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コンクリオン家の悲劇9・最終話 サイレント ネオ-ムーン ソング

一族すべてを失ったエピら3人は、ただただ体を震わせ涙を流し続けた。
シャローンも家臣もかける言葉が見つからなかった。
そして、涙が止まらぬうちにエピらは立ち上がると、
「シャローン様、ご家中の方々、お騒がせ申した」
と一礼して、踵を返した。
「待ちなされ、いかがなされる!?」
カペッロマンJrがエピらの背中に声をかけた。
「こうなった以上、我ら3人、コンクリオン一族の名を後世に知らしめるために、逆賊シャギを討ち果たす所存!」
エピが答える。
「シャギを討つですと!? 3人で何ができると言うのでござるか。しばし、待たれよ!」
カペッロマンJrの呼びかけに、エピたちは答えなかった。
すると、ざわめく家中の中、シャローンが大きな声で呼び止めた。
「待たれよ、エピ殿!」
シャローンの声に、さすがにエピら3人も足を止め、再びひざまずき礼を取った。
シャローンはエピらの元に近づくと、自らも膝をつき声をかけた。
「そなたたちの気持ちは痛いほどわかるが…だが、怒りにまかせてシャギと対峙し、そなたたち3人でいったい何ができると申す?」
「……」
エピら3人は平伏し、無言でいる。
「今、君たちがシャギ党に向かうは、3つの点で道理に合わぬ。
1つ、君たち3人が行ったところで、3つの騎士の墓ができるだけである。その蛮勇を君の父親はほめ称えるであろうか。
君の父親は死ぬ間際、君たちが仇を討つと話したという。君たちは父の遺志を継ぎ、その遺志はたせる時を待つべきではないだろうか?
その2、コンクリオン家は月歌にとどろく名門。それを君の代で断絶させることは正しいことであろうか。
また、君の母はそのような選択をすることを、本当にのぞんでいると思われるか?
その3、状況を見るにシャギ党はカイバの兵権を握り勢い盛ん。まさに、燃え盛る炎である。
今いったところで、鎮火するのは非常に難しい。しかし、聞くところによるとシャギは猜疑心強く、乱暴ですぐに人を処刑すると言う。
いづれ、人心が離れるは必至。時節を待ち、火が弱くなったところを討つが上策…いかがであろうか…?」
「…」
「聞くところによると、エピ殿は知勇兼備の将と聞く。我々は天下を担い、月歌に平和をもたらすが使命と思っている。
私は微力な若輩者ではあるが、どうか力を貸してくれないだろうか…?」
平伏するエピは、心の奥が震える思いでシャローンの言葉に耳を傾けるのであった。
「シャローン様、私たちが愚かでした。ここで血気にはやったところで、おっしゃるように騎士の墓が3つ立つだけ。
我々コンクリオンの生き残り、しばしシャローン様にお世話になって、時節を待ちとうございまする」
それを聞くとシャローンが深くうなずき、エピの手を取った。
「エピ殿、ラターシャ殿、セン殿、あなたたちを客将として迎えよう。どうか私に力を貸してくれたまえ」
こうして生き残ったコンクリオン家の3人は、シャギに復讐をはたすためムーンキングダムにとどまることになったのである。
終わり

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