シスター・コンプレックス⑥
体が痛くて目が覚めた。
気づくと、私は自分の部屋の机に突っ伏して寝ていた。
嫌な夢を見た。悲しくて痛い。のど元にこみあげる感情を感じた。
カメラをプレゼントした姉を、私が階段から突き落とした夢。そこに現れた見知らぬ青年。思いがけない話。
すべては夢だったが、姉を突き飛ばした感触が、まだ手のひらに残っているようで、気持ちが悪かった。
プレゼント…そうだ、今日は私の誕生日で、栞の家に行くはずで。
体を起こすと、机の上に、青いリボンがかけられた白い箱があった。
それには見覚えがあった。どきん、と私の心臓が鼓動を速める。
恐る恐るそれに手を伸ばすと、箱の下にメモのような紙が置いてあるのに気づいた。そこには、姉の字が書かれていた。
お誕生日おめでとう、水穂
ぐっすり眠っていたみたいなので、プレゼントを置いていきます
今日は村崎さんの家に行くんだよね? 楽しんで
私はまた、大学のほうに行ってきます
真幌
白い箱を開けると、そこに収められていたのは、やはり、私が夢で見た一眼レフカメラだった。
どう考えていいかわからなくて、私はしばし、カメラをじっと見つめた。
私の夢。同じカメラ。青年の話。
思考はぐるぐる循環し、おそらく、答えはないのだろうと思われた。
しかし、二つだけ、わかることがある。
それは、私もまた、栞にこの話をし、自分を殺人者だと言うだろう、ということ。
そしてもう一つは。
今度、機会をつくって、姉に少しだけ自分の気持ちをぶつけてみるだろうということだ。
それで姉との関係が壊れようと、修復不可能になろうとも。
もう一度、姉を殺してしまうことにならないのであれば、プライドも気遣いも捨てて、私は姉と話すだろう。
もう二度と、あんな夢を見ないように。
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