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僕たちは思ったよりも人の話を聞いていない

「リアリティって何? どういう意味で言ってる? 現実が一番面白いなら世界で一番面白い映像は監視カメラの記録映像だけど、本当にそう思う?」これは僕が学生の頃、ある映画監督に言われたことである。

8月の終わり、稽古していてその話を思い出していた。
「今みんな自分がこれ言ってやろうになってて誰も人の話聞いてないよ」
初回稽古のエチュード直後に言われたことである。
僕はこの秋、初めて客前で即興劇をやる。

基本的に芝居には脚本を与えられるものである。
次に相手が何を言うかが分かっている。これが現実と違うところだ。
そして、相手が何を言うかが分かっているから僕たちは「相手の言葉を受けて自分の台詞を言う」のだ。
つまり会話の芝居に求められるのは「自分の話をする」以上に「人の話を聞く動作の再現」なのである※。

冒頭で監視カメラの記録映像の話をした。芝居に対して、じゃあ現実はどうだろうと思ったからだ。
「聞き上手」という言葉がある。
つまり多くの人間は他人の話を聞くのが下手なのだ。
他人の話を下手なりに聞いていればいいほうで、早い話、僕たちの大半は誰かがしゃべっている時は「タイミングを見計らっている」にすぎない。
他人の話を聞いているのではなく、空気を読んでいるのだ。

即興劇において必要なのは他人の話を聞く力であり、空気を読む力ではない。
何故なら空気を読むのは日常であり現実、つまり「監視カメラの記録映像」になってしまうからだ。
他人の話を聞かない、空気を読む、これがつまらないエチュードの正体だ。

その場に居合わせる人間として、人の話を聞く動作を再現するのではなく、リアルタイムで人の話を聞く。
台本はないけれど、普段通り雑談をすればいいわけじゃない。一人で何か面白いことを言えばいいわけでもない。

即興劇は即興だけど劇なのだ。

そんなふうに訓練を積みながら、今月10月の27日から30日までの4日間、こちらの公演に客演いたします

のたんぷ-NOT AMP-なな 緩解のリーディング4本立て▲

「霧香白夜-むこうびゃくや-」

(ABいずれも約60分)
作・演出:松本隆志(:Aqua mode planning:)

【日時】
2022/10/27(木)【A】20:00
2022/10/28(金)【B】20:00
2022/10/29(土)【A】12:00・【B】15:00・【A】18:00
2022/10/30(日)【B】12:00・【A】15:00・【B】18:00
(受付開始・開場は各回20分前から)
※宮本は【B】での出演です

【料金】
当日・予約:2000円 U22(22歳以下):1000円
ABセット:3000円

ご予約はこちらから

宮本には個人の連絡先などは分からないようになっておりますので、配信アプリ等から八朔ちゃんとして僕を知ってくださった方も安心してご予約の検討いただけると思います。
お名前も当日に本人確認が取れれば本名でなくても予約可能です。

公演に向けて稽古頑張っていますという近況と、表現と現実に関する気付きの話でした。

※イギリスの俳優、マーティン・フリーマンは2011年にBAFTAsで最優秀助演男優賞(SHERLOCKジョン・ワトソン役)を受賞した際のインタビューで「みんな台詞を喋ってる人のこと見てるけど分かってない、喋ってるのを聞いてる人を見るべきなんだよ」とコメントしている

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