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春が終わる。-Ⅲ-

誰よりも可愛く。

距離を置いてから1ヶ月と少しの時間が経った。
私は久しぶりに彼と映画を観に行く約束をした。

今日は誰よりも可愛い女の子になろうと、朝早くに起きて準備をした。
まぶたにはピンクのアイシャドウ、ついでにラメも乗せて輝かせる。
アイラインをいつもより長く引いた。
まつ毛もしっかりあげて、仕上げにピンクのリップを塗る。
白いワンピースに淡い色のセーターを羽織って、電車に乗った。足取りは軽い。

彼との待ち合わせ。
「ひさしぶり」
先に来ていた彼は穏やかな顔でそう言った。

「そうだね」
待ち合わせもこれで最後かぁ。
そんな風に私は思った。

映画を観終えて、いつもの散歩コースを歩いた。暖かい風と共に桜の花びらが舞っていて、とても素敵な宵だった。

「やっぱり別れた方が良いと思うんだ。」
彼は私の目を見ずに言った。

話し合う気は元々なかったが、
私が何も言えない言い方をするあたり、やはり彼は私と違って保守的な人だと痛感する。

「うん、私も気づいたよ。私にはあなたよりもっといい人がいる。」
目を見てはっきりと言えた。

彼はショックを受けていた。
最後まで格好がつかないんだから、困ったものだ。
大好きだった彼は私の中にはもういない。

桜の花びらは地面を埋め尽くし、木々は緑の葉っぱを揺らしていた。
ああ、春が終わる。

エピローグ

別れ際、駅のホームで彼は言った。
「宵ちゃんはすぐにいい人に会えるよ。だって前より可愛くなって、恋愛経験も積んで、レベルアップしたんだもん。今なら無双できるよ。」

よくそんなこと言えるなと感心しながら、
「じゃあ、あなたは?レベルアップしたの?」と聞いてみる。

「それは宵ちゃんにしかわからないよ、どう?」

「うーん、下がったんじゃない?笑」
私はイタズラな笑顔を彼に向け、
「じゃあね。」と小走りで電車に乗った。

自分でも驚くほど潔く、
彼との関係を終わらせられた。
どこまでも強い自分自身に嫌気が刺すが、そんな自分が私は好きだ。

おわりに。

春はなぜか勇気をくれる。
そこら中の花が咲き、太陽の光は優しく暖かい。
そんな季節には、新しいことを始めてみたいと思ってしまう。
私は「言葉」には他人の心を動かす力があると思っている。
だからこそ日常を言葉で表し、私の言葉を必要としてくれる誰かと繋がりたいと思い、エッセイを書くことにした。

私はかなり多趣味なので、いろんな方と繋がれたら幸いでございます。
どうぞよろしくお願いします。

大学3年生の春キ宵。

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