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#28「自惚れろ」

昨年、半年間で全国39公演のツアーを無事完走したMr.Childrenのボーカル桜井さんは、ツアー中の体調管理や集中力をどのように保っていたのかについて聞かれた際に、「オンとオフの切り替え」と「メンタル」の2つで意識していたことがあるという。

切り替えについては、なるべくオンの時間にビシッと切り替えれるよう本番前に楽屋に入る時間を遅くし、公演が終了したら早く帰ることを心がけていたそうだ。早く入ることで練習をやり過ぎ、自分の首を絞めることがあったそうで、今回はあえてそうしたらしい。

もう一つのメンタルについては、ボーカリストとしてあえて「自惚れる」ということ。

自分に対する「俺、本番だけやれば大丈夫だから」というそれなりの自信や自惚れみたいなものを持とうと思ってやっていました。ボーカリストがコンディション良く、うまく歌えるためには、もちろんボイトレも必要だし、コンディションを維持するのももちろん必要なことなんだけど、「自分の声、歌っていて気持ち良い!」って自分で思えちゃう、気持ち悪いぐらいの「自惚れ」こそがボーカリストには大切で、それが一番歌を上手く歌う近道なんじゃないかと最近は思っていて、、。だから、なるべくもう現場に来たらそのメンタルでいるようにはしていましたね。

桜井和寿(会報のインタビューにて)

自分のような凡人と数々の成功を収めた方を同様に扱うなんてどう転んでもできないが、この2つの心がけは自分の人生にとっても当てはまるように感じる。オンとオフの切り替えはわかる。誰が聴いてもその通りだと言うだろう。では、自惚れろについてはどうだろか。謙虚さが足りない、傲慢で向上心がない。そんな声が聞こえてきそうだが、それはニュアンスが違うのではないかなと思う。

マインドセットやマインドコントロールなどといったメンタルトレーニングの重要性が様々なところで叫ばれているなか、一体何が正解なのかが時々わからなくなったりする。謙虚でいることと争いに勝つことは全く違うことで、使い分けが必要だし、時に自信を持って挑むときは周りが見えなくなり、自己中心的なプレーが発生したりもする。そこに悪意がなくても、そう受け取れることは往々にしてあったりする。

自らの課題と向き合い、日々鍛錬していくことは大切で、その過程で自分に正直でいる姿勢は必要だ。でも、いざ本番を迎えるときは、「自分最高」と思えるくらいの自惚れは間違いなく必要だ。プロが試合後のインタビュー等でまだまだだというけど、常に自分が満足するくらいのパフォーマンスを発揮しないと、見ている人たちにとっても失礼である。スポーツ選手のすごいところは試合が終わったらさっと切り替えて、次に向けて切り替えること。その時はきっと本当に自分はまだまだ成長できると思っているのだろう。だから試合後のインタビューでまだまだだと発言をするのではないか。

日頃から自惚れるのはお門違いだけど、大切な試合や力を発揮すべき機会では、今までの自分の行動を振り返って自惚れながらパフォーマンスすることも必要なのではないだろうか。「好きこそものの上手なれ」というではないか。

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