見出し画像

『新月の日に「巡らせた果て」』

バスの窓から見えるさつきぞらに
真綿をほぐしたような、白く、厚い雲が
いくつも、いくつも、
低いところに浮かんでいて
それを、じいっと見ていたら
あれは、「わたあめ」かもしれない
と、そう思ったわたしは
割りばしに、うまく均等になるように
あの雲のかたまりを
くるくる、くるくる、巻いてみた

雲は、ザラメで出来ていたのか
どおりで今日は、風が強いはずだよ
お天道様も上機嫌でニコニコだし
うん、納得

そうして
何本もの割りばしに
ふわふわな雲を巻き取っていって
ほんの少しだけ、食べてみた

幼い頃、お祭りで買って食べた
あの味がした
懐かしい味だった
カラフルな袋に
ぎゅうぎゅう詰めになったわたあめの

・・・あ。

そうか!
割りばしに巻かなくったって
大きな袋に詰めればよかったんだ

ひとくち食べてから
そのことに気づいてしまった

ちょっとくやしいな

わたしは、両手いっぱいに
真っ白いわたあめと
少しの複雑な気持ちをかかえて
バスを、降りた


※2024/5/8 X(Twitter)にて投稿したものを加筆修正しております。

※photo by 月兎葉音@Tuki_To_Ha_Ne_







この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?