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2022前半戦から見るコンサユースの現在〜巻き返しの夏へ〜

U-18プリンスリーグ北海道2022の前半戦が終了した。

だが、道内で絶対的強者の北海道コンサドーレ札幌U-18が大きく出遅れる波乱の様相になっている。(7試合で3勝1分3敗)

コンサユースにとって7年越しの悲願が上部リーグに当たる〝プレミア復帰〟

その道を繋ぐには、現在戦う、プリンスリーグ北海道で2位以内に入ることが当面のマスト事項となるが、残り7試合で勝点差8の現状は第一関門で黄色信号が灯っている状況だ。
※サッカー界の通説では残り試合=勝ち点差が最大逆転の目安とも言われる

3位と出遅れる北海道コンサドーレ札幌U-18

まず今年のコンサユースの現状をおさらいしたい。指導者は赤黒色が強い豪華な面々だ。

監督は森下仁之氏。2001年からコンサドーレのアカデミー指導を歴任。
その後、ツエーゲン金沢やギラヴァンツ北九州ではトップチームの監督を務め、2020年より再度、北海道コンサドーレU-18の指揮をとっている。

談笑する森下仁之監督と財前恵一ヘッドオブコーチ

今季から、U18のコーチを担うのが砂川誠トップとユースの活動を繋ぐトランジションコーチの役割も担当する。

昨年はU-15札幌の監督を務めた砂川誠氏

GKコーチには高木貴弘氏。フィジカルコーチには横山知伸氏。ヘッドオブコーチに財前恵一氏とコンサの歴史を作ってきたレジェンドがチームの脇を固める。

トップチームとの兼任でGKコーチを務める高木貴弘氏
今季よりU-18のフィジカルコーチに就任した横山知伸氏

だが、冒頭に記した通り2022年の北海道コンサドーレ札幌U-18はここまで、芳しい戦績を残せていない。

多くの主力を欠いた開幕戦では中学3年の川崎幹太を抜擢するなど多くの選手が出場機会を得ているものの、課題は山積している現状だ。

だが、個々で見ていくと可能性を感じるメンバーが揃う。天皇杯でプロデビューを飾った漆舘拳大や佐々木奏太の中心選手だけでなく、下級生にも面白い選手が多数いる。

その個々の強みがチームとして表現される瞬間を見たい。そう願い続けてきたが、そのトリガーになると感じる出来事が、6月26日の第7節・北海道大谷室蘭高等学校戦で起きた。

西野奨太のユースへの再登録

それが昨年高校2年生ながら、トップチームに昇格し、クラブ最年少出場記録も飾った西野奨太のユースチームへの再登録だった。
※トップチームでの活動がベース

トップチーム状況と相談しながらユース活動にも参加する西野

その経緯を本人は前向きな表情で語る。

「今年の沖縄キャンプ。かなりいい状態で来ていた中、練習試合でケガをしてしまって、それが想像以上に長引いてしまったんです。
離脱期間に若手主体で臨んだルヴァン杯があったりしたんですが、そういうチャンスを逃してしまいました。
また、それだけでなく、復帰してコンディション上がって来た中で、またアクシデントが起きてしまって。その後、ルヴァンの京都戦で少し出して貰ったんですけど、その時に戦いながら、自分の試合勘が全くなくなっているなと感じてしまいまして‥これは90分間のゲームをもっと戦っていかないとダメだなと感じたんです。

そこで強化部に「高校年代でもう一度、出場できないですか?」と相談したら、こちらもそういう考えを持っていた。と言ってくださって。それで自分の体の状態を上げたいのと、今のユースの状況を変えたいという思惑もかみ合ったので、今回実現させて貰いました。」

プリンス北海道第7節 VS 北海道大谷室蘭

そんな西野奨太が復帰した北海道コンサドーレ札幌U-18のプリンスリーグ第7節でのスタメンは以下の通り。

GK
1 ベンマムン  アミン

DFは左から
9 西田将也
6 赤須真登
45 西野奨太
2 水口由翔

ボランチ
29 菅谷脩人
4 佐々木奏太

サイド
27 瀧澤天
11 鈴木颯

2トップ
10 漆舘拳大
12 出間思努

今シーズンは個々での仕掛け増をテーマに、攻撃時には4-3-3に可変するシステムにもトライしていたが、この試合から、従来の4-4-2に戻し、チームの考えがこれまで以上に整備されていた印象だ。

そして、これまでの戦いより明らかにピッチ上に〝エネルギー〟が溢れていた。

試合前から雰囲気の良さがにじみ出ていた

開始2分で変化の一端は垣間見えた。やはり際立つのが西野奨太の存在。

試合前に元気よく「やるぞー!」と仲間を鼓舞。試合が始まっても、守備のラインコントロールは勿論、ビルドアップ時の味方の立ち位置も細かく指示。
守備面では弾くべき所でしっかり弾き、攻撃面でも味方につけるべき場所につける。日々トップチームで揉まれるその片鱗を十分、感じさせてくれた。

実際に、キャプテンの赤須真登とエースの漆舘拳大が口を揃え「奨太が入った効果が大きかった」と振り返るように中央に大黒柱が控える安心は周囲に伝播。個々人がこれまでより、積極的にチャレンジする姿が目についた。

ここからはゲームを時系列で振り返っていこう。

前半14分
西野奨太の指示で立ち位置を調整した水口由翔のビルドアップを起点に左サイドの西田将也からボールを受けた漆舘挙太が、巧みにボールを受けると、反転しながら右足を一閃し、先制ゴール!

この日2ゴール1アシストを記録したエースの漆舘拳大

28分
左サイドに潜り込んだ1年生ボランチの菅谷脩人のグラウンダーのクロスを札幌アカデミー期待のFW・出間思努が押し込み追加点。

37分
菅谷脩人のアウトサイドパスにエース・漆舘挙太が反応し、決め切り3-0。漆舘はこの日2ゴール目。菅谷は2アシスト目。

41分
漆舘挙太のクロスにぺナ内で瀧澤天が頭で合わせて4-0。

後半開始からメンバー交代。

水口由翔 鈴木颯 OUT
高橋昂雅 安達朔 IN

49分
直後に途中出場した高橋昂雅のCKをキャプテンの赤須真登が華麗に頭で合わせて5-0。

西田将也OUT
田村朋也IN

出間思努OUT
小沼昭人IN

74分
ペナルティエリア内で漆舘挙太のヒール→安達朔→瀧澤天と見事な連携を見せて追加点。6-0。
森下監督もご満悦の完璧な崩しだった。

菅谷脩人OUT
二バートリース光IN

試合はそのまま、北海道コンサドーレ札幌U-18が6-0の完勝でプリンスリーグ前半戦の最終節を白星で飾った。

この日は右サイドバックに入った高橋昂雅はセットプレーを担当。
西野とコンビを組んだ赤須真登。守備面でも積極的にチャレンジする姿が目立った。

注目の1年生ダイナモ 菅谷脩人

そんな快勝を飾ったイレブンの中でも、是非、今後注目して欲しい選手の1人が1年生ボランチ・菅谷脩人である。

コンサドーレ旭川より昇格した菅谷脩人

ケガの影響でプリンスデビューこそ遅くなったが、復帰したここ2試合は連続スタメン出場し、高いポテンシャルを随所に発揮している。

コンサドーレ旭川U-15から昇格した菅谷・最大の魅力は中盤から、アタッキングサードへ縦横無尽に侵入していける走力だ。

森下監督によると前節の旭川実業戦では走行距離 13キロを突破。
スプリント数もピカ一の数字だったという。
※13キロはJリーグでもトップクラスの水準に当たる。

https://www.jleague.jp/stats/distance.html

当然、一つの目安に過ぎない数字だが、これだけ量を走れるのは一つの才能だ。

また、恵まれた上背と足元も持ち合わせており、今後身体をしっかり作っていく中で、どんな成長を見せてくれるのか非常に楽しみな選手だ。
是非注目して欲しい。

光が見えた勝利 一方で道内基準ではダメ

試合後、森下監督も開口一番、「奨太がいると全然違うね。今年一番いい内容だったと思います。でもこれを普通基準にしないと」と語ったように、今後に光が見えるゲーム内容だった。

その中でも中だるみの時間帯があったり、対全国で見た時に、まだまだ改善していかなければならないポイントも多い。

攻守に圧倒的な違いを生み出した西野奨太にしても、彼にはこの舞台で戦う中でも、トップ基準でその選択と質はどうだったのか?そういったレベルで求めていくべき選手なはずだ。

違いを見せつけた西野奨太

ただ、西野奨太-佐々木奏太-漆舘挙太という軸になるべき3年生のセンターラインが確立されており、迎える来月のクラブユース選手権は非常に楽しみである。

7/24 ガンバ大阪ユース
7/25 徳島ヴォルティスユース
7/27 横浜F・マリノスユース

昨年の全国準優勝は選手の大きな成長契機となった。今年も全国の強者たちを相手に結果を残し、1つでも多くの経験を積むと共に、各々の夢や目標を近づける舞台にして欲しい。

西野奨太への試合後の一問一答で締めとしたい。

Q 試合を振り返ると?
「今のユースの順位・立ち位置などを結果だけ見ていた状態で、ユースの試合に出して欲しいと自分からお願いして実現させて貰ったので、この状況を変えるつもりでしたし、この試合から自分たちで作ってしまったこの状況を変えるリスタートにしようと話して、全員で集中して入れました。
久々に大差で勝てたみたいですし、もっと突き詰める所は一個一個ありますけど、自分たちが浮上できるキッカケになる試合になったのかなと思います。」

Q これまでとの変化を開始2分で感じた。自分の中で意識して臨んだことは?
「自分がトップチームでやっている中で感じるプレーの違い。パスだったり、ディフェンスの強度の違いだったり。それらが大前提にあった上で、自分がこのチームに出てやることは全体を俯瞰して見ること。状況状況でどうしたらいいのか?ということを冷静に指示して伝えることだったりでチームを助けたり。一人一人が。特に1年生が、伸び伸びとできるような落ち着きを最終ラインから出そうと思っていました。それができたと思うのでよかったですね。」

Q ユース年代で再び戦うことに葛藤は?
「勿論レベルは下がっちゃいますけど。でも悔しい思いなどはなくて、今の自分の立ち位置を考えたら当然だと思っているので。状態が上がっていないのは本当に自分のせいなので。本当にユースで出して貰える感謝しかないので、それをプレーで表現するということしか、頭になかったですね。
変なプライドなどは全くなく、本当にポジティブに。90分を公式戦で出来ることが自分の中では有難いことだなと。この舞台での経験を繰り返して、それを最終的にトップに行ったときに試合勘がある状態で自分の良いプレーに繋げられたらなと。本当に前向きに考えていますね。」

Q 今後の活動見込みは?
「基本はトップに帯同しながら、強度が低い時などはユースの夜の練習にも出て2部練という形で出させてもらう予定ですね。まずはトップでやって、トップでメンバーに絡めないなら、ユースの試合に出させて貰うという形になると思います。クラブユース選手権には出させて貰う方向です。」

Q 先日行われたU18日本代表合宿での手ごたえは?
「手ごたえはだいぶありましたね。普通にできたかなと。その中で手ごたえあるプレーというか感覚はあったのでよかったなと思います。」

Q ユースの現状をどう見ている?
「やっぱりもっと一個一個に拘って突き詰めていかないと。みんなが北海道を相手にしているという所が正直あると感じていて。それはそうなんですけど、自分たちが目指してる所は全国だし、プレミアという意識をもっと持たないとダメだなと。北海道の高校生を必死に相手して、満足している選手もいると思う。そこの基準は僕が入って伝えていければなと思っています。」

西野奨太の言葉の節々に強い自覚と覚悟を感じた。
きっと、プレーと行動でその基準を示し続けてくれるはずだ。

同時に漆舘挙太は試合後「奨太がいなくても俺らがやらないと」と責任感滲ませる発言をしていた。

彼ら3年生の思いが合わさり、下級生がその実力を発揮できた暁には逆襲の夏が始まるはずだ。

その兆しを十分に感じる夏至の一戦だった。


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