シャローンの初陣8-サイレント ネオ-ムーン ソング

だが、アガシ率いる西門軍はそれを見逃さず、執拗においかけてくる。
戦闘の場所から10キロ以上、キングダム軍が押しまくられた。
「ふふ…これで俺の出世も間違いなし。あの小娘をうちとれば提督代理の座も巡ってくるやもしれぬ…者ども、手を緩めるな!」
勝ちに乗じた西門軍がさらにスピードをあげようとした時だった。
どこからともなくトランペットの音が鳴り響いた。
月歌では古代の習わしがいくつかのこっているが、トランペットを進軍の合図とする習慣があったのである。
すると、何というこであろうか。
キングダムに援軍が現れたのである。
黄色と黒に彩られた複数の旗がはためく。
「マリア党、遅参をお詫び申し上げる! 何ぶん父を失い、我が一族も混乱のさなかにあり申した。
しかし、シャローン様御出陣と聞き及び、一族を率いて馳せ参じました!」
ういういしい声の主は、ゼ・マリアという女性指揮官だった。
シャルルと同様にシャローンとは幼馴染であり、同世代の若者だ。
ゼ・マリアもカフタス銀の夜事件で父親を失っていた。
そのゼ・マリアがマリア党を率いて、援軍に駆け付けたのである。

突如、援軍が現れたため、西門軍は及び腰となった。
すると、潰走をしていたエクスぺリオンもコンクエスト党も再び向き直り、向かってくるではないか。
ここで、驚きのことが起きたのである。
「はっはは、さすがはシャローン様じゃて。見事に時を稼ぐばかりか、敵を大きくひきつけた。これで、我が軍の勝利はみえたぞ!」
エクスぺリオンの声の主はシャローンではなかった。
なんと、老臣であるミトが乗っていたのである。
驚くべきことに、シャローンとミトは乗る機体を、小休止している間に入れ替えていたのだ。
これに騙されたシャルルも開いた口がふさがらない。
「ミト殿、いったいどういうことですか。味方を欺くなんてあんまりです!」
ミトはさらに豪快に笑い、
「シャルル殿、申し訳ござらんな。しかし、ここにも敵のスパイは潜んでいるはず。敵を欺くには味方からと申しましょう。
まあ、説明は後でゆっくりと……皆の者、全力で敵に当たれい!」
こうして、マリア党を得たキングダム軍は勇気100倍、西門軍に襲い掛かった。
もはや互角の兵士数になった西門軍にアドバンテージはなかった。
しかも、疲れていないマリア党も加わったとあって、キングダム軍に大きく押され始めたのであった。

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