見出し画像

「言語の本質」今井むつみ 秋田喜美著(@中公新書)「ことばはどう生まれ、進化したか」を読んでみました。

「言語の本質」今井むつみ 秋田喜美著(@中公新書)「ことばはどう生まれ、進化したか」を読んでみました。
 今井先生のこの著書ベストセラーになっているらしいです!図書館でも人気殺到で私は予約して約6ケ月後にようやく読むことが出来ました!オノマトペの研究をされていて、特に幼児期の言語の獲得はどのようにして生まれてくるのか?ということを調べておられます!そこから導出されるのはまさに根源的な「言語の本質」とはなんだろう?そもそも「わんわん」や「ぱくぱく」などのオノマトペは言語なのか?何なのか?なぜ乳幼児はオノマトペの獲得から、まるでヘレンケラーが突然「WATER」の意味と実体を認知するように、言葉を知ることにいたるのか?ということが書かれています。学術的な要素も多いので決して読みやすいものではありません。急がずにじっくり読んでその言語とは何だろう?ということを今井さん、秋田さんがお書きになっていることを読みながら紙上で読者が二人の著者と対談しているというような感じで読み進めていきました。
 「ゆる言語学ラジオ」というYouTubeチャンネルで
「日本赤ちゃんミステイクコンテスト」というのがあり視聴者からの投稿で面白い事例が紹介されています。今井先生も登場されています。https://www.youtube.com/watch?v=ivG_fbmuV5M

本書の中でも野球の役名に関して「ピッチャー」「キャッチャー」から類推したのかどうだかわかりませんが、打者のことを「バッチャー」と言う!ということ。これって実は私がもし野球を知らなかったらこんなことを言っていたのではないか!と真剣に想像しました!
 このオノマトペという言葉(音?)は意味がなんとなくありそうで音感や語感も含めて身体的に反応しやすいというのは直観的に理解できます!「さらさら」と「ざらざら」という言葉からイメージされるものが確実に自分の身体のイメージとつながっていると思いませんか?と私も思うのです!
 一方、今、大規模言語モデル(LLM)としてCHAT-GPTに代表されるような生成AIが登場して来ています。生成AIは莫大な単語や言葉の配列などを獲得するために膨大なデータを学習しています。調整するパラメーターがそれこそ何十億~何千億という単位で設定され、スパルタ学習して生成されるような現在のモデルが生まれました。しかも、その構造も人間の脳内のニューロンの構造を模した形で作りなのだそうです。それが上手く機能して今のような状態になったということが言われています。
 しかし、AIには身体はありません、赤ちゃんが言葉を獲得していく方法と今の生成AIはそもそもの方法論が違うのではないか?と思うのです!もっと省エネで推論をしながら「バッチャー」のような間違いをしながらでも身体を含めて総合的に学習していくことが求められて来るのではないでしょうか?それはOPEN-AIが行っている電力を大量に使用し、最高益を出し続けているNVIDIAのGPUを大量に使い計算をし続けているモデルと明らかに違う方法なのだと思います。
 生成AIの世界でもそうした力業ではなく省エネで適切な生成を行うということを開発している会社が登場して来ました。パラメーターの数が少なくても省エネで言語を生成できる。それが「赤ちゃん」の備わっている能力と似ているように感じています。そんなことが生成AIの世界で出来るようになっていくのでしょうか?人間は食べ物を食べてそれをエネルギーに変えて行動しています。何かで見たか読んだか、したのですが、そのエネルギー効率の良さがすごい!ということです!この高効率のシステムが言語の獲得にも適用されているのだと思います。この獲得の仕組みを解明することが新たな省エネ型の生成AIを創るヒントになるのかも知れません。
 人の認知はどうなっているんだろう?という今井先生の探求の先にはまさに言語の本質と言語獲得の方法の本質を追求しておられる姿が見えてきます。本書の中でこんなことが書かれています。「言語習得とは、推論によって知識を増やしながら、同時に「学習の仕方」自体も学習し、洗練させていく、自律的に成長し続けるプロセスなのである」と。言語の獲得のためにオノマトペに代表されるような身体感覚を含んだ言語から新たな学習を生み出すようなテクノロジーが生成AIのシステムに組み込んでいけるのでしょうか?そんな探求をしている今井先生、秋田先生が、ワクワクしながら研究されている様子が想像できるような著書でした。発行年2023年5月。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?