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プロローグ2-5(ムサシ、月歌へ)-サイレント・ネオ-boy meets girl-

企画/ムサシ×ボイスアクター/プロローグ2に登場した、ムサシの3つのセリフ(黒文字)を実際に声に出してもらっています!

それからムサシは酒をあおりに、ネオ東京の歓楽街の片隅にあるドブ板と呼ばれるさびれた酒場をたずね、記憶がなくなるまで飲み歩いた。
完全に酔っぱらったムサシは、路地裏の酒や汚物など悪臭漂う壁にもたれかかり、座り込んでいた。

そこにムサシと同じように180㎝をこえる男が通りかかった。
金糸で刺繍された黒と白の柿帷子(かきかたびら)をまとい、まるで中世にいた婆娑羅(ばさら)を思わせるいでたちをしている。
腰の左は二本差し、右も長刀を帯刀し、黒い長髪を後頭部で一つにまとめあげて垂らしていた。
その男はガスズ・アーヴィンソンといい、ムサシのライバルであった。
CAリーグではムサシが昇級すればガスズも後を追い、ガスズが昇級すれば、今度はムサシが後を追うという関係だった。
対戦成績は2勝2敗、ガスズは黒塗りの専用CA、黒夜叉に乗る名うてのパイロットだった。

二人は何かの運命でつながれているかのように、節目節目でこのように偶然に出会うことが多かったのだ。
「こりゃ、驚いた。酔っ払いが飲んだくれていると思ったら、ムサシじゃねえか、どうしたんだ、CAリーグでもずいぶん見ないと思ったら、こんなところで…まるで野良犬だな!」
しこたま胃の中身を吐いていたムサシは、嫌な酸っぱさが広がる口の中から唾を吐き捨てた。
「なんだ、てめえは。俺にかまうな!」
ムサシは早くもけんか腰だ。これほど馬が合わない2人も珍しいだろう。
「そういえば前にも、おまえは飲み崩れていたよな。確かコハルとかいう女がどっかのぼんぼんと結婚するとか言って。
今みたいにヤケ酒をあおってたよな。どうしたんだ、その女は?」
「うすせえんだよ、コハルのことをお前みたいな奴が口にするな!」
ただせさえ機嫌が悪いムサシは立ち上がると、拳を握っていきなり殴りかかった。
しかし、酔っているので方向も定まらない。

「まあいい…しかし、何だその荒れようは!? さしずめぼうやは初陣に出て、戦争が怖くなったか口か!?」
「うるせえ、だまれ! 俺はお前と違うんだよ。サイボーグみたいなお前のように人を殺して何も感じないわけじゃないんだ!」
「ところでムサシ、小耳にはさんだんだが、お前は地球(テラ)から出て、月歌(げっか)に行くらしいな?」
「…お前には関係ねえ」
「本当にそうだったのか…こりゃ、驚いた。これで、お前と今度会ったら、心おきなく殺すことができるぜ」
「それは俺のセリフだ!」
ムサシは再び拳を飛ばすが、ガスズは軽々とかわした。

「ムサシよ、お前というのはとことん救いようがない奴だな。
せっかく手に入れた地位も財産も捨てて月歌に行くのかよ!?」
「うるせえ、俺にはサイレント・ネオがあれば充分なんだ!
お前こそ、戦場で出会ったら、気をつけろよ、容赦しねえからな。
てめえの夜叉の頭をぶちぬいてやる!」

「そうか、今度会う時は楽しみにしてるぜ…近いうちに会えるだろうよ」
ガスズはそういってムサシに背を向けて、その場を立ち去ろうとした。
しかし、おさまらないムサシはガスズの肩をつかむと振り向かせて、一発アゴに拳をお見舞いした。

ガスズは口から血をぺっと吐き捨てると、鋭い眼光でムサシをにらんだ。
「わるいが俺はお前みたいな負け犬と喧嘩するつもりはない」
「なんだと!」
ムサシが叫ぶと同時だった。ガスズの強烈な一撃がムサシの腹をとらえた。
さらにひるんだムサシの顔めがけて、何発も思い拳が飛んできた。
反撃するムサシの拳は力なく空を切り、その倍の拳がムサシの顔や腹をなぐりつけた。
「この負け犬が! 地球に嫌気がさしたから月歌に逃げるだと…お前なんか
どこに行っても同じことだ。一生負け犬だ!」
ガスズが叫ぶと、強烈な一撃があごをとらえ、ムサシはポリバケツの方に飛ばされ、コンクリートに顔をうずめて倒れこんだ。
酒と汚物がまじりあうひどいにおいが、ムサシのはなについた。
「とことん、みそこなったぜ、ムサシ…次会ったらお前を殺す!」
ガスズは吐き捨てると、足早に去って行った。
つづく

企画/ムサシ×ボイスアクター/プロローグ2に登場した、ムサシの3つのセリフ(黒文字)を実際に声に出してもらっています!※Cocommuより

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