#1 「一度経験したことは決して忘れない。思い出せないだけで」
20代になってからだろうか。
時が経つのが異常なくらい早く感じるようになった。学生時代の記憶がすぐそこにあるように感じているものの、実は昔の出来事であることに驚いてしまう。
昨日SNSを開くと、高校時代のクラスメイトが結婚の報告をしていた。驚きはするものの、そんなものかと受け入れる自分もいる。
あれからいろんな経験をしたはずなのに、今振り返ってパッと思い出せる記憶は意外と少なかったりする。
歓喜の瞬間。怒られた瞬間。きつかった思い出。
楽しかった旅行や感動的な絶景に何度も出会ったはずなのに、いざ振り返って思い出すのは、辛さや苦さを味わった経験ばかり。別にずっとそんな日々を歩んでいたわけではない。
それだけ今までの経験一つ一つが自分にとって大きな意味を持っているのだろう。どんな経験一つ欠けても、今の自分はなかった。
先日、久しぶりに「千と千尋の神隠し」を鑑賞した。特別見たかったわけではなく、ただ単にテレビで放送されていて、やることもなかったから最後まで見ていただけのことだ。
子供の頃、確か小学生ぐらいの頃だろうか。親に買ってもらったDVDを暇さえあればセットし、何度も何度も繰り返し見ていた。再生すればいつでも主人公の千尋と同じ非日常の世界に飛び立つ気持ちを味わえたから。私が旅行が好きなのは、この頃からその予兆があったのかもしれないし、この映画が私に広い世界というものを目指させたとも言えるのかもしれない。今となってそんなことはわからないが、間違いなく言えることは、この映画が私の人格形成に大きく関わっているということ。
子供の頃とは違った気持ちだけど、どこか懐かしくて。あの頃と変わらない気持ちにさせてくれるのがなんだかすごく嬉しくて。それはまるで、学校が終わって自分の家に帰って来た時のような安心感で。
忘れたくないこと、忘れたいことと色々あるけど、結局どんなことでも自分の記憶には刷り込まれていて、それが思い出せないだけなのだろう。
記憶というものは曖昧で、単体では思い出しづらいからこそ、私は写真や音楽の力を借りてしまうのかもしれない。
写真はその瞬間を真空パックして、永遠にその一瞬を止めたまま保存してくれるし、音楽はその時の感情をフラッシュバックさせてくれる。
このnoteもそんな存在になってくれることを祈って。
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