見出し画像

喧嘩するほど仲が良い!? 1-サイレント・ネオ-boy meets girl-

シャギに促され、酒を持った十将たちがガスズの前に列をなした。
ガスズは次々に継がれる酒を飲み干しながら、「ムサシよ、貴様は今にどこにおる…どこにいるにしろ、戦をしていればいずれ、きさまををみつけることもできるであろう。その時こそ、お前と決着をつける時だ!」 とじっと前を見据えていた。

1

そのころ、ムサシ達はルート55と呼ばれる中央エリアと辺境都市ララを結ぶ、砂漠に唯一存在する道路をトレーラーでひたすら走っていた。
運転手はムサシ、助手席にテディ・D、後部座席にはオジャムとサシャが座っている。
360度見渡す限り、熱風が吹き荒れる砂漠が地平線まで続いており、みつめていると頭がくらくらするような錯覚に陥る。けれど、サシャは名残惜しいのだろう。たびたび、窓を開けて顔を出しては、ゴサク達の村がある方向を見ていた。

「ねえ、ゴサクさんとオネさん、さーたんのこと忘れないよね?」
「うん、大丈夫だよ、ずっと覚えてるよ、サシャ。また、一緒にゴサクさんの家に遊びに行こうね」

オジャムが決まってこうなだめると、サシャは強くうなずいて安心するのだった。

一方、ムサシとテディ・Dとの間には早くも不穏な空気が流れていた。 CAパイロットとして研究所で実験に参加していたテディ・D。そこは実験に耐えられず多くの子供たちが死んでいく、死の嵐が吹き荒れるような凄惨な実験棟だった。
しかし、テディ・Dはそんな研究所でパイロットとしての片りんをいかんなく発揮、圧倒的な才能を見せつけており、カミィ所長には、”ゴールデンチャイルド”とまで呼ばれていた。

それが、ムサシという隣でしかめっ面をしている、どこの馬の骨かもわからない青年に負かされたのだ。心中穏やかでないし、癪でもあった。
テディ・Dはパイロットとして戦うことが嫌いなはずなのに、負けるのはくやしくて仕方がないのである。
もちろん、仮にこのムサシという青年が、地球(テラ)では現役で3人しかいないスーパーエースに認定されていると知れば、気持ちも違っていたかもしれない。ともかく、今のムサシは、テディ・Dたちにとっては、よくわからない旅人だったのだ。

「ムサシ、あなたは地球では、何をやってるの?」

テディ・Dは窓の外を見ながら、あまり興味があるそぶりはみせずに、さりげなくたずねた。

サイレント・ネオ-boy meets girl-(喧嘩するほど仲が良い!?/先行配信中)

BGM

-登場人物-

テディ・D:ゴスロリの格好をし、腕には9.8と数字をほり自死がんぼうがある少女。
オジャム:お飾りの提督をしていたが、父親をころされたあげく、砂漠に追放された。命からがら助かり、ゴサクの家で豚小屋などを掃除して糧を得ている。心優しい少年。
サシャ:誘拐船でオジャムと出会った6歳の女の子。勘が鋭く、ゴサクに気に入られている。その正体は…!?

ムサシ:地球(テラ)・ネオ東京出身の19歳の青年。愛機サイレント・ネオをあやつり、第5次地球・コロニー戦争において100機墜としを達成、英雄認定及びスーパーエースの称号を得た。地球のCAリーグにも参加している人気パイロットでもある。しかし、戦う意味を見失い、月歌に放浪の旅に出る。

ソック:ムーンキングダム・斥候隊副隊長。ボーナスをなくしてしまい、恐妻トド子に家を追い出された悲しき中年男性。

シャギ:極悪非道の仮面騎士と呼ばれる男。若いころは、義侠を持ち黄金のシャギと呼ばれていた。青年時代に地元の若者たちと悪党を結成、砂漠地帯で暴れまわったが、ゲンバ提督の娘に手を出したことで怒りをかってしまう。顔を切り刻まれ、腕と足を切り落とされたあげく、投獄された。しかし、復活後は人が変わったように残酷になり、シャギ党を結成して、ついにはカイバの提督の座を強奪するに至った。

ムドー:月歌だけでなく、コロニー連合などで十数年の間、傭兵として戦場をわたりあるいてきた猛将。残酷な攻撃をすることもあるが、騎士道と義理を尊ぶ武人。シュトライツァー党では義兄弟のシュトライツァーの副将として活躍、北国随一の武将とまで呼ばれるにいたった。ダークブルーのパンツァーを愛機としており、精鋭の青備え50機を率いる。

ガスズ:ムサシのライバル。CAリーグでは常にムサシと同時に昇級しており、何度か土をつけている。黒いCAヤシャをあやつる。唯我独尊を地で行く男。

マギー教授(おねえ)とみなみちゃん(アイドル):一年前に地球(テラ)から月歌に向けて出発したが、未だに到着せず。
かつてスーパーエースだったマギーは戦闘での怪我のため、現役を引退して士官学校で教授をしている。裏の顔はおねえである。


この記事が参加している募集

ご覧いただきありがとうございます!