものなどももちろんあるので、できるなら事前にすり合わせた方が双方幸せな気がする。

◆スケジュールが読めない

企画書やプロットを送った際、いつぐらいに戻しますと予告してくれる版元さんもあるのですが、わからないことも多いです。わかっても「返事は数ヶ月〜半年後になります」みたいなことも。(そしてもちろん企画が通らないことも多々ある)
なので私の現在のスタイルは、企画が通ったところから適宜対応して作業進めていく、という行き当たりばったりなものに近いです。スケジュールを聞かれた際には、「GOの返事が早かったところから書いてます」と答えてます。

刊行ペースが決まっているシリーズものだと先々までスケジュールが読めるのですけどね。今のメインはスケジュールが読めないものの方が多い。

◆好きなものを好きに書いているだけじゃない

前述のとおり企画書も書くしなんだしで、インスピレーションのまま好きなものを好きに書いているだけじゃありません。この辺りはエンタメジャンルが特に顕著で、レーベルの方針や流行からこういうジャンル、キャラで書いてとオーダーがあることもしばしばです。そこに自分の好きなものをどう肉付けしていくかが勝負というか。

文学ジャンルだとこの辺のオーダーは緩いといえば緩いんですが、とはいえ書きたいものすべての企画が通るわけでもないので、版元が求めているものを聞いた上で、それに合いそうな企画を選んで出すこともあります。でも企画が通ればわりと好きに書けることもあるかも。

インスピレーションのまま書けるということはないけど、自由度の幅はジャンルによりけり。

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なんて感じで私の仕事の話でした。ちなみに現在デビューから6年目、1年目とか2年目は多分全然違うやり方してたので、また年数が経ったりしたらスタイルも変わってくるかもしれない。それくらい臨機応変とか柔軟さが求められる仕事だなーということに最近になって少し慣れてきた。スケジュール読めないけど、企画が通らなくなったら読むためのスケジュールすらなくなって失業なので、ぼちぼち続けられるようがんばりたいです。

あとここまで書いて思ったけど、投稿サイト出身の作家さんだとまた進め方違うんだろうなーと思ったりしました。Web連載ベースでやってるの想像があまりできない。

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