短編小説「少年と通り魔」

少年は通り魔に遭遇した。

襲われかけた幼い少女をかばい
少年は命を落とした。

世間は少年を称えた。

ある人は英雄だと称え

ある人は若者の鏡だと例え

ある人は自分もこんな勇気のある人になりたいと語り

またある人は根拠もないデマを世に回し自らが持つ形ないテリトリーの火種にしようと企んだ。


心を痛め涙を流す人はほんの一握りで少年が落とした命は瞬く間にご近所の下世話な世間話のひとネタに成り下がった。


雲の上から下界を見つめる少年は思う。


落とした命の対価がこれでは

あまりにも僕の命は軽すぎる。


少年は泣いた。


その日、日本列島に降り注いだ雨は記録的な豪雨を記録し明くる朝までその雨が止むことは無かった。

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