ミスマッチストーリィ 河北秀也のiichiko design
7月22日から始まった本展は早いものでもう3週間が経過。
お客さまの反応が気になる今日この頃ですが、こっそりエゴサをしながらおおむね好評いただいてると認識しております!ありがとうございます!
(どこの美術館でも、感想をSNSやアンケートでいただけると大変喜びます。)
さて本展は、三和酒類株式会社の麦焼酎「いいちこ」のプロモーションを約40年にわたって手掛けてきた、アートディレクター・河北秀也さんについてご紹介するものです。
作品についての詳しい内容は実際に美術館でごらんいただくとして、ここでは展覧会の意図やキーポイントをお伝えしたいと思います。
①なぜ、「いいちこ」?
なぜこの展覧会を開催することになったかというと、学芸員(私)がいいちこポスターのファンだから。
個人的な趣味を仕事に持ち込んで大変申し訳ないですが・・・しかし企画も研究も、はじまりは個人の関心から。
自分が良いと思ったものを客観的に分析して、美術館という公的施設で不特定多数のお客さまに説得力をもってお伝えすること、それが学芸員の仕事とも言えます。
通勤途中にいいちこポスターを見かけるようになって(ちなみに地元ではたぶん見たことないです。全国どこにでも掲出されているわけではないそうです。)、ほかのポスターとは明らかに違うそのオーラに引き寄せられ、徐々に「なんだか気になる存在」に(恋?)。
デザインやポスターにもともと関心があったこと、アートを身近な存在として扱うことの多い当館の方向性とも合うことから、展覧会企画に至りました。
これらがすべて河北秀也という一人のデザイナーによって生み出されていることを知ったのは少し後のことです。
②デザインって、何?
造形的に凝ったファッションや家具など、「なんとなくオシャレ」なものとしてのイメージがある「デザイン」という言葉。
それは間違いではありませんが、広い意味では「問題解決のための手段」ととらえられます。
目を引くためのデザイン、売り上げを伸ばすためのデザイン、自己表現のためのデザイン、使いやすくするためのデザイン、、、すべて何か課題があって、それらを解決することを目的にした行為です。
河北さんはデザインに対しまさにそのような包括的な考え方をもっていて、私たちにとって大切なことは何か、ということをデザインを通して伝えようとしています。
目まぐるしく移り変わる世界、コロナ禍でますます加速する「余裕のなさ」みたいなものに対して少し立ち止まり、いつも目にするポスターと河北秀也のデザイン思考から何かヒントを得ていただければと思います。
③みる、ということ
今回特筆すべき点は、モノの配置や見せ方を総合的に考えた空間づくりです。
美術館で芸術作品を見る環境と、街中でポスターを見る環境はまったく異なりますよね。一方は見る(あるいは感じる)行為に集中できるよう特化した環境、もう一方はさまざまな雑多な要素が含まれる環境。
芸術作品もポスターも同様に見られることを前提として作られていますが、「どのように見られるか」という文脈から離れてしまうと、その在り方が大きく変わってしまいます。
本展では、広告をみる環境を、美術館という鑑賞の場において解釈することを試みています。
小難しい書き方をしてしまいましたが、とにかく複雑な空間になっています。(説明しづらい)
「みる」ってどういうことだろう?と考えるきっかけになれば幸いです。
③については後日、詳しく記事にできればと思います。
そんなこんなで、展覧会を見た後にはいいちこが飲みたくなるはず~
※白状すると担当者でありながらまったくお酒が飲めません。
※あと残念ながら館内で酒類は販売しておりません。
写真©Fumio Kohama
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