デザインって難しい - UXデザインの部門が分解された話
ある日、上司から衝撃的なお知らせがあった。
「私たちのチームは解散します」
たぶん、”一つの会社が倒産する時の雰囲気”みたいな、悲しさと不安の混ざった、なんとも言えない空気がチームに漂っていた。
解散の理由:事業部制だから
私たちの会社は事業部制。元々自分の所属組織は本社組織の一部だったが今回の異動で、私は普段自分がよく一緒に仕事をしている事業部へと異動になった。
他チームの人も別事業部へ異動があったりで、元の部門は約半分の規模に縮小することになる。
本社組織は全体的にコストセンターとして“稼がないけど費用がかかる”組織とうちの会社では認識されてて、基本的に効率化や圧縮が求められる(らしい、知らんけど。)
なので今の枠組みで考えると「貢献してる事業部に行きなさい」というのは理解はできる。
でも、本社組織にUXデザインを見ている部門があることには、もちろん理由があったわけで…。
UXデザインに求められるスキルセットって広い
UXデザインという言葉は広大で、もはや仕事で安易に「ユーザー体験」とか言わない方がいいと個人的に思うぐらい。(往々にして別の言葉がちゃんとあったりするし)
その広大な守備範囲を各自が勉強したり、新しいメンバーの参加などで少しずつ広げてるのがこれまでの部署で、実際、自分より後に入ってきた新入社員のスキルは自分とは全然違ったりするし、色んなことメンバー各自が共有してきた。
例えば、私たちのチームはスマホ誕生ぐらいからずっとAndroid (mobile/TV)のUIをやってきたので、その知見はたぶん多い方だと思う。
だけど、UXリサーチや、ハードウェアを絡めたプロトタイピング、イベント運営などは別のチーム(の特定の人)が得意だったりして、そういう仕事は気軽に彼らのサポートを頼むことができた。
今までは同じ部門だからそこにお金は当然発生しなくて、だから(スケジュール調整さえできれば)ある程度のコミットを他のチームメンバーにも頼めたりした。
良いデザインをすれば、それが理解されるわけじゃない
だけど、これからはそうはいかなくなる。事業部に分かれたメンバーは基本的に事業部に直接貢献する仕事のみにできることがすでに知らされていて、実際、私がやっていた別事業部の仕事も本社組織に残る人に引き継ぐことになった。
これは実質デザインの幅が狭まることにもなり得る。実は一定の「偉い人」までは理解されてるらしく「UX部門って一つでまとまってることに意味あるんじゃないの?」って言ってくれる人も一定数いたらしい。
だけど、さらなる上位職には伝わってなく、今回の解散事件が起きた。
どうすれば回避できたのかは今もわからない。
少なくとも「良いデザインをしていれば自然と認められるのでは」は違うと思っていて、実際それで過去にデザイン組織全体でわかりやすさ重視?で「表現面」に全振りした暗黒時代があった。…暗黒だった。
「良いもの作れば売れる、の時代は終わった」と言う話はデザインにも同じで、アウトプットだけでその価値を全て理解できるほど今の私達がやりたいことはシンプルじゃない。
結局、営業活動が足りなかった、と言うことなんだろうか。
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ちなみに、昔参加したあるセミナーで田子學さんが登壇されてたことがあり、参加者の一人が「デザイン経営とか上に伝わる気がしません、どうしたらいいでしょうか」的な質問をしていて、田子さんは半分冗談だったのかもしれないけど、
「理解してくれる経営者がいる会社に行きましょう 笑」
と言っていたことが今も忘れられない。
良いこと:広がる知見もある
まあとはいえ、「よく仕事していた仕向けの事業部」に異動なのでほとんど仕事は変わってない。(また勤務地も一緒だし、一緒に移動したメンバーも一定数いる)
それに、「元々同じ部門で今は違う人達」も同じ会社ではあるわけで、本当に必要な時にどうやって助けてもらうか、をその時考えるしかないとも思っている。
また、今回私たちは初めてインダストリアルデザイン(ID)のチームと一緒になった。そう言う意味ではデザインの幅は広がった面もあるし、なにより、IDは歴史もある分野で故にレベルが高く、そんな人たちと一緒に仕事ができることはとても嬉しい。
今までUXとIDチームは仕事では関わりが薄かったこともあり、たぶんサイドプロジェクトで積極的にコミュんニケーション取らないと近づけないから、そういうところは今後考えなくてはいけないのかもしれないけど、そういうのを通して誰かと仲良く慣れるのなら、それは結構楽しい。
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もうなってしまったことはある程度仕方ないので、今後どうするかは、色々考えていきたい。
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