シャローンの初陣9-サイレント ネオ-ムーン ソング

一方、ミトになりかわり、森林のルートをとったシャローン達はどうしているであろうか。
シャローンはすぐさま軽量になるため、重層型シェルのパーツを次々と捨てさせた。そして、身軽になると、斥候隊に先導させて森林の中を猛スピードで駆け抜けていく。

後にシャローンの単騎駆け、西門強襲と言われる行動であった。

稲妻のごとくと言われた速さで、半日はかかるといわれる行程を半分にして、シャローン達は森林を抜けてしまった。これは常に各地を偵察し、地形を知り尽くす斥候隊あってのものだった。
斥候隊は森林における最も早く抜け出すルートをわかっていたのだ。
しかし、あまりの強行軍でシャローンに追いつけず、彼女を守る半分以上のCAが次々と脱落してしまった。
さらに、スピードに自信がある斥候隊も脱落していき、残ったのは斥候隊長のデニ・オムなど数機だけとなった。

森をぬけると、目の前には西門がそびえたっている。
その要塞のような威圧的な姿にシャローンを守るCAたちが圧倒される。
「シャローン様、いかがいたしますか」
デニ・オムの問いかけに、シャローンは迷いなく即答した。
「我に命を預けよ。強襲する!」

突如、敵が現れた西門はパニックになっていた。
まさか、5機のみで敵が強襲するとも思われず、まだ他にもCAが現れるのではないかと恐怖にかられていたのだ。
頼みのつなであるアガシの軍団は遠くまで出撃して、キングダム軍と交戦中である。
シュミットは恐れおののき、門の上に配置しているCA隊のシェルたちに無反動バズーカを持たせて、無闇やたらに攻撃させた。
というのも、西門には100基ものトーチカが配置されているが、内側から攻め寄せるシャローン達の方向には一基も向けられていなかったからである。

飛び交うバズーカの弾丸に周りを守るCAはひるむが、シャローンは全く意に介さない。
周辺に弾丸が着弾して火がふいている最中、かまわず単騎で突撃を続けてすりぬけていく。
デニ・オムはCAのスピーカーを通して大声で叫んだ。
「貴様ら誰に攻撃していると心得る。貴様らが攻撃するは、エビル様の一人娘、シャローン様にあらせられるぞ!」
すると、攻撃がにわかに弱まり散発的になった。
もともと、西門の兵士はキングダムに昨日まで属していたような人間ばかりである。
シュミットが寝返りしぶしぶ従ってはいたが、キングダムには家族もいた。
「おい、あれはシャローン様だそうな!」
「ああ、エビル様の娘らしい」
「それを殺したら、俺らは生きてキングダムに戻れんぞ」
「冗談じゃない、妻も子供もキングダムにいるんだ!」
「隊長だから仕方なくシュミット大佐に従っているが、どうする?」
西門の兵士が当惑している。

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