シャローンの初陣3-サイレント ネオ-ムーン ソング

すると、黄金色のCAを追いかけるように、今度は10機程度の一団が現れた。
メルセデウス家の屋敷の警護を任されているミトが率いる護衛隊である。
月歌の番頭格と言われる老人ミトはシェル重装機にのり、一団を率いていた。
「シャローン閣下、初陣、シャローン閣下、初陣! 遅れるは末代までの恥ぞ! 命を惜しむな、武名を惜しめ!」
と繰り返し叫びながら、守備隊の制止をおしきり、やはり広場をあっという間に通り過ぎて行った。

「いったい何が起きているんだ…」
守備隊長が呆然とつぶやくと、間もなく今度は20機もの一団を率いた集団が現れた。
先頭の白いCAは、指揮官型のエクスぺリオンで、その後に白色で統一された量産型シェルたちが続く。
どの機体の左肩にも”相対するユニコーン”の紋章が刻まれている。
コンクエスト党の証だ。
シャローンの母方の一族にあたるコンクエスト家は、兵力基盤を持たないシャローンにとって中枢となるうる部隊である。
実際、シャローンの初陣から常にシャローンと共に戦場で戦うことになっていく。
指揮官型エクスぺリオンに搭乗しているのは若き当主、シャルル・コンクエストである。
シャローンとは幼いころより遊び、士官学校でも共に学んだ気心が知れた仲であった。
シャルルは守備隊長の要請に応じて、一団の動きを止めた。
「申し訳ないが、我々は急いでいる。ここを通してもらいたい」
「シャルル様、いったい何が起きているのでございますか。あの単騎で駆け抜けていった黄金機のパイロットはどなたでござる」
「なんだ、聞いていないのか!? あれはシャローン様だ!」
守備隊長は「ああ、斥候隊長も同じことを言っていたが、いったいどこの誰なんだ」と考え込んでいた。
「シャローン様とは…?」
「シャローン様はシャローン様だよ。亡くなったエビル提督の一人娘、鳳凰の雛だ!」
すると、守備隊長も「ああ、鳳凰の雛か」とやっとのことで理解することができた。
「そのシャローン様がなぜ単騎で、西に向かわれるのでしょうか!?」
「西門を強襲して奪還するためだよ」
「西門を強襲ですと!?」
守備隊長が思わず声をうわずらせた。
「そうだよ。僕たちはすぐにシャローン様を追いかけなくっちゃいけないんだよ。悪いが今は時間がない。後で僕が君に詳しく説明してあげるからね!」
女ながら自らを”僕”と呼ぶ人懐っこいシャルルは、CAで一礼したポーズをとると動力をあげて、守備隊長の横を一瞬で抜けていった。
シャルルに遅れまいとコンクエスト党のCAたちも、大きな音をたてて広場から去っていく。
残された守備隊の兵士たちは、西に去っていくコンクエスト党の後ろ姿を呆然と見つめるしかなかった。

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