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ものすごくうるさくて、ありえないほど近い
鑑賞時の感想ツイートはこちら。
『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』を観た。は〜、泣いた泣いた! 役者陣が皆、好演してます。特に「間借り人」のマックス・フォン・シドー。台詞なしで、この味わい深さ。オスカー少年は、イライジャ・ウッドにちょっと似てる。監督は『リトル・ダンサー』のスティーブン・ダルドリー。 pic.twitter.com/zYRag33YJn
— もりはるひ (@haruhi_mori) March 29, 2017
2011年のアメリカ映画。9.11テロで最愛の父を亡くした少年・オスカーは11歳。アスペルガー症候群の彼は、父の遺品の中から見つけた一本の鍵をきっかけに、ニューヨーク中の「ブラック」さんを訪ね歩く。鍵の謎を追う冒険を通してオスカー少年が出会う人々と、大切な者を失った悲しみからの再生と希望を描くヒューマン・ドラマ作品です。原題 "Extremely Loud & Incredibly Close"。
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主演は、少年オスカー役にトーマス・ホーン。共演は、オスカーの父役に『ウォルト・ディズニーの約束』のトム・ハンクス、オスカーの母役に『スピード』のサンドラ・ブロック、祖母の家の「間借り人」に『エクソシスト』のマックス・フォン・シドー、ほか。
監督は、『リトル・ダンサー』『めぐりあう時間たち』『愛を読むひと』のスティーヴン・ダルドリー。
原作はベストセラー小説
長いタイトルが印象的な本作。もともとは、ジョナサン・サフラン・フォア(Jonathan Safran Foer)の同名小説『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』(2005年)が原作です。
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彼の書籍は「ヴィジュアル・ライティング」(Visual Writing)と言われる実験的な視覚デザインが施されているのが大きな特徴。
「ヴィジュアル・ライティング」って?――百聞は一見に如かず。Google の画像検索結果をご覧になると、雰囲気が掴めると思います。
下記のページで紹介されている書籍『Tree of Codes』(2010年)では、ページが幾重にも切り抜かれていたりして、小説なのに、まるで『はらぺこあおむし』さながらの “しかけ絵本” のよう!
“単なる挿絵などとは違い、ヴィジュアルそのものにも意味を持たせて、より深いストーリーと世界観を創りだすことが狙い”
原作版の『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』でも、物語の内容に沿って多くの写真や図が入っているほか、タイポグラフィーや文字のレイアウトなど、紙面上の工夫がたくさん施されていています。
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ほかにも、言葉を失った「間借り人」の手記を一行しかないページで表現したり、校正の朱字の書き込みを本文中に再現したり――視覚的な演出がふんだんに使用されています。
全米ベストセラーとなった原作なので、物語としての面白さはもちろんのこと、こうした「ヴィジュアル・ライティング」を使った書籍の形態も、紙媒体ならではの読書体験ができそうで興味をそそられますよね♩
トーマス・ホーンが主人公を好演
さて、本作の主人公「オスカー」。繊細な心を持ち、生きづらさを抱えたアスペルガー症候群の少年を、主演のトーマス・ホーンが見事に演じています。
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堂に入ったお芝居の様子から、これまでにも活躍してきた子役なのかと思いきや、演技も映画への出演も本作が初の経験だと聞いて、びっくり!
実はトーマス君、アメリカの長寿クイズ番組『ジェパディ!』(Jeopardy!)における 2010年の「キッズ・ウィーク」優勝者。この時のテレビ出演が映画プロデューサーの目に留まり、本作のオーディションを勧められたのだとか。
同じ監督の映画『リトル・ダンサー』で主人公のビリー少年を演じたジェイミー・ベルも素晴らしい演技でしたが、スティーヴン・ダルドリー監督は才能豊かな少年を作品に抜擢するのが上手いですね~!
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予告編での雰囲気は、こんな感じ。
○ あらすじ(ネタバレなし)
大切な人を失った悲しみ――誰にでも必ず訪れるそのことに、人はあまりにも無防備だ。覚悟した別れでも受け入れがたいのに、ましてそれが突然で理不尽な別離だとしたら――。
オスカーと父は、親子であると同時に親友だった。父は少しばかり繊細で生きることに不器用なオスカーを、その個性を壊さずに導いてくれる頼もしい師でもあった。そんな二人を優しく見守る母親。ところが――9.11が最愛の父を奪ってしまう。
オスカーは父が遺した一本の鍵に、最後のメッセージが込められていると信じ、鍵穴を探す旅に出る。鍵の入っていた封筒に書かれた文字に従い、ニューヨーク中の “ブラック氏” を訪ね歩くオスカー。やがて謎の老人が同行者となり、いつしかオスカーの辿った軌跡は、人と人とをつなぐ大きく温かい輪になっていく。
ついにオスカーは、鍵の真実とめぐり会うのだか――。
脇を固める大人たちも良い♩
オスカーの父・トーマス(トム・ハンクス)は、息子と一緒に「調査探検」という遊びをよく楽しんでいました。アスペルガー症候群で人とコミュニケーションをとることが苦手なオスカーに、人と関わることを経験させようという想いからでした。
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オスカーの特性や気持ちを深く理解し、得意なことを伸ばし、苦手なことも楽しく挑戦できるように導く、素敵なお父さんです♩
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母・リンダ(サンドラ・ブロック)も、そんな父子をそばであたたかく見守り、いつも息子のことを気に掛けています。夫のトーマスとも、とても仲良し♡
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ところが、ある日突然、テロによって夫を失ってしまいます。大切な人を亡くした悲しみに自らも苦しみながら、父の死にショックを受けている息子とわかり合えず、時にぶつかることも――。
他者の気持ちを汲み取ることができずコミュニケーションが苦手なわが子を気遣い、理解しようと懸命に努める彼女の姿には、同じ母親として本当に涙が出ました。
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そして、祖母の家でオスカーが出会う「間借り人」(マックス・フォン・シドー)。
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お向かいにある祖母の家に間借りして住んでいること以外、何者なのかよくわからない、謎の老人として登場します。彼には発声障害があり、言葉を話しません。左右の掌に入れた "YES" と "NO" のタトゥーと、筆談でオスカーと会話します。
この「間借り人」を演じるマックス・フォン・シドーがね、実に良いのですよ~!
台詞が一切ないのに、表情と仕草のみで様々な感情が伝わってきます。なんという味わい深い演技! わたしの中では、この人が一番印象に残っています。
オスカー少年の生きづらさと悲しみを支える愛
とても繊細なオスカーには、苦手なものがたくさんあります。
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あのテロ事件以来、それはさらに増えました。公共の乗り物、歳を取った人、走っている人、飛行機、高いビル、閉じ込められるもの、大きな音、悲鳴、泣き声、歯がボロボロの人、置き去りの鞄、置き去りの靴、親といない子供、鳴り響くもの、煙を出すもの、肉を食べる人、見上げる人、タワー、トンネル、スピードが出るもの、うるさいもの、ライトがあるもの、翼があるもの、そして、橋――。
わたし自身も人の大きな話し声が苦手だったりするので、少しだけ気持ちがわかるような気がします。それに加えて、こんなに苦手なものがたくさんあったとしたら――日常生活を送るだけでも、さぞやしんどくて、疲れてしまうことでしょうね。
そんな生きづらさを抱えたオスカーが、亡き父からのメッセージを読み解くために、電車に乗り、雑踏を歩き、知らない人に会ってまわるのです。それを支えるのは、母や祖母など、(亡き父も含め)彼を理解してくれている周囲の人たち。
オスカーを想う、まわりの人々からの “愛”。
父の死後、オスカーがやめていた「調査探検」を再開し、根気強く続けるモチベーションの元になったのも、彼が父を慕う “愛” なのでした。
タイトルの意味、あなたはどう解釈する?
本作のタイトル、
『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』
"Extremely Loud & Incredibly Close"
意味が気になりますよね。
一応、作中にチラッと出てくるには出てくるのですが、「さて、そのココロは?」という真意については触れられていません。これについて、本作を観た人たちが様々な解釈をブログなどに書かれていて、興味深いです。
わたしもまだ答えが出ていないので、もう一度観てみようかなぁ♩
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