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#10 目に見えないオフィスをつくる

同じ空気を吸うには?

ナラティブベースはオフィスを持たない。だから共通するしくみを使うということは、同じオフィスに席を並べることと同じ効果が必要だった。インフラやルールは目に見える確かなしくみとしてもちろん必要だが、それ以上に、しくみが織りなす空気感を一緒に感じることが大切だった。つまり必要性をもって生まれ、それをみんなが理解しているという共通・共創意識だ。

当初(2011年〜2013ごろ)は今のようにクラウドサービスやコミュニケーションツールが充実していなかったので、あるものを組み合わせて必要なルールやしくみをその都度作って増設していた。確認してみるとそのころはSkypeでプロジェクトごとにグループをつくり、コールよりもチャットでセミリアルタイムなコミュニケーションを頻繁に行っていた。またプロジェクト管理には(今はなき)サイボウズLiveというツールを駆使していた。

このころ必要で生まれたのが、■ペア体制 ■間接業務集約 ■サポートデスク ■夏休みローテーション ■個人カルテなどだ。

■ペア体制
1業務をあえて2名で行うことで、自分の「替え」がいる状態をつくると同時に、新メンバーの育成を行う。
■間接業務集約
契約、見積もり、受発注、支払いなどのバックオフィス業務を集約し、メンバーがプロジェクト業務に集中する環境を作ると同時に、「見積もり」や「原価管理」のパターンを蓄積する。
■サポートデスク
決まった時間にオンラインでサポートを行うメンバーを作り、チェック業務や校正、急ぎのサポートなどを行う。
■夏休みローテーション
夏休みで子どもが家にいる環境や帰省などで稼働時間が減るメンバーと期間をあらかじめ確認し、事前に案件状況共有や引き継ぎを行い代替要員として助け合う。
■個人カルテ
個々のキャリア計画をいっしょに考えるために、仕事・家庭両方の状況を把握するためのカルテを作成し、定期的に面談を行う。

オンラインを補うリアル

オフィスをもつ組織なら、経緯的にはオンラインでリアルをどう補うか?」という発想でルールやしくみを作るだろう。私たちは逆だったので、リアルでオンラインをどう補うか?」という発想で、通常とは違うルートでの発展を辿っていた。リアルは、最低限の「人となり」交換を目的にした顔合わせや、実感を大切にしたいキックオフや振り返り、対話重視の個人のキャリア面談など、かなり絞った形で実施したが、次第にどのくらいの頻度で十分なのか?が明らかになり、それがルール化していった。

また、「プラットフォームサイト」と名付けたメンバーのみがアクセスできるクローズドのサイトを用意し、間接業務の依頼や確認などを連絡しあっていた。システムとしてのプラットフォームサイトと、アプリケーションとしてのオンラインコミュニケーション、リアルコミュニケーションの3つをひとまとめにしてひとつのオリジナルなしくみとしていた。(↓当初資料より)
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何に集うのか?

こういったしくみづくりを行いながら、たくさんのプロジェクトが回せるようになり、メンバーも増えた。2014年くらいにはメンバーは約15人になっていた。しかし、私はひとつのモヤモヤを抱えていた。やっていることを懸命にまとめてなんとかビジョンは掲げたもののそれは明らかに後付けだった(笑)。

普通の組織であれば「ビジョン」や「事業内容」は求心力だ。しかしナラティブベースは、その都度できることをできる人に渡す、誘う、といった広げ方をしてきたコミュニティで、後付けのそれに「共感してきました!」「わたしのスキルセットやキャリアプランにぴったりだったので!」という人は(いるにはいるが)ほとんどいない。会社というよりコミュニティだったので、いつでも辞められたし、いつでも入れた。それぞれにそこにここにいる意義をそれぞれの理屈で定義していた。価値観が異なる多様なメンバー(ママばかりではなかった)が、ここに集っている本当の理由はなんだろう?

それぞれのナラティブを語りながら、しくみづくりをする中で、何が求心力となり、今が成り立っているのか?この時はまだ、わからなかった。

つづく

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