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プロローグ4-6(シャギの野望)-サイレント・ネオ-boy meets girl-

「マーバイム、辺境都市ララじゃ!
辺境都市ララこそ、砂漠の民の永遠の憧れ。余はこの手で支配してみせる!」

シャギの狙いはララであった。カイバの西にははてなき砂漠が広がっている。
その砂漠の奥深く、北西にはオアシスに唯一囲まれた恵まれた都市があった。辺境都市ララである。どうやら、シャギはこの辺境都市にいるある男と因縁浅からぬ関係のようだ。

意外なシャギの申し出に、マーバイムは取り乱し、思わず持っていたグラスを落してしまった。
ムドーもこの告白には驚きのあまり顔色を変え、瞬きひとつせずシャギの方を見据えていた。
マーバイムは意を決すると、シャギの前に進み出て、ひざまづき言った。

「閣下、つつしんで申し上げます。どうか、ご再考を…。
今まであまたの将軍がララを目指しました。北国最強の北閥もしかり。
その中には名将と呼ばれる者さえおりました。
されど、砂嵐吹き荒れる広大な砂漠が、そのすべてを阻んできました。
閣下もご存じの通り、我ら砂漠育ちのシャギ党、いたいほどその恐ろしさ、身に染みてござる。どうか、どうか、ご再考を、あまりに無謀なお考え…」

マーバイムがここまではっきりとシャギの考えを否定するのは珍しかった。
しかし、シャギの決意は固かった。

「マーバイム、そちの言うとおり、余とて砂漠の恐ろしさ、身に染みておるわ。されど、今、ララをおさめるは70才の老いぼれ。また、ララ内部ででは後継問題でごたごたしておると聞く。
これは千載一遇の機会である。マーバイム、余は決めておるのだ。復讐のため、またララに千年王国を築くため、余は兵を挙げようぞ!」

シャギの宣言の前に、マーバイムは何も答えることができなかった。
これ以上深入りすればマーバイムとて、命が安全とは言えないのだ。

「ムドー先生、こういうことになり申したが、いかがなされますかな?」

シャギが問いかけるが、ムドーはしばらく何も言わなかった。
自分でワインをついで、うまそうに飲んでいる。
真意をはかりかねるシャギであったが、間もなくムドーが口を開いた。

「シャギ殿、最初はあまりに無謀なお考えと驚き申したが…良く考えれば、考えるほど、おもしろきお考え。砂漠の果てに出向いて、千年といわず、二千年もの王国を築きましょうぞ。このムドー、客将となったからには、請われれば、地の果てまでもお供いたす所存!」

これにはシャギは大いに喜び、ムドーの手を取り礼を言った。

「さすがは天下に名高きムドー先生。これでララを手中におさめる日は遠くあるまいて。マーバイム、戦の準備じゃ!
あのおいぼれをずたずたに刻んで、砂漠にその骨をばらまいてやるわ!」

プロローグ4終わり(次はプロローグ0、ある夏の日に…)

プロローグ:4-1 4-2 4-3 

4-4 4-5

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