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ムサシVS暴走テディ・D 4-サイレント・ネオ-boy meets girl-

サイレント・ネオ-boy meets girl-今夏完成、電子書籍で出版予定!

それでも、オジャムはよろめきながら立ち上がると、つぶやいた。
「だめだよ、テディ・D……村の人を巻き込んではいけないよ…」
「私の邪魔をしないで!」
再びオジャムは壁に突き飛ばされてしまった。

4

この時、丘のふもとについたムサシは、オープンチャンネルの声に耳を傾けていた。
実験機のコクピット内の会話が聞こえていたのだ。
少年の声はどこかで聞き覚えのある声だった……。
「そうだ、リムリの街で黒服たちにおいかけられていたのを、助けたことがあったな」とムサシは思い出した。
「それにしても、いつも厄介ごとにまきまれている奴だな」
ムサシはピンときて思わず叫んだ。
「その声はオジャムか…!?」
「む、ムサシくん…!?」
意外な人間からの呼びかけに、オジャムは目を丸くした。
「いったい何がどうなってるかを聞く時間はない……とにかく、その一つ目を村に近づかせるな! 大変なことになるぞ!」
「でも、ムサシくん…どうにもならないんだ、テディ・Dがまるで別人になってしまって…」
「そのパイロットがテディ・Dってのか! とにかくどうにかしろ! 村を火の海にするつもりか!?」
「そんなこといったって…」
オジャムは頭の痛みとどうにもならい状況におろおろしている。
「ムサシ、たすけて、おねがい…」
「サシャもいるのか…!」

今、ムサシの目の前には絶望的な景色が広がっていた。
青白い星の光に照らされて、怪しく光る100を超える円盤-サークルが空でうごめき、その下にいる七色に光る一つ目の実験機が四つん這いになりながら近づいてくる。その実験機から逃げるムドー達が現れるたが、ネオのことは無視して、その横を慌てて逃げ去って行った。
「超感覚のサークル使いか…」
ムサシは上空を見上げてつぶやきながら、以前CA士官学校で受けた授業を思い出していた。

地球(テラ)-ネオ東京-CA士官学校-
ここは地球(テラ)における軍属のCAパイロットを育成する学校である。
富裕層の子弟が入学し、みっちり5年間パイロットとしての訓練や授業を受けるエリートとなる登竜門だ。
授業料も相当かかるため、貧しい者は奨学金を受ける以外には入学するすべはなかった。
日雇いの土木作業でアルバイトしているムサシには当然、授業料を払うお金などなかった。
ムサシは収入のすべてを、CAリーグに出場するために費やしており、たいていは腹を空かせていた。
そんなムサシだから、当然CA士官学校に入学することなどできはしなかった。
しかし、CA士官学校でも一番人気のある授業に、時間があればもぐりこんで出席していた。
ムサシのすごいところは、授業料を払っていないのに、一番前の真ん中に堂々と座って誰よりも熱心に授業を受けているところだった。

その日もムサシはアルバイトの合間をぬって士官学校にしのびこみ、授業を受けるため一番前の席についていた。
ツナサラダとレタスがはいったコッペパンをむしゃむしゃ食べながら、授業が始まるのを待っていた。
そして、ムサシが最後の一口をほおばっている時、ざわめいていた教室の雰囲気が変わった。
教室の前の扉が開き、スキンヘッドのプロフェッサーが入ってきたのである。
300人は入る大教室にズラリと座っている生徒たちが、ガタイの良いスキンヘッドの教授を見るとぴりっと緊張感を漂わせて背を伸ばして静まり返り、登壇に立ったその男に視線を集める。
その男こそ、プロフェッサー・マギーだった。

サイレント・ネオ-boy meets girl-(ムサシVS暴走テディ・D・先行配信中)

BGM

-登場人物-

テディ・D:ゴスロリの格好をし、腕には9.8と数字をほり自死がんぼうがある少女。
オジャム:お飾りの提督をしていたが、父親をころされたあげく、砂漠に追放された。命からがら助かり、ゴサクの家で豚小屋などを掃除して糧を得ている。心優しい少年。
サシャ:誘拐船でオジャムと出会った6歳の女の子。勘が鋭く、ゴサクに気に入られている。その正体は…!?

ムサシ:地球(テラ)・ネオ東京出身の19歳の青年。愛機サイレント・ネオをあやつり、第5次地球・コロニー戦争において100機落としを達成、スーパーエースに認定された。しかし、戦う意味を見失い、月歌に放浪の旅に出る。

ソック:ムーンキングダム・斥候隊副隊長。ボーナスをなくしてしまい、恐妻トド子に家を追い出された悲しき中年男性。

シャギ:極悪非道の仮面騎士と呼ばれる男。若いころは、義侠を持ち黄金のシャギと呼ばれていた。青年時代に地元の若者たちと悪党を結成、砂漠地帯で暴れまわったが、ゲンバ提督の娘に手を出したことで怒りをかってしまう。顔を切り刻まれ、腕と足を切り落とされたあげく、投獄された。しかし、復活後は人が代ったように残酷になり、シャギ党を結成して、ついにはカイバの提督の座を強奪するに至った。

ムドー:月歌だけでなく、コロニー連合などで十数年の間、傭兵として戦場をわたりあるいてきた猛将。残酷な攻撃をすることもあるが、騎士道と義理を尊ぶ武人。シュトライツァー党では義兄弟のシュトライツァーの副将として活躍、北国随一の武将とまで呼ばれるにいたった。ダークブルーのパンツァーを愛機としており、精鋭の青備え50機を率いる。

マギー教授(おねえ)とみなみちゃん(アイドル):一年前に地球(テラ)から月歌に向けて出発したが、未だに到着せず。
かつてスーパーエースだったマギーは戦闘での怪我のため、現役を引退して士官学校で教授をしている。裏の顔はおねえである。


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