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#わたしの本棚〜今日の一冊〜

タイトル 『神田ごくら町職人ばなし』
作者 坂上 暁仁
発行所 (株)リイド社

『ものづくりの国・日本』と言われ始めたのは、いつ頃からだったのだろう?
残念ながら、現在の日本はそのような評価は多分されないのだろうと思う。
バブル経済が弾け、コスト削減が叫ばれるようになり、製造の拠点が海外へ移っていった。
ほんの数十年で、日本の『ものづくり』は大きく変化したと思う。
アニメやゲーム・漫画等のコンテンツ産業のように発展を遂げていったものもあれば、IT関係や建築関係の業種等、伸び悩んでいるような所もあると(個人的には)思う。
そんな中、今回の『一冊』との出会いは衝撃を与えてくれた。『奇跡の一冊』と言ってもいい。
本の帯に書かれている『金なんざどうだっていい。心意気の話さ わかるだろ?』の台詞も痺れる。
これは、作中の『刀鍛冶』のお話で一部出てくる台詞なのだが、これほど真剣に、氣の全てを集中して何かを造る事を、今どれくらいの人達が出来ているのだろう?
400年程前の日本には数多くの『職人』がおり、互いに支え合いながら、世の中を廻していたのだという事に静かな感動を覚える。
近頃の荒れた世相の中で、『日本』の行く末に不安を感じる向きもあるかと思うが、我々の御祖先の方々がそうして来たように、真剣にものを『つくる』事に集中すれば、未来の風向きも必ず変わってくると信じたい。
作中では五人の職人の伝統の手仕事が、細やかなタッチで描かれているが、お気に入りはやはり『左官』だろうか?
でも、『紺屋』の彼女の葛藤も善い。
とにかくお勧めの一冊である。


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