【小説】いつだって私達はそうだった。
分かり合えた
いつだって私達はそうだった。
分かり合えたフリをしあって優しさでお互いを傷つけ合っていた。
だからか今東京の都会のど真ん中の通りを【彼女】とではなく
一人、ただただ歩いている。
こんな時に僕から出てくる言葉は「だから、言ったじゃないか。」
というような冷たい言葉だった。
僕と彼女の大きな違いは、【考え方だった】
生き損じている彼女と明日がある僕との違いだ。
彼女はいつもその時の機嫌でそこに座っているが、
僕はいつも長く続く関係を望んでいた。
例えば少しお互いの関係で相違点があっても
僕は割と「明日も会えるし、明日でいいや。」と考え方であった。
が、彼女は今言えと言わんばかりに「…そう!」と見たままに不機嫌になる。
そんなに性格が合わない僕らが4年も同棲しているのは
簡単に言うなら【利害関係の一致】であった。
同棲を始めた頃の僕らはまだ青かった。
きっと彼女も今頃出会わなきゃ良かったと言って出ていく準備でもしているだろう。
なぜ彼女の考えてることが分かるのか?と聞かれたような気がしたが、理由は簡単だ
それだけ僕は彼女というものを見てきたからだ。
笑顔も泣き顔も寝顔も嫉妬で怒った顔も彼女の表情という
表情を見てきたからだった。
全ての時間が僕達にとってかけがえのないものであって特別だと信じきって
正直たかもくくっていた。
なのに僕達はどこで間違えたのだろうか。
お互いへの信頼が傲慢になってしまうなんてあのときの僕らに想像できただろうか。
無理だったのだ。
だから今僕は当時の感情の高まりを【利害関係の一致】と
突き放す一言で言い表せれるのだろう。
だからといって僕が完全に彼女への【思い】が冷めたのかと言えば
いいやそうではなかった。
逆に今も彼女という存在に期待をしている。
この僕が空を仰いで憂いているときにあわよくば追いかけてきてくれたりしないか?
なんて、本来の僕が聞いたら嫌になるくらいの言葉が確かに僕の中をかかずりまわっていた。だから僕は【恋愛】なんて嫌なんだ。と自分を納得させるだけの言葉を自身に浴びせる
そう僕はただの出来損ないだった。
分かっているからこそ言い訳ばかりするのだ。
僕もできるなら言い訳なんてしたくないと言えば彼女は
「それはただの甘えよ。」とあっさり切り捨ててくれるだろうか。
そんな愚問を自身に問いかけながら僕はまた歩く。
この嫌ほど広い癖に幸せのあり方に偏りがある地面の上ただを歩く。
「…今日は帰りたくないな。」
なんて言う幼稚な僕の言葉に従って今日はどこかに泊まることとなった。
そうだな…すっと頭の中で出てきたことといえば、
「こういうときは素直だよな。」などと言う。
僕がよく見知った人の言葉だった。
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