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北海道コンサドーレ札幌U-18 〝2021最後の戦い〟を振り返る

高校生年代の全国上位20チームが東西に分かれ、年間を通しリーグ戦を戦うU-18サッカープレミアリーグ。

2015年以来となる〝プレミア復帰〟は北海道コンサドーレ札幌U-18にとっての悲願だ。

荒野拓馬・深井一希・高嶺朋樹・菅大輝ら現在のトップチームの主軸選手もこの舞台で力を磨いて来た過去がある。

しかし、2021年度も札幌はプレミア奪還を果たすことはできなかった。

正直、ショックが大きい敗戦だ。

だが、この壁はチームの未来の為に必ず越えなくてならない。

プレミア復帰の第一歩は今年のプレーオフの戦いを振り返る事から始めたい。

対戦カード

2021プレミアリーグ プレーオフ

昨年はコロナの影響でプレーオフが開催されておらず、まずは大会が開催されたことに感謝したい。

今年の組合せは以下の通り。

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今夏の全国大会で準優勝にも輝いた北海道コンサドーレ札幌U-18は関西2位の阪南大学高校と関東1位の川崎フロンターレU-18と一枠を争う激戦ブロックで争うことになった。

1回戦の相手は阪南大学高校。
エースに来季から湘南ベルマーレ入団が内定している鈴木章斗を擁し、
今年の夏の総体、冬の選手権ともに全国大会出場を果たす難敵だ。

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更に11月中旬に選手権の大阪予選を制し、12月末からは本大会を控える状況で試合勘は十分。

一方の札幌は、10月3日のプリンス北海道がこのチームで戦った最後の公式戦。
12月4日に広島入りし、地元の高校と1試合の練習試合も消化。また、その前週には関東遠征も行うなど、可能な限りの調整は行ったようだが、前述の練習試合でも実戦経験の乏しさを感じられるシーンも散見したようで、チームの錬成・試合勘という意味では少なからずの不安もあった。

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対阪南大学高校 キックオフ

札幌のスタメンは以下の通りだ。

逢坂文都 
中村香紀
川原颯斗
西野奨太
菊池季汐
砂田匠
小沼昭人
瀧澤暖
千田悠貴
佐藤陽成
漆舘拳大

両チームのスタメンを見て目に留まったことが2点あった。

1つ目は普段右で使う事の方が多い、札幌の佐藤・瀧澤のユニットを左に持ってきている意図はなんなのか?ということ。

それは試合を見進めていく上で、相手スカウティングの末、配置を変えたのだろうという狙いが推察できた。

2つ目は阪南高校も普段とシステムを変えてきているということ。
4バックを基本とする阪南はこの日5-3-2のシステムでスタートしていた。
森下監督も相手のシステム変更には驚いたと語る。

森下監督
「システムが最初違ったのはビックリしましたね。ただ、だからといって自分たちは攻撃でそこまで困っていなくて。左サイドの裏を狙えていたので、チャンスはあるかなと思っていました。」

言葉の通り、佐藤・瀧澤の左サイドのユニットに漆舘が絡んだ裏への攻撃は得点の匂いを充分感じさせた。

最初のチャンスは前半4分。広大な背後のスペースにDFラインでのサイドチェンジを受けた菊池季汐が左足でダイレクトに蹴りこむ。

そこに漆舘拳大が抜け出し、GKと1対1のチャンスを迎えるも、シュートは惜しくも枠の外に外れてしまう。

漆舘拳大
「一回足裏でボールを地面に転がせば、シュートもしっかり当たったと思うんですけど、回転が掛かったまま打ったのでシュートもアウトサイドに流れてしまいました。」

漆館

その後も札幌ペースでゲームは推移。ハイラインを形成する阪南のDF裏スペースを狙う攻撃の意図は垣間見えたが、最後の精度が嚙み合わず得点にはつながらない。

西野奨太
「相手が5-3-2で最初来て、2トップが僕らCBを限定してきましたけど、僕らの所はそこまでプレッシャーが来ていた訳でなかったので、自分からも何本か打開するパスは出せたと思います。ただ、自分たちがずっと課題にしている最後の質。ずっと課題にしていた部分が最後に出てしまったのかなと思います。」

すると、前半15分 相手のCKからだった。

鋭く蹴りこまれたボールは札幌DFのゾーン間に入れ込まれ、相手エースの鈴木章斗に頭で合わせられ失点。
実質的に相手のファーストシュートだったが、警戒していたセットプレーから先制を許してしまう。

先制

砂田匠
「セットプレーが強いというのはスカウティングでも分かっていたんですけど。そこを対策しきれなかった。」

逢坂文都
「みんなもセットプレーの準備はしていたんですけど、相手が思っていた以上に強さがあったなあと。相手の方がそこの準備や積み上げてきたものがあったように感じます。」

西野奨太
「自分たちはゾーンとマンツーを組み合わせて守る中で、警戒する相手には付いていましたけど。ゾーンの場合もっと一人一人が責任を持ってはじく意識がないと簡単に入れられてしまう。セットプレーでは反省しかないですね。ただ、その後、自分たちのサッカーをもっとやれていたら、十分に逆転するチャンスはあったと思う。」

西野が試合後に振り返ったように0-1の状況であれば、まだまだ挽回可能だったと思う。

失点後には「ここからだぞ。ズルズルいくなよ」という声掛けこそあったが、直後の前半17分だった。
自陣ゴールキックからの跳ね返しの流れから、阪南の田中大翔選手が見事なミドルシュートを突き刺し、追加点。0-2となる。

2点リードした阪南の激しい球際の攻防に札幌は苦戦が続く。

特に普段であれば、チームの根幹として大車輪の活躍を見せるダブルボランチに相手の激しいプレスが襲い掛かり、リズムをつかみ切れない。

砂田匠
「相手プレスの速さは道内では中々、ないものだったと思います。でもプレスが来ている中でも自分が間でもっと受けて動かせていたら状況が変わったと思うので責任を感じています。」

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阪南のインテンシティの高さに苦しむ時間が続いた森下監督は早めの交代で状況の打開を図る。
前半32分 千田悠貴OUT 瀧澤天IN

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メンバー交代と共に札幌はシステムを4-2-3-1気味に変えると徐々に札幌のチャンスが増えてくる。

だが、前線の佐藤・漆館・瀧澤暖・瀧澤天の連携を中心にチャンスは幾度か訪れるが、得点を奪うことが中々できず、そのまま2点のビハインドで前半を折り返した。

選手たちも前半の戦いに一定の手ごたえは感じていたという。

砂田匠
「チャンスは全然作れていたので、慌てずに戦って1点ずつ返していこうと話していました。」

ハーフタイム 瀧澤暖OUT 佐々木奏太IN

阪南もシステムを従来の4-4-2に戻すなど修正を図ってきたが、後半の立ち上がりも札幌優勢でゲームは推移。

後半16分 瀧澤天が前線から猛プレスをかけボールを奪うと、そのままヒールパス。これにエース・佐藤陽成が反応し、GKを交わしてシュートを試みるも相手GKのセーブに遭う。

佐藤2


後半27分 中村香紀OUT 出間思努IN

ユーティリティプレイヤーの佐々木奏太がSBに下がり、出間思努が最前線に。札幌はチャンスこそ作るが、中々得点を奪えない。

徐々に残り時間が気になってきた後半34分 自陣のペナルティエリア脇でファールを取られFKを与えてしまう。

櫻井文陽が蹴りこんだ見事なボールをまたもや鈴木章斗が頭で合わせ阪南が追加点。0-3。

この得点でゲームはかなり苦しくなってしまったが、札幌は諦めない。
特に1年生FW・瀧澤天(背番号37)の闘志漲るプレーには目を見張るものが。

まだまだ粗削りながらも上級生相手に体を投げ出し、トライし続けた。

持ち味の機動力を生かしたプレスでは幾度か勢い余って、ファールを続けて取られる場面も見られ、相手DFから抗議があった直後にまた強く当たれるハートの強さは今後の期待が高まる。

天

後半40分 小沼昭人OUT 早坂優志IN

そして、後半44分諦めずに挑み続けた札幌に待望の得点が生まれる。

佐々木奏太が縦パスを付けると、瀧澤天がボールを受け、砂田匠に展開。
砂田は見事なフィードを前線に蹴りこむと、漆舘拳大が秀逸なプルアウェイで抜け出す。そのこぼれ球に反応した1年生ストライカー出間思努(背番号24)が右足で押し込み1-3。

砂田のキック精度、漆館のオフザボール、出間の得点感覚が揃って生まれた見事なゴールだった。

出間

そして、ネットを揺らした直後にボールへ一目散に駆け寄り、ダッシュでセンターサークルに戻していた瀧澤天の姿も記しておきたい。

この得点でゲームの流れが変わった。

直後にCKを掴むと、砂田の右足に菊池が飛び込み頭で合わせる。

惜しくも枠を捉えることはできなかったが、これが決まっていたら奇跡が起きたかも…と思わせるようなラスト5分の猛攻ぶりだった。

しかし、時間は待ってくれず、タイムアップ。1-3で北海道コンサドーレ札幌U-18は敗れ、6年ぶりのプレミア昇格を逃す結果になった。

敗戦2

試合後の監督や選手のコメントを紐解くと、2つの課題が見えてきた。
一つ目がフィジカル面の差。

森下監督
「結果は妥当だったと思います。プレミアリーグで戦う為にはトータルでもう一段上げないといけないと痛感しました。

フィジカルのところは、外で見ている僕らより中の選手たちの方が、感じる圧は大きかったんじゃないかなと。

向こうの選手が頭を出しているのに、自分たちはジャンプこそしているけど、しっかりとボールにアプローチ出来てなかったり。

でもそれは僕の甘さだと思うので。普段のトレーニングから選手たちにもっと求めていかないといけないと改めて思いました。相手の方が自分たちより1点の重みを分かっていた中でプレーをしていたと思います。」
西野奨太
「道外の高校サッカーのチームとこうやって戦うのは初めてくらいだった。クラブチームと違って、放り込んでくるサッカーというか。球際もがつがつ来てフィジカルもみんな強くてという相手とやる機会が中々なかった状態でここで1回経験できたので。

本当に一人一人フィジカル面とかをやらないといけない。っていう意識に変わりましたし、この試合・この敗戦を一人一人が分岐点にして、大学に行く3年生。もう一度戦う2年生以下。自分はトップにいきますけど、もっとやることがあるなと痛感する試合でした。」

同時に地理的な条件も相まって発生してしまう秋-冬場の実戦経験の乏しさ。こちらは各種大会の日程を見ながら、今後も上手く付き合っていく他現状ないのだろう。

森下監督
「言い訳になってしまいますけど、試合勘が少しずれている部分はあったと思います。選手たちには少し酷な状況だとは思いますけど。それは今後変わることではないので。なんとか工夫して、こういったゲームでいいパフォーマンスができるようにしたい。」

課題が見つかった共に明るい材料も見えた。
今年のチームは3年生が軸となり、躍進を支えてきた。

そんな実力ある3年生と共に過ごしてきた、前述の瀧澤天や出間思努。シーズン通しボランチのスタメンとして活躍した小沼昭人や荒木健斗などポテンシャルのある1年生の成長が目に付いた。

森下監督も「彼らは本当にいいものを持っている。だからこそ、この試合で感じた基準を忘れずに、これからの日常にしていかないといけない」と期待の言葉をおくる。

小沼

また、来年のチームの軸となっていくだろう佐々木奏太や漆舘拳大らも大きな可能性を感じさせる。

特に今年の立ち上げ当初はスタメン扱いではなかった漆舘にとっては大きな成長を遂げたシーズンとなったが、このオフにやるべきことも明確になっているようだ。

漆舘拳大
「僕は足がそんなに速いタイプではないので、栗さん(栗山コーチ)と一緒にフィジカルを鍛えて、身体能力をもっとあげていきたいと思います。

今回、本当に悔しい結果になったので、来年プリンスで優勝して今度こそ、絶対にプレミアに上がれるようにチーム一丸となって頑張りたい。」

今回でユースの活動は一区切りつける方向の西野奨太も同様の課題を口にする。

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西野奨太
「まず僕の課題はフィジカル的な部分ですね。正直この試合の最後もふくらはぎを吊りかけていました。フィジカル面が足りない。ずっと課題にしてきましたけど、それが諸に出たような今回の遠征だったので。フィジカル面はこのオフにしっかりと鍛えていきたいと思います。

自分の奪いに行くところの長所は自分でもトップのサッカーとマッチしていて楽しいなと感じてますが、まだまだやることあるなと今季トップでやらせてもらった中で強く思っていました。

もっと自分は変われると思います。

本当にこの試合で変わろうと思いました。」

森下監督
「奨太にとって一番いい負荷の中でトレーニングするとなるとプロの所で試合に出れるように頑張るのがいいと思う。僕らも彼に頼らないで次の新しい選手を育てるというか。鍛えていかないといけない。他の選手にとってはチャンスでもあるので。」

この冬、彼らはどんな成長を遂げてくれるのだろうか?
この期間の地道な取り組みが、春先以後の伸びに大きく関わってくるはずだ。期待したい。

また、来年から入団する新一年生も粒揃いの選手が多いようだ。

今年はこれまでの選手選考とはセレクトの基準を変えて、よりスペシャリティを重視した選考を志したという。

どんなプレーをする選手たちなのか?ぜひ来年、注目して貰いたい。

引退する3年生

最後に3年生。

本当にお疲れ様でした。

夏のクラブユース選手権でチャレンジ精神全快で挑んでいく姿。試合毎に成長していく様子。一体となって戦う姿は本当に最高だった。
純粋に素晴らしいチームだったと思う。

一方でこんないいチームで戦っていたからこそ、トップ昇格や最後の参入戦で目標を成し遂げられなかった悔しさ。各々が足りなかったものをしっかりと胸に刻んで、今後の成長への活力として貰いたい。

エネルギーの源はチームへの愛でも、反骨心でも、自分の為でも。誰かの為でも何でも構わないと思っている。

次のステージでも、みんなが活躍する未来を楽しみにしている。

大学を経由することも決して遠回りではない。

最後にこのチームのキャプテンを務めた砂田匠キャプテンの言葉で締めとしたい。

「本当にクラ選であそこまでいけて自分たちの価値を高められた。

悔しい思いも沢山ありましたけど、努力して3年生で結果も一つ残して、今日は本当に悔しい結果になったけれど充実していました。

一年間キャプテンをやったんですけど、みんなよくやってくれたと思います。」

佐藤

川原

千田

中村

逢坂 

菊池

暖

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円陣

来年こそ、この悔しさを晴らす一年に。

2021シーズン本当にお疲れ様でした。






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