04:「トレゾール~魔法の宝箱~」

しばらく行くと、目の前にうっすら何かが見えます。
どうやらそれは大きく深い谷のようでした。
霧の島の入り口は大きな谷だったのです。

エスメラルダは小さな入り江に船を停めました。
島の中も白い霧が立ち込めていますが、海の上よりも少しだけ先が見えるようでした。
しかしその崖はどこまで続いているのかわかりません。
なにせ崖の壁がどれほど高いのかも霧で見えないのです。

3人は船を降りて谷の底を歩いていきました。
エスメラルダは右手を剣から離しませんでした。
霧の中からなにかが襲ってくるかもしれないからです。
しかし進めど進めど見えるのは高い壁ばかりで、人はおろか建物ひとつ見当たりません。
3人は霧の中で野宿をしながら歩き続けました。

3日ほど歩いたころ、遠く霧の中にぽつりと灯りが見えました。
ぼうっと見えていたそれは近づくにつれて建物だとわかりました。
3人は喜んで建物に向かいました。
今日は野宿をしなくていいと思ったからです。
その建物は、どうやら神殿のようでした。

「見たことのない神殿だな。」
「村や町にあった神殿とは違う神様を祀っているのかもしれないね。」
「とにかく行ってみよう。」
3人が神殿の門をくぐったその瞬間でした。
「何者か!」
と、声が響きました。
その声がどこから聞こえるのかわかりません。
エミルは、ここに来るまで誰にも出会わなかったので、もしかしたらこの声は神殿の神様かもしれないと思いました。
「僕はエミルと言います。こっちはジャックとエスメラルダ。願いを叶える世界樹を目指して海を渡ってきました。」
すると、声は厳しさを増して
「願いを叶える世界樹だと?海を渡ったくらいでその資格はない!帰れ!」
と、言いました。
すると霧が濃くなっていきます。
神殿の光が遠ざかるようです。
「待ってください!村の魔女、ベアトリーチェに言われて来たんです!このまま帰るわけにはいきません!」
すると霧の動きがぴたりと止まりました。
「ベアトリーチェだと…?」
「はい。この箱を持って、願いを叶える世界樹を目指しなさいと。」
そう言ってエミルは、宝箱を取り出しました。

続く・・・。


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