【短歌十首】この世のありとあらゆる幸福
青々と緑輝く式場に両家の親族そっと集まる
さよならの靴音が鳴る花嫁をエスコートするその背中から
幼き日ふと振り向けば瓶底の眼鏡をかけた兄がいたのだ
その眼鏡いじめられぬか心配ではらはらしていた転校前夜
母の日にお手伝い券ボックスを夜中に二人作りあげたね
将太くん将太くんと追いかけて付いてくんなと蹴られた日もあり
「妹よ」を聞かされて育ったはずなのに先に家を出ていく兄よ
思い出は走馬灯のように出てきては止まらぬ止まらぬ止まらぬ涙も
新しいひとつの家族の始まりに無くてはならないこのピリオドは
くちづけを交わす二人に降り続け この世のありとあらゆる幸福
結社誌へ提出した短歌を少し修正したものです。
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