知っていくこと

｢何も知らなかった日｣には、もう戻れない。

雪がありふれたものだと知らなかった日。

雲の正体を知らなかった日。

キスは特別ではないと知らなかった日。

あの日の私達は、今より幾分か幸せだった。
｢知らない幸せ｣を知っていた。
毎日が特別で、退屈しなかった。

私達はいつのまに知りすぎたのだろう。

知れば知るほど、感動の仕方が分からなくなる。
知れば知るほど、本当のことが分からなくなる。

知っていく事は、忘れていくことだ。

｢何も知らなかった日｣には、もう戻れない。

人のあたたかさを知らなかった日。
人のずるさを知らなかった日。
愛が不透明で脆いものだと知らなかった日。

私達は温度を知る。
人に寄りそう温度と、その心地よさを知る。

それを失った時、前と同じ形には戻れない。

同じ｢ひとり｣なのに、違う｢ひとり｣になる。

寒さを知り、孤独を知り、虚しさを知る。
同じ｢ひとり｣でも、前は知らなかったこと。

知っていく事は、孤独になることだ。

知る事は、素晴らしい。
知らないよりもずっと良い。

だけど知りすぎた時、
私達は二度と戻れない。

どう足掻いても、どう抵抗しても
｢知らなかった頃｣には戻れなくなる。

真夜中に流れる魔法の光の正体
夢で見る遊園地の場所
努力をすれば夢は叶うという本の言葉に
恋人と誓い合う愛の言葉

**知っていく事は、恐ろしいことだ。 **

はるこ《公式》

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