見出し画像

01:「トレゾール~魔法の宝箱~」

むかしむかしある王国にトレゾールという魔法の宝箱がありました。
つるりとした箱の表面は金の装飾があり、箱自体が輝いて見えました。
ある日、魔法の国の白の女王が持っている箱を見た人間の国の黒の女王は思いました。
「あの宝箱が欲しい。絶対に手に入れてやるぞ。」
黒の女王は宝箱が開いているところを見たことがありませんでした。
それなのに、中にはぎっしり宝石が詰まっているとわかったのです。
黒の女王は白の女王を騙して、魔法の箱を奪い取ってしまいました。

黒の女王は人間の国に帰って箱を開けようとしました。
しかし箱は開きません。
それどころか、どうやって開けるのかわからないのです。
鍵穴も継ぎ目もないその箱をなんとかして開けようと、黒の女王は国一番の大男を呼びました。
「お前の怪力でこの箱を開けてみせよ!」
大男は箱を引っ張ったり、叩いたりしましたが傷ひとつつけられませんでした。

次に黒の女王は箱を暖炉の火にくべました。
いかに魔法の箱でも火あぶりにされれば開くはずだと思ったのです。
しかし暖炉の火が消えても、箱は傷どころか煤ひとつ付くことはありませんでした。

黒の女王は考えました。
「いかに精巧に作られた箱でもどこかに継ぎ目があるはずだ。水につければ空気が漏れて継ぎ目がわかるに違いない。そうすれば、継ぎ目から箱を開けられるはずだ。」

黒の女王はお城の庭にある噴水の水に箱をいれました。
しかし箱は噴水の底に沈むばかりで、空気の泡はひとつも出ませんでした。
せっかく白の女王を騙して手に入れたのに、箱は開きそうにありません。
黒の女王は噴水から箱をひきあげました。

その時です。
人間の国は無数の嵐に囲まれ、地面が揺れ、割れた地面から火が噴出しました。
黒の女王は、これはきっと白の女王が箱に呪いをかけたのだと思いました。
だから箱は開かなかったのだと。
黒の女王は怒って兵士を集めて言いました。
「これから魔法の国に攻め入る。白の女王を捕まえたものには褒美をとらそう!」

魔法の国に人間の国の兵士が攻めてきました。
白の女王は驚き悲しみました。
そして世界樹のもとに行き、祈りました。
「世界樹よ、どうか魔法の国だけでなく人間の国の民もお護りください。黒の女王は箱の魔力に憑りつかれてしまったしまっただけなのです。どうか平和が訪れますように。」

そこに黒の女王が現れて言いました。
「お前が箱に呪いをかけたんだろう。だから人間の国は災厄に見舞われた。白の女王、お前にも呪いをくれてやろう!」
するとたちまち世界樹の周りに黒い霧が立ち込めて、二人の女王を飲み込みました。

後に残ったのは戦をする二つの国の民だけです。
魔法の箱は、いつの間にかどこかへ行ってしまいました。
人間の国ではたくさんの冒険者に魔法の箱を探させましたが、そこから千年経っても、箱がみつかることはありませんでした。

続く・・・


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?