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療育花育の記録 ともくん#10



ともくんは、平成25年生まれ。障害名はついていません。いわゆるグレーゾーン。普通学級に1年通い、勉強も頑張りました。2年生からは、障害クラスに入り、お母さんもともくんものびのびたのしく生活できるように少しづつなってきました。
いきものが好きで、カマキリを飼ったり、抜け殻を収集したり、遺跡を掘りに行くのが好き。いろんないきものにとても興味があり、調べるのも得意。おともだちからは、いきもの博士と呼ばれることも。

ともくん 20240325 「ともくん光と影を創る」


終了後の経過について 親御さんから

今回も庭のお花にすると言って、教室が始まる前に、ちょうど咲き始めた水仙やふきのとうなどをとってきました。

先生体調悪く、声が出ないというお話から始まって「髪の毛かっこよくなったね。切った?」の質問には答えず、なぜか電気をつけたり消したり。
「春休み?」「ゆっくりできていいね。」「何年生になる?」と会話を続けてくださいましたが答えず、指で六年生と答えることだけできていました。

「六年生はどんな感じ?どんな感じ?を生けてみようか?」「今日はどんなお花?」と聞いてくださったのですが、答えずで「うーん。うーん。」と声を発しながら、今日は恥ずかしいのかしゃべらずお花も見せようとしませんでした。

見せようとしないので先生は、「見えないようにして生けてみて。先生見ないからともくん生けてみて。」ということでビデオの画像を写らないようにして、声は聞こえるようにしてスタートしました。

すぐに生け終わって先生に見てもらうと「すごいきれいだね。お庭の?」と聞いてくださいましたが相変わらずまたもや電気をつけたり消したりしてました。
「水仙、すごく元気!!春らしいわ~」と言ってもらうと、部屋を出ていき、ランプ型の小さい電気を持ってきてお花に灯りを灯すと影ができてとてもきれいで「すごいね。とも君。」と褒めてもらうと、テンションも上がってきて今度は懐中電灯を持って来て、花に光を当ててお花がよりきれいに見えるようにしました。

どんどんとも君ワールドに突入していきました。いろんな角度から光を当てて光と影のコントラスト楽しんでいるなと感じました。

先生も「すごくかっこよく見えるよ。いろんなところに置いてみたら?」とのアドバイスがあると、上から懐中電灯でライトを当ててみたり、電池式のキャンドルを持って来て置いてみたりしました。
次に全体の部屋の電気を消して、もう一つの真上にある電気も消して、その電気の取り手に青い光の懐中電灯をつるして、青い光を当てると、なんとも幻想的な感じとなり先生も「そういうところに重きを置いているんだね。どうやったら美しく見えるかをやってて、とも君すごいね。とってもきれいだね。」と褒めてもらいました。

「映画のワンシーンみたいだね」と言ってくださると、「僕の好きなアニメ入れよう。金閣寺も入れよう」と言ってポケモンのプラモデルと金閣寺の飾りを持って来て飾りました「風も入れよう。」と言って下敷きで仰いで風を送ってみたり、「お母さんの生けたお花も飾ろう。もっときれいになるよ」と言って飾ると、先生が「とも君優しいね。」と言ってくださいました。


私自身、とも君が嬉しそうにしてる様子と、私のお花を飾ってくれたことがとても嬉しく思いました。
それからもとも君ワールドは止まることなく、次に「きれいでしょ?」と言ってガジュマルの木を持って来て飾ると、「きれいに見えるって素晴らしいことよ。」と言ってもらえ、ユーカリの鉢植えを持って来て「ユーカリの影がきれいなんだよね。」と言うと、先生が私に「これって美意識なのよ。大人はもっと遅くに出るんだけと、とも君に出てくるってすごいことよ。」と言ってくださりとても驚きでした。

青い電気を黄色い電気に変えるとクリスマスみたいだねと言ってみたり、イルカのぬいぐるみを泳がせてみたり、光を当ててみたり、笛を持って来て、笛で吹きながら、自分の部屋に行って「鈴虫の音」と言って鈴を持って来て、笛を吹いて鈴を鳴らして、ちょとしたとも君なりの演奏の場になっていました。
先生は「今日はおもしろいわ~。」とのってくださってて、私もとっても楽しい気分になりました。

とも君の発想力、創造力がほんと面白かったです。
最後に「光当てたり、影作ったり。素晴らしい作品でした。」とお褒めの言葉をいただきました。
「6年生になって頑張って元気に学校行ってね。」とエールをいただき、最後に「大人になるってことは嫌なこと9割。何で嫌なことがあるかというと自分のことしか考えないから。誰かのためとか世の中のために働いていると人間元気でいられるんだよ。今日は素晴らしかったよ。」と言葉をいただいて挨拶をして終わりました。
とも君は先生の言葉をどう感じたかは分かりませんが、少しでもとも君なりに残っていると良いなあと思います。



終了後、先生が今日は美意識まで感じられたのでとても成果を感じたととても嬉しそうに言ってくださり一緒に喜び合うことができました。

きれいだなと思うことは、心にゆとりがないとできない。
水切りとかは基本のキで、それをさらに創造物を美しく見せようというのは次のステップ。
ともくんがそこまでいけたということがとても嬉しいと言ってくださいました。お母さんがやってる(花育)からだよとも言ってくださり、私のやってることもとも君に通じてるんだなと嬉しく思いました。

美意識があると倫理観ができるということや子どもの時は無意識なんだけど、大人になったら発揮できていくということ。
生きる根っこになっていくということ。
無意識の中にあるものを引き出していくことが生きること。
とも君は無意識なんだけどもっているものを出して生けていた。
電気をつけてキレイと納得していた。
心が全開放してたんだろうなと思ったとのこと。
先生はとも君とは信頼関係ができてきたと思うし、花育教育の効果がでてきたとお話ししてくださいました。
そして続けることに意義があり、何らかの方法で引き出して、感覚を使っていくことで゛生きる力゛になるということ。
よく体験会をするけどその一回だけでは無理で、引き出せない。時間がかかる。ちょっとずつ引き出す。漢方薬みたいなもので、だからこそ続けることが大事とお話してくださいました。

全てが納得でした。本当に先生はとも君のもっているたくさんの引き出しを少しずつ開けてくださっていると思います。
今回もあれだけおもしろく素敵な作品に展開できたのは、先生の引き出しの開け方が上手だからだと思います。

いつもとも君の気持ちに根気よく寄り添ってくださることで、本当に先生に心を開いているのを感じます。
今回も子どもの成長に喜びを感じることができました。

     


写真記録



前回を踏まえた検証と考察

自分の今のこころや感覚を花で表現できるようになってきているので、引き続き、観察しながら信頼関係を構築していきたい。

今回は春休み。
ゆったりとした気が伝わりながらの花育でした。

光と陰に花の美しさを表現していたので、
美意識が芽をだしたことが嬉しい。
親御さんから、心を開いているのがわかると感想をいただけたことで、方向性がこれでいいんだと、確信を持つ。

印象記録

無意識下の美意識は、
緊張や閉ざした中ではなかなか出せず、
こころの開放の中で出るものなので、
開放しているんだな、と、
コツコツ続けた成果が出て、
嬉しい出来事だった。

現場から

学校が変わり、本人も心がお疲れなのかもしれない。いつもより、ゆっくりとした落ち着く空間をつくるように配慮。
そうすると、奥からいつものともくんの感性が湧きいでてきた。

次回考察

しばらくの間、環境に慣れるまで、刺激は少なく現状維持。待つに徹する。


―to be continued

2003年から一万人以上の方に花育をしました。現場でどんな風に、どうしたか、結果どうか等、遺さないまま頭の中にあり、書きのこして、いつか誰かの役にたったらいいな、と思い書き始めました。サポート励みになります。活動費として使わせていただきます。よろしくお願いいたします。