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6回目のアンソロ主催を終えて、本作りについて考えたこと。

(11/15追記)手数料がかからないDL頒布のみboothを再開しました。紙の本は個人通販になったので、よければそちらをご利用くださいませ〜!
boothご利用くださった方々、ありがとうございました!

 通算6度目のアンソロ主催を終えた。この文を書くために数えたら6回やっていたことが発覚して、誰が一番驚いているかって私である。私、そんなにアンソロ主催してたか?

 していたのである。2016年から2021年にかけて、5年で6冊。うーん、まあ年1ペースと思えば多くはない気もするが、年齢比だと多い気がする。作った本は以下の通り。

・2016年文フリ「青い死」(文字のみ)
・2018年文フリ「平成最後の夏の本」(文字のみ)
・2019年二次創作(原作となる小説なりゲームなりアニメなり漫画なりがある作品)死別アンソロ「永訣の空」(文字のみ)
・2020年4月「コロナで卒業式が消えたため卒業できないバグが発生しました」(一次創作・二次創作混合)(文字・絵混合)
・2020年11月文フリ「この世界はコロナにより一時的な制限がかけられています」(文字のみ)

そして今回の

・2021年12月「あいよりいでてあいより」)(文字・絵混合)

 いや多いな……

 別にアンソロを主催するのが趣味なわけではない。気付いたら主催しているだけで。

 そもそも、最初は金のない大学生が文フリに出るために人を集めたところから始まっている。全然高尚なアレではない。しかもその時のメンバーは現在空中分解しているし。正直最初の頃は本当に不手際が多くて今思い出すと申し訳ないくらいなんだけれど。

 ただ、まがりなりにも6回やっていると、それなりにノウハウというか、手筈とか、ある程度「こうやったらいい感じになる」というのも見えてくる。ついでに「このフェーズで毎回めちゃめちゃ苦しむ」とか「こういう感情が出てきてキツイ」とかもさすがに覚える。多分本作りの過程のうち「楽しい」と「つらい」の比率は3:7か2:8くらいだ。

 それでもなぜか気付いたら主催している。多分マラソンランナーと同じで、楽しい瞬間のことしか覚えていないに違いない。わからんけど。

 今回は久々だったうえ、電子書籍版、すなわちboothでのダウンロード販売に取り組んだので、備忘録と、自分の感情の整理のために経緯と過程、あと考えたことなどを記しておく。ついでに買ってくれ。目標金額に到達したのでとりあえずかき手の方々にちょっとした商品券みたいなのは送りましたが、多くの人に読んでもらえたらそら嬉しいので。

ちなみにコロナって入れたせいでうえに注意書きが出ているんだが、本のタイトルでしかないし、誰も医学ネタをぶっ込んでいないのでそういう話は一切ない。


①企画立案

 事の発端はこれ。

 発端というか発作? ある日突然本を作りたくなることがある。それがこのツイートだ。

 自分は妙なところで思い切りがいいので翌日にはこうなっていた。

 行動が早いはやーい(たかいたかーいのノリで)。

 最初のツイートにもある通り、実はコロナ禍って言われるようになってから出した本の在庫がまだそこそこある。なぜなら部数が全然読めなくて、えーい面倒だ普段よりちょっと多めに出してしまえ! もともと印刷所応援も兼ねているし! となったから(卒業バグ本はコロナ禍で同人イベントが潰れまくってこのままだと小さい印刷会社が危機に陥るわよ! という話があったのと、同じくコロナ対策で卒業式がなくなった面々が自分を含めてめちゃめちゃいたこととがあって発行が決まった)。

 その後の文フリも久々で色々手間取ったのもあって、思ったより捌けなかったし、ついでに言うと二次創作の死別アンソロの時は1回台風でイベントがポシャっているので同じく部数の割には捌けていない(アンソロなので多めに刷ったのもあるが)。

 故に今本棚の一角をこれら3種類の本の在庫が埋めていて、正直これをさばかないと新しい紙の本はな……と思っていた。でも本は出したい。なんで? わからん……出したくなるんだよな無性に……

 しばらく考えているうちに、一次創作作品のみにして「電子書籍版」すなわちboothのダウンロード販売を利用してみよう、ということを思いついた。調べたらPDFでいけるらしい。普段入稿(印刷所に印刷してもらう原稿を提出すること)もPDFだし、イラスト等で出してくる人にはご自身でPDF化してもらえばいいし、それを結合させればできるな! といけそうな条件が揃ったもんだから計画立案が爆速だった。過去イチくらい早かった。

 ところで、一次創作アンソロジーというのは往々にしてお題がある。というのは、自由に書いてくださいとやると結構書けない人が多いのと、タイトル等で困ることになるからだ。例えば、「平成最後の夏の本」は平成最後の夏が〆切だったのでこのタイトルだったのだが、お題がなかったので参加人数は少なめ、かつ内容がバラバラだった。あれはあれでめちゃめちゃ面白かったけれど、当時結構「参加したいけど何を書けばいいかわからない」というツイートを見たので、以後お題を設定している。

 前回、前々回はコロナ禍をネタにしたので割とすぐ決まった。卒業式からヒントを得た「グッドバイ」、いろいろな制限がついた生活からヒントを得た「リミット」。でも今回はコロナ禍がネタではないし、何がいいかなあ、と考える。この場合の考えるとは、うーんうーんとそのことについてずっと思い悩むというのではなく、頭の片隅に転がしておき、どうでもいいタイミングでポロッと何かを思いつくのを待つということである。

「あい(変換・解釈自由)」でどうだ? となったのは最初のツイートから1週間後だった。ある程度フレキシブルかつある程度範囲が固まるかな、という妥当なラインに思えたので、そのまま決定した。

 ただ、後から絵を描く参加者に言われてせやなと思ったのは、このお題は物語性のある作品を前提としているよね、ということだ。たしかに。イラスト・絵の方は「藍」くらいしか変換のしようがない、というのは盲点だった。うっかり。次回からはそっちにも配慮したお題を出そうと思う。


 さて、そんなこんなでお題が決まったので募集ツイートをした。

 参加をギリギリで決めても最短でも2か月ある、比較的余裕のあるスケジュールだった。と思う。16000字というのも原稿用紙換算で40枚程度なので多くも少なくもないかな、という感じ。ところでこういう告知の方法(概要を画像にまとめるやり方)はコロナ本の1冊目から始めた。ツイートでするより目に触れやすいかな、というのと、参加しようか迷っている人が後から要項を見直しやすいかな、という理由だ。実際、このやり方にしてからのほうが参加者は増えているので、多分効果がある。知らんけど。

 今回の参加者は15人となった。


 15人……?


 参加意思表明の〆切1週間前に見た時は7人くらいだったんだが。


 困惑して、え? 誰か2回送ったりしてへんか? と見直したがきっちり自分含めて15人いた。思わずコロナ本を引っ張り出してきて参加人数を確認したら、1冊目で14人だったので今までで一番多い参加人数になっていた。マジか。

 とはいえ。こちとら平成最後の夏の本を出した時から文フリすなわち「文学フリマ」にて用いているサークル名が「アンデパンダン」な主催者である。これは、フランスで1884年に新印象派の人達が開いた「無審査・無賞・自由出品」の絵画展からとったものだ。フランス語における「独立」つまり英語でいうところの「independent」である。玉石混淆上等、こういう〆切に対して応募してくるやつは誰も彼も玉になりうる可能性を秘めているものだし。そんなわけで、わー多いなーくらいの気分で本作りがスタートした。後半で若干の地獄を見た。


②〆切までにやっていたこと

 原稿と主催、どちらもやらなければいけないのが主催のつらいところだな(某アニメ)。つまり主催は主催なので〆切前にもいろいろやることがある。今回やっていたことをざっくりまとめるとこんな感じだ。


(1)進捗確認

 経験上、〆切直前に〆切を守れないことが発覚する人間はめちゃめちゃいる。仕方ねえんだ、学生だったらレポートが出たとか、社会人なら仕事がどうしても片付かなくてとか、いろいろあるから。こっちも今ではその辺汲んだうえで〆切を設定しているけれども、最初のころは「〆切くらい守れるやろ」と思っていたので、普通に原稿落とした参加者がいた。なので、進捗確認はツイート・dmを駆使して行うようにしている。ただのツイ廃ではない。断じて。

 今回の進捗確認は、今までやっていた①参加者のツイートを確認して煮詰まっていないか、〆切を忘れていないかを確認する②一週間程度前から毎日告知する以外に、③2週間前からメールで〆切のリマインドを行う を追加した。というのは、冷静に考えたら1週間で原稿はあがらんな……(仮に〆切を忘れていた場合、告知スタートが1週間前だとスケジュールが厳しそうだな)と思い至ったからだ。そらそうよ。まあ忘れないでほしいが。

 ③の効果があったのかはわからないが、今回は〆切を超えて提出してきた人は少なかったし、その人達も事前に「これくらい遅れます」と連絡があった(遅れる、と言われればこっちも調整できるので、言ってもらえるとだいぶ助かる)。しかも原稿が揃ったのは〆切後30分程度で、記録的な早さである。すごーい。


(2)組版

 実は死別アンソロ~コロナ制限本までは組版をほかの方にやっていただいていた。死別アンソロの時は表紙を描いてくださったカタクラさん(@ktkr69_wr)、コロナ本の時はうめさん(@umeumesakura83)がそれぞれ申し出てくださったので。めちゃめちゃありがたかった。こっちはデータを送るだけでよかったので、本当に楽だった。その節は本当にありがとうございました。どれだけお礼を言っても言い足りない。

 だが今回は違う。うめさん就職したばっかで大変そうだし(2022/1/19追記:これを読んだ本人から「まだ卒業してないです! 今就活中!」と連絡が来ました。すまん、何か勘違いしていた)、カタクラさんも商業の漫画の〆切と戦っているし。しかもお題とタイトルをふんわりさせたおかげで表紙も頼みようがない。全部自分でやるほかないのである。わはは。

 そんなわけで流し込みができるようなフォーマットは先に作った。11月くらいに。今回は集英社から出ている小路幸也先生の「東京バンドワゴン」シリーズに定規を当てながら、上下左右のマージンを決め、フォントサイズを決めた。フォントはいろいろ試したが、結局画面上で見ることを考えると游明朝が一番安定しているのでそれにした。ちなみに作品と作品の間に差し込む題字はiPadに入れてあるアイビスペイントではれのそら明朝を使って作った。


(3)表紙作り

 上記の通り今回は表紙も自分でやった。表紙を自分でやるのは2016年以来である。なお当時はパソコンのペイントでやった。正気じゃねえ。今回はアイビスペイントを使った。まあ結局デザインセンスがものを言うのでアレだが。

 ぶっちゃけ表紙作りに本格的に取り組んだのは〆切超えてからである。なぜなら自分の作品が難産だったので。正直もうびっくりするほどやる余裕がなかった。ロゴだけは考えついていて、それを載せる絵や図の選定は一切決まっていなかった。Camvaとか見ながらこういうデザインかなーとか考えてはいたが……

 結局、参加者でもある姫茶碗さん(@q1295_)にみせながら色使いのセンスが皆無であることを痛感し、普段褒められる写真のほうにするか、と写真を敷いてロゴを入れて枠を足したり引いたり文字色を変えたりして完成させたのが頒布2日ほど前である。今度真面目にデザインの勉強をしようと思った。


(4)参加者との連絡

 まあこれが一番でかいと思うんだよな。〆切破りそうです、だったり、こうしたいです、だったり、これはやってもいいですか、だったり、そういうのをさばくのが主催の一番大きな仕事かもしれない。

 今回やった中で初めての取り組みかつ面白かったのが参加者の一人であるへれしーなさん(@holle_shina07)のツイートからヒントを得て作ったタグだ。

 進捗晒しタグ。

 今こんな感じです、というのを人にみせながらでないと作業が進まない人、一定数いる。私も割とその気があるので、よく友人らに投げている。ただまあみんながみんなそうではないし、ついでに〆切に追い詰められる人の前例もまあ、知っているし。どうせなら宣伝がてら好きに晒していただこう、苦悶も外から見ると面白いしな! とこんなタグを作った。

 このタグは思いのほか主催にとっても便利だった。何しろ誰が今どういう局面で悩んでいるとか、何をしているとかが割とツイートされている。何文字ですとか、文字数オーバーしそうですとか、今書き始めたとか……見ていて面白いのもあるが、字数制限と調整(私の主催するアンソロジーでは基本的に文字数はほかの参加者から融通してもらうことができるようになっている。高校でそういう習慣があったので)にも役立ったし、(1)の進捗確認の参考にもなった。今後また本を作ることがあったらやろうかな~と思っている。


 普段だとこの時期に印刷会社を探したり、イベント参加申し込みをしたり、そういう話があるのだけれど、今回は電子書籍なので何もない。ちょっとさみしいかもしれんな。


③〆切~発行まで

 残念なことに〆切10日ほど前に参加者が1名減った。平成最後以来ちょこちょこ出てくださって、私もすごく作品を楽しみにしていたので本当に残念だったし、本人も「人格と人権を賭けていたので撤退が本当に悔しいのですが……」とおっしゃっていたので、本当に惜しまれる。仕事上バタついているらしく、なかなか難しい話だった。今後原稿が仕上がることがあればその時はファイル差し替えまたはアップデート版を作って組み込みますからね、とお伝えしている。人格と人権がかかっているので。

 いうて14人参加者がいる大所帯には変わりない。爆速で提出してきた(10月半ば)人もいれば直前まで呻いている人間もいる。〆切前日に「今めちゃめちゃめちゃめちゃ頑張っているんですがもしかしたら数分遅れるかもしれないです」とdmしてくる人間もいれば、進捗確認メールに「今初稿が終わりました。見直したら送ります」と言いつつ大幅リテイクを加えたらしくギリギリになる人もいる。

 主催は2週間前に原稿合宿をしに行ってずっと「これでいいのか?」「なあ本当にこれでいいのか?」と言いながら書いていたし、結局自分の見直しが終わったのは校正を挟んだのもあって〆切3日後だった。毎回忘れるんだが、〆切3日くらい前からみんないろいろ連絡よこしてきて忙しくなるんだから自分の原稿はそれより前に上げておくべきだと思う。次回に生かしてくれ。本当に。頼む。

 前述した通り、そんな戦場みたいな有様でも、今回のメンバーは〆切30分後には全員が原稿を提出してきた。優秀なメンバーである。


 ――〆切を過ぎたな。

 ――〆切を過ぎるとどうなる?

 ――知らんのか、校正・編集作業が始まる。


 そういうわけで。


(1)校正

 コロナ本の時は編集部がいた。というのは、「書けないけど読んで誤字脱字や文の気になるところを弾くのはできる!」「書かないけど組版とかこういうことはできる!」「まとまった量は描けないけど表紙だけなら!」とかおっしゃって校正・校閲と表紙作り、組版などを行ってくれるメンバーがそこそこいたからだ。上記コロナ本のあとがきには編集部もいる。めちゃめちゃありがたかった。なお小説書きと兼任の人もいた。

 ただ、今回はその編集部の大半のメンバーが就職(それも今一番忙しいエッセンシャルワーカーが複数)、修論などの理由で参加が難しそうだった。し、一部本人達からやりたいけど厳しいという声もあった。なので、募集段階から編集部はいなかった(一次創作電子書籍なんて一番人が集まらなさそうだと思ったのもある)。つまり、校正は全部自分でやることになった。

 メンバー的に、日本語が怪しい人は少なさそうだと思ったので、基本は文の前後関係が通っているかどうか、誤字脱字、アルファベットの縦横統一程度しか確認しない校正だけにした。それでもイラスト・漫画の3名とPDF化した状態で送られてきた都都逸1名を抜いた10人分となると結構な量になる。ページ数にして350ページ分。

 組版し、読み、三点リーダとダーシ(ダッシュ)を2つずつに統一し、誤字脱字部分を赤字に、文意不明をオレンジに、そのほか気になるところを緑にして、そのページ数と行数、色を付けた理由をリストアップし、PDF化する。×9。

 日曜と平日を使って合計4日かかった。そして人のをやるのは楽しかったけど自分のはもうやりたくねえとか泣き言を言っていたら、どっと虚無さん(@dot_kyom)が主催の分を読むのを申し出てくださったのでありがたく送り付けた。助かる。

 そんなこんなでできた人から順にPDFを送り、2日以内に直したいところを送ってくださいと連絡したところ、全員結構な速度で要望を送り直してくれた。助かるわ。


(2)並び順を考える

 今回のメンバーは絵2名、漫画1名、都都逸1名、小説10名となった。小説と一口にいっても、「あい」を好き勝手解釈していただいたものだから、話の雰囲気も読了感も全部違う。あらゆるものが異なる。まあアンデパンダンという名前に相応しい混在ぶりだ。作者の50音順で並べるとか、作品ジャンルで並べるとかやると、ちょっとテンションの落差がえげつないことになりそうだった。なので、今回は申し訳ないが主催が読んで読了感等をもとに並び順を決めた。

 冒頭は爽やかな藍色が鮮烈な絵。それから読了感がほっこりするもの、爽やかなもの、ちょっと考えさせるもの、……と考えていっていくつかの作品の配置に迷いもしたが、結構楽しかった。今まではなんとなく公平性とか考えて50音でやりがちだったが、多分読者にとって一番いい配置にするというのが正解な気がする。

 例えば、葉月糸さん(@hadzukishi_phys)の作品なんか、私は昔から好きなのだけれど、読者が最初に読むと満足感が強すぎて先に進めなくなりそうだから前に置かないほうがいいかな、とか。ももったれP&Aさん(@MTarepanda)の百合漫画はかわいい絵柄だけど後半の不穏要素を考えると不穏な話と近づけておいたほうが読んでいる人にとって心地いいかな、とか。不穏は不穏でもどちらを後ろにしたほうが読了後すっきりするかな、とか、この二つを並べると重たすぎるかな、とか。

 一人ひとりの作品を何度も読み返して、並べ替えてを繰り返して、最終的に発行した通りの並びになっている。多分、読み進めやすい並びになっていると思う。多分。


(3)最終稿と表紙等をくっつける

 並べ方を決めたら後は割と早い。今回は全員の作品を別のファイルにしておいたので、並び順通にページ数を振り、並べ、表紙・注意書き・目次・作品達・あとがき(それぞれの「あい」の解釈)・奥付の順にPDFを結合した。結合した後に全員に確認してもらったら「サイズが大きすぎると思ったので小さくしました、差し替えお願いします」とか「ページ番号の位置を間違えました」とか出てきてンワ……となったりもしたが、まあ切り貼りだけなので何でもない。


(4)booth開設

 校正の傍らでboothとpixivに載せる紹介文を書いてファイルを登録したらすぐショップ開設ができるようにした。まあなんということはない、必要な事項を書いただけなので。そして完成したファイルをくっつけ、サンプルを提示して発行準備は完了である。


 こうして電子同人誌「あいよりいでてあいより」が刊行された。全364ページ(表紙込みで365ページ)、700円という(同人誌としては)破格の安さである。普通同人誌で360ページとか言ったら1000円はカタい。印刷費があるもん。

 電子書籍のメリットの一つはここかもしれない、と思う。印刷費がかからない分安い。あと、読者の手許に届くまでの時間が限りなく短い。いいことだ。


 ちょうど先週から、「EPUB戦記」という、電子書籍の日本語フォーマット標準化の話をもとにしたエッセイみたいな本を読んでいる。語り口がおっちゃんの喋りというかツイートというか、そういうノリだなと思ってカバーの裏表紙側を見たらおっちゃんだった。還暦超えているなら仕方ねえと思って読んだ。

 それを読みつつ、これを書いている。私が今回主催した「あいよりいでて」はEPUBみたいな規模のでかい話ではないけれど、話題にちょこちょこ出てくる「この本の組版に対してこういう細かい指示が入って……」という話を読んでいて、ふと自分のアンソロジーを考えた。それから、コロナ本の組版をしてくれたうめさんのことを。

 うめさんは大学でも組版をやっていた。確かサークルがらみだったと思うんだが、慣れているようなことを言っていて、組版のテンプレートを作ってくれた時もこちらがわからないような機微を気にかけてくれた。

 一方、本に出てくる編集者の方も、やっぱり文字の上下幅、左右幅、行間の大きさ、フォント、上下左右マージン……とめちゃめちゃにこだわっていた。

 今回自分でやっていた時も、文字と文字の間をどれくらい空けたら読みやすいか、禁則事項がどうしても起きてしまう場所(なんでWordって禁則事項やるなっつってもやるんだろうな)の手作業での直し、ページ番号の配置と大きさなど、やっぱりめちゃめちゃ気にかけた。うめさんやカタクラさんの組版を見ながら「あ、字の左右幅じゃなくて上下幅も変えたほうが読みやすいんだな」とか考えながらやった。


 思うに、電子だろうが紙だろうが、文章を読むときに一画面ずつあらわれるふうにやる場合、文字の大きさや空間の空け方というのはかなり大きな問題なのだろう。自分は6回目にしてようやく(というかうめさんやカタクラさんや集英社の組んだ組版を見て)気づいたが、組版は本の出来を左右するめちゃめちゃでかいファクターだと思う。例えば商業でやっているところをあまり悪く言いたくはないが、某推理文庫とかは字が小さくてぎっちぎちに詰まっていて、アレ多分一定年齢以上の人には買ってもらえないと思う。読めねえもん。翻って自分の初期の本を見るとやっぱり思う。某推理文庫よりはるかに読みにくいもん。

 そしてしみじみ思う。次の本、絶対紙がいい。紙版に電子版をおまけでつけて、組版をそれぞれ変えて、どう組むのが読みやすいのか、どれだけ自分の想定する文庫本に近くできるか、そういうのを突き詰めたい。


 毎回作り上げるたびに「二度とやるもんか!」と言ってはほとぼりが冷めたころに企画をぶち上げる、というのを繰り返しているが、思えばこれが理由なのだと思う。一冊本を作ると反省点が見えるようになる。今度はこの反省点を生かした本を作りたい、と思うようになる。今回なんか紙にしてないもんだから、やっぱ紙の本が好きだなとかあの紙使いたいなとか遊び紙入れたいなとかってのがさらにある。

 アンソロ主催はもうそろ打ち止めかな、とか思っているけれど、そして多分1冊目のコロナ本を出した時も「もう社会人になるし」と言って同じことを考えていた気がするけれど。人の書いた話をまとめ上げて一つの作品にするということはやっぱり楽しいし、またやるのかなあ、と思ったりした。


 ということで紙の本が出せるように在庫を減らしていってくれるとありがたいぜ!(突然しんみりまとめるのをあきらめた顔) みんな素敵な作品ばかりだから売れ残っているのが悔しいのもあるしな!

 各リンク先にサンプルがあるので、お気に召したらどうぞ、よしなに。

電子同人誌(一次創作のみ)

コロナ本①(一次創作・二次創作混合)
コロナ本②(一次創作のみ)
こちらはGoogleフォームを利用した個人通販です。
別のいい方法が見つかったらまた移行します〜!


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